個人事業主は旧姓でも仕事はできる?変更が必要な手続きを解説

コラム

個人事業主として事業を行っているで、結婚などの理由で名字が変わることがあるでしょう。

そんな時に、

「旧姓のままでも個人事業主として仕事はできるの?」

「新姓として手続きしないとダメなものもあるの?」

「変更が必要な際の手続きはどうすればいいの?」

といった、疑問やお悩みはありませんか?

この記事では、個人事業主の名字が変わった時に旧姓のままで大丈夫なものと大丈夫ではないもの、それぞれの必要な手続きについて詳しく解説していきます。

個人事業主が旧姓のままでOKなもの


結婚などの理由によって名字が変わっても、旧姓のままで事業を続けたい方も多いでしょう。

以下では、個人事業主が事業をしていく中で、旧姓のままでもOKなものを解説していきます。

名刺

個人事業主の名刺上の氏名は、旧姓のままでも問題ありません。

名刺は事業を行う上で、個人の看板であり、相手に対して印象を与えるものでもあります。

新姓を使用することで、顧客や取引先からの認知度が下がってしまう可能性があれば、旧姓の名刺を使用すると混乱を防ぐことができます。

また、新姓と旧姓を併記することもできます。

契約書

個人事業主の契約書上の氏名は、旧姓のままでも問題ありません。

新たな契約でも、旧姓を引き続き使用することができます。

新姓と旧姓の併記も可能なので、誤解を避ける書き方を選択することができます。

しかし、契約相手との信頼関係を築く上では、相手が納得できる書き方で契約書に記載することが重要です。

特に、契約内容が長期間にわたるものや高額な取引に関するものである場合には、相手が確実に自分と契約を結んでいることを印鑑証明などで証明するために、住民票と同じ姓を使用することが良い場合もあります。

契約書の表記については、相手との信頼関係を考慮して決めることが大切です。

契約相手に不信感を与えることなく、相手とよく意思疎通して、双方が納得できる適切な方法を選択することが重要です。

領収書

個人事業主であれば、発行する領収書の発行者名、受領する領収書の宛名、どちらも旧姓のままで問題ありません。

ただし、時によって姓を変えたりせず、少なくともひとつの事業内では統一しましょう。

また、年末調整や確定申告などで所得税の計算をする際に混乱を避けられるよう、正確に帳簿をつけておきましょう。

請求書・発注書

個人事業主は、発行する請求書や発注書の発行者名、受領する請求書や発注書の宛名、どちらでも旧姓を使うことができます。

また、新姓と旧姓を併記することで、誤解を避けることもできます。

取引先が混乱したり、書類を処理する際に問題が生じたりしないようにするために、明確な表記を心がけることが重要です。

開業届

個人事業主は、名字が変わっても、旧姓で開業したり、旧姓で事業を継続できます。

その際には、届出書類に旧姓を記載して提出する必要があります。

具体的には、開業届と呼ばれる「個人事業の開業・廃業等届出書」において、屋号や届出者欄に旧姓を記載し、備考欄に旧姓で事業を行うと記載して提出します。

ただし、確定申告においては、納税者氏名を旧姓にすることはできません。

備考欄に旧姓で事業を行っている旨を記載することができるのみです。

さらに、還付金の振り込み口座に関しては、確定申告書に記載した納税者の名前と口座名義人の名前が一致している必要があります。

法人登記

法人登記の場合、旧姓と新姓を併記するというかたちでの手続きが可能です。

結婚などによる氏名変更があった場合、旧姓と新姓の併記を希望する申し出をすれば、婚姻後の氏名と旧姓を併記することができます。

ビジネスネームとして旧姓を使用している場合、法人登記上の氏名と普段使っている氏名の名字が異なると、業務に支障をきたす可能性があります。

そのような理由から、平成27年2月27日より、婚姻による氏名変更の場合に限って、旧姓併記の登記が認められるようになりました。

ビジネスネームとして旧姓を使用している場合、旧姓のみで登記することはできませんが、併記することが可能です。

個人事業主が名字を変更しなければいけないもの


手続きによっては、個人事業主が名字を変更しなければいけない場合もあります。

しかし、昨今では女性の就労環境を変えていく取り組みが行われているため、少しずつ制度が変わりつつあります。常に最新の事情を確認しておきましょう。

以下で、詳しく解説します。

確定申告

名字や住所が変わった場合、それだけであれば新たな書類の提出は不要ですが、確定申告書には新しい名字と住所を記載する必要があります。

しかし、前述のとおり、税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」を再提出することで、事業を旧姓のまま継続することはできます。

通常、この書類は開業や廃業をする際に提出するものですが、旧姓のままで事業を続けることを届け出るための書類としても利用されます。

書類の右下にある「その他の参考事項」欄に、旧姓で事業を継続することを記載し、提出すれば手続きは完了します。

ただし、旧姓で事業を続ける場合でも、還付金振込先口座の名義は確定申告の納税者名と同じである必要があります。

新姓名義の銀行口座が必要となりますので、用意しておきましょう。

事業用銀行口座

通常、事業用の銀行口座を新たに開設する際は、旧姓では開設できません。

しかし、最近では旧姓での口座開設を受け付ける銀行もあり、名字が変わった後でも旧姓の口座を開設することが可能となっています。

ただし、取引先からの支払いを受け取るために、本人確認が必要な場合があります。

この場合、本人確認書類の氏名と口座の名義人が一致している必要があります。

たとえば、個人事業主が住民票を旧姓併記に変更し、旧姓併記のマイナンバーカードを使って事業用銀行口座を旧姓で開設することができたとしましょう。

しかし、口座を振込先に指定する際、取引先にマイナンバーカード以外の身分証明書の提示を求められる場合があります。

新姓名義の口座に変更する必要がでてきたり、マイナンバーカード以外の旧姓併記の身分証明書類を急いで用意する必要がでてきたりする可能性もあるので、銀行口座は、計画的に開設しましょう。

特定の職種

多くの場合、国家資格を持つ職種においては、旧姓を使うことができます。

しかし、まだ旧姓を使用することが認められていない資格もあります。

たとえば、保育士や介護士などがその例です。

現在、利用者の混乱を招くなどの理由により、旧姓使用の拡大に向けた取り組みが行われています。

(参考:内閣府男女共同参画局|各種国家資格における旧姓使用の状況について
(参考:厚生労働省|各種国家資格における旧姓使用の範囲拡大について

旧姓のままで個人事業主を続けるポイント


結婚や離婚によって姓が変わっても、個人事業主は旧姓のまま活動を続けることができます。

そこで、旧姓のままで個人事業主を続けるポイントについて考えてみましょう。

旧姓を屋号にする

個人事業主は旧姓を屋号にして、旧姓のまま事業を継続することができます。

旧姓で事業を継続するメリットには、以下のようなものがあります。

  • 旧姓のまま事業を続けることで、既に知っている顧客や取引先との信頼関係を損なわずに事業を続けることができる。
  • 自分自身がブランドイメージの一部となることが多い個人事業主が旧姓のまま事業を続けることで、そのブランドイメージを維持することができる。
  • 事業名やドメイン名、メールアドレスなどの変更をする必要がなく、顧客や取引先に知らせる手間やコストが発生しない。

離婚の際に名字を変えなくてもいい

旧姓のままで個人事業主を続けると、離婚の場合にも旧姓のまま事業を継続することができます。

結婚後に名字を変更した場合、離婚後にも再度名前を変更する必要がありますが、旧姓のままで事業主を続ける場合はその手間が省けます。

なお、離婚後も結婚時の名前を引き続き名乗りたい場合は、「離婚時に使用していた姓を使用する旨の届出書」を離婚日から3か月以内に市区町村役場へ提出すれば、引き続き結婚時の姓を使うことができます。

その他に名字の変更が必要な手続き


身分を証明するものは、名字の変更手続きが必要になることがほとんどです。

以下で詳しく解説します。

戸籍・住民票

戸籍・住民票の名字は、婚姻届や離婚届を出すことで自動的に修正されます。

婚姻届や離婚届を提出する際には、身分証明書や戸籍謄本、印鑑、写真などの書類が必要です。

必要書類を揃えたら、窓口で申請書を受け取り、必要書類を提出しましょう。

マイナンバーカード

マイナンバーカードは、氏名や住所が変わったら、市町村区役所で変更手続きをする必要があります。

マイナンバーカードの有効期限を過ぎていた場合は、再発行手続きをする必要があるので注意してください。

マイナンバーカード作成時に設定した、4桁の暗証番号も必要です。

印鑑登録

印鑑登録においては、登録する印鑑が住民票の氏名と一致していることが必須です。

姓が変わった場合には、登録している印鑑と住民票の表記が異なるため、登録していた印鑑証明は失効してしまいます。

失効した場合には、新しい印鑑で改めて印鑑登録申請を行う必要があります。

ただし、登録印が名のみだった場合には、引き続き使用できます。

運転免許証

居住地の都道府県警察本部の運転免許センターで氏名変更の手続きをします。

運転免許証の他に、旧姓から新姓に変更するための「運転免許証記載事項変更届」や住民票などが必要になります。

名字の変更手続きが完了したら、次回の免許更新時まで、免許証裏面の備考欄に新姓が記載されます。

免許証は身分証明書にもなる大切なものなので、名字の変更手続きは速やかに行うことが大切です。

なお、新姓で発行された免許証を旧姓の証明書にもしたい場合は、手続きによって裏書に旧姓を記載してもらうことが可能です。

パスポート

パスポートに記載された名前や住所などが変更された場合には、有効期限内であっても手続きが必要です。

特に、有効期限内のパスポートを本人確認書類として使用している場合や、海外渡航の予定がある場合には、速やかに変更手続きを行う必要があります。

住所地がある都道府県内のパスポート取扱窓口で変更をしましょう。

変更手続きには、新しい名前や本籍の都道府県名が記載された公的証明書(戸籍謄本や住民票など)が必要です。

なお、パスポートに旧姓を記載したい場合は、理由を伝えて審査を受けることで、ミドルネームとして旧姓を併記することが一部の都道府県から可能となりつつあります。

社会保険関係

国民健康保険・国民年金に加入している個人事業主が氏名変更をした場合は、住所地の市町村役場の窓口で変更手続きをする必要があります。

手続きには、氏名変更を証明する公的な書類やマイナンバーカード、印鑑証明書、国民健康保険証、国民年金手帳などが必要です。

手続きの詳細については、所属する市町村の窓口で確認することができます。

また、個人事業主が配偶者の扶養に入る場合は、配偶者が勤務する会社に関係書類を提出する必要があります。

配偶者が勤務する会社の人事部に、「被扶養者(異動)届」などの書類を提出することで、配偶者の扶養に入ることが可能です。

まとめ

  • 個人事業主は旧姓でも仕事ができる
  • 原則として行政サービス上は名字を変えなくてはいけないが、手続き次第では旧姓のままでも大丈夫なものもある
  • 旧姓のまま事業を続けることには、いくつかのメリットがある
  • 必ず名字を変えなくてはならない手続きもある
  • 昨今では女性の就労環境を変えていくための様々な取り組みが行われている

今回の記事では、個人事業主は旧姓でも仕事をすることができるのか、旧姓のままでも良いものはなにか、新姓に変更しなくてはならないものはなにか、などについて解説しました。

旧姓の扱いについては、徐々に制度が見直されているところです。

最新の情報を確認して、自分に合った方法を選べるようにしましょう。

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