個人事業主が死亡した際の相続は?相続税対策や継承手順を解説

相続税対策や継承手順を解説 個人事業主が死亡した際の相続は? コラム

個人事業主で自身が死亡したときに相続税がどうなるのか知りたい、相続税対策や継承手順について知りたい、このように思われている人も多いのではないでしょうか?

当記事ではこのような疑問を解決していきます!

この記事を読み終える頃には、個人事業主が死亡した場合の相続税や税金対策、継承手順について理解していただけるかと思いますので、ぜひ最後まで読んでみてください。

それでは解説していきます!

個人事業主を相続する際にすべきこと

個人事業主が死亡した場合の相続においてやるべきことには、以下の2つがあります。

相続人数を確認する

相続するときは、最初に相続人数を確認しましょう。

死亡した個人事業主の遺言があり、相続人数が記載されていればその人数が該当します。

わからない場合は法定相続人を決めることが必要です。

ちなみに法定相続人は、配偶者が常に相続人になると民法で決められています。

なお、配偶者以外の範囲としては、死亡した個人事業主の子供、親、兄弟および姉妹の順番で法定相続人として優先すべきです。

基本的には被相続人の本籍地で戸籍謄本を確認すれば、相続人となる人物を特定できます。

家族は自分と子供しかいないと思い戸籍謄本を確認しない相続人もいますが、過去に離婚しており、離婚したパートナーとの間に子供がいるケースもあるようです。

その場合、その子供も相続権を持っているため、遺産の分割が決まった後でやり直しになったり、裁判沙汰になったりする可能性があります。

そのような事態にならないためにも、しっかりと戸籍謄本で相続人数を確認しましょう。

相続するか決める

相続する債務や負債が多い場合、相続すると多額の負債も相続するため、相続放棄を検討することも必要です。

相続放棄すれば、マイナスの債務や負債を負う必要がなくなります。

しかし、相続放棄を選択した場合、プラスの預金や不動産などの財産も相続できないため注意が必要といえるでしょう。

多くの負債がある事業でも継ぎたい場合は、限定承認の利用がおすすめです。

限定承認とは財産が残っている可能性があるときに、相続人が相続で得ることができる財産の限度で被相続人の債務負担も受け継ぎます。

手続きは少し複雑ですが、負債のある事業を継承する際に利用すべきでしょう。

個人事業主の相続税を抑える方法

個人事業主が相続税を抑える方法は、以下の3つがあります。

個人版事業承継税制を活用する

青色申告をしていた個人事業主に限り利用できる制度で、事業の後継者が継承した場合に、事業用資産に対して発生する相続税や贈与税の納税猶予が受けられる制度です。

猶予されるのは、事業に利用されていた土地や建物に加え、建物以外の減価償却資産が対象になります。

負担してもらえる対象の資産としては、車両や機械のような減価償却資産をはじめ、床面積が800平方メートル以内の建物、面積が400平方メートル以内の土地もしくは借地権です。

また、個人版事業承継税制の適用対象の資産は都道府県知事による認定をもらい、指定された要件の基準を満たせば免除され、事業用資産にかかる相続税および贈与税は100%納税が猶予されます。

小規模宅地等の特例を活用する

小規模宅地などの特例は、相続した土地の相続税を求めるときの元となる価格の評価額を、最大で8割減らせる制度です。

たとえば、死亡した個人事業主から相続した土地の評価額が4,000万円であれば、小規模宅地などの特例制度を活用することで、条件次第では800万円まで評価額を減らすことができます。

法人化する

法人化すると個人で相続する財産を減らせるため、相続税の節税が可能です。

相続資産が高額の場合、個人ですべての財産を受け取ろうとすると多くの相続税が発生してしまいます。

しかし、法人化すれば所有している会社に相続した資産を移せるのが特徴です。

役員報酬として選定した役員や配偶者、子供に資産を移転させると、一人あたりの相続税が減って相続税を抑えられます

相続税が6億円を超える場合は、55%もの税率が相続税として課されるため、法人化をうまく利用して相続税を抑えましょう。

個人事業主が死亡した際に必要な届け出

個人事業主が死亡した場合、以下の7つの届け出が必要です。

死亡届

事業主が亡くなった場合、そのことを役所に伝えるため、事業主の本籍地か亡くなった土地、もしくは死亡届を提出する人が住んでいる市役所や区役所、町村役場のいずれかに死亡届を出す必要があります。

死亡届は、亡くなったことを認知した日から7日以内の提出が必要です。

もし、7日以降に提出した場合は罰金が発生したり、火葬が認めてもらえなかったりする場合もありますので注意しましょう。

廃業届

事業主が亡くなって廃業する際は、「個人事業主の開業・廃業等届出書」の「廃業」欄にチェックした書類を税務署に提出し、廃業を届け出る必要があります。

死亡要因での廃業届の提出期限は、廃業した日から1ヶ月以内と定められているため、期限を過ぎないように注意しましょう。

事業廃止届

死亡した事業主が消費税の納税義務がある課税事業者に該当する際は、普段納税している税務署に対し、事業廃業届出書を提出しなければなりません。

事業廃業届出書の提出に期限は設けられていませんが、発生後は速やかに届け出るよう定められています。

給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出

死亡した事業主が雇用している従業員に対して給与を渡していた場合、事業所の住所を置く税務署に「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書」を提出すべきです。

事業主が死亡した日から1ヶ月以内に提出する必要があります。

準確定申告

死亡した事業主の代わりに相続人が確定申告することを準確定申告といいます。

通常の確定申告とは異なるものです。

1月1日から死亡日までの所得および税額を求め、相続の存在を知った日の翌日から4ヶ月以内に提出する必要があります。

所得税に関係する書類の提出

事業主の死亡により事業を廃止する場合は、所得税に関係する書類の提出は不要です。

しかし、相続人が事業を継承し青色申告申請を新たに行う際には、所轄税務署に「所得税の青色申告承認申請書」を提出しなければなりません。

消費税に関係する書類の提出

死亡した事業主が課税事業者の場合は、すみやかに所轄の税務署長に「個人事業主の死亡届出書」を提出する必要があります。

個人事業を継承する際に必要な届け出

個人事業主が事業を継承する場合、以下の3つの届け出が必要です。

個人事業の開業届出書の提出

廃業届の提出後に事業を継承した人による開業届の提出が必要です。

死亡要因での事業相続は提出期限が1ヶ月以内と定められているため、必ず期限内に提出しましょう。

しかし、継承者が元から事業を営んでいた場合であれば、開業届出書を提出する必要はありません。

給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出

事業を継承した人が事務所などを開設または移転した場合は、所轄の税務署に「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出書」を提出する必要があります。

提出期限は、事業主が死亡した日から1ヶ月以内です。

所得税の青色申告承認申請書の提出

事業を継承した人が、これまで事業を営んでいない場合、継承した相続人は所轄の税務署長に「所得税の青色申告承認申請書」を提出しなければなりません。

また、書類の提出期限は個人事業主が死亡した日付けによって異なります。

死亡日と提出期限の関係は、以下の表の通りです。

事業主が死亡した日 書類の提出期限
1/1~8/31 死亡した日から4ヵ月以内
9/1~10/31 12/31
11/1~12/31 翌年の2/15

上記のように死亡した日により提出期限が異なりますので、間違えないように注意しましょう。

個人事業主が相続対策としてすべきこと

個人事業主が相続対策としてするべきことは、以下の2つです。

遺言書を書く

個人事業主は個人で事業用の財産を持っているため、事業用財産も相続されます。

この際、法定相続分に基づき事業用の財産が分けられてしまうと、事業を継続し続けるための資産が減少し、事業継続できない可能性があります。

そのような事態を防ぐためにも、事業を引き継ぐ人に事業用の資産が受け継がれるよう遺言書で示しておくことが大切です。

業務管理簿を作成する

事業主が死亡した際に少しでも業務への影響を減らすために、業務の内容をまとめた業務管理書を作成しておくことが大切です。

とくに取引先との取引の進捗具合や資金繰りなど、業務を遂行する上で必要な情報は可能な限り細かく記載しましょう。

まとめ

  • 個人事業主が死亡した際には、相続人数を必ず確認する
  • 個人事業主が死亡した際の相続は、資産状況により放棄も検討する必要がある
  • 制度を上手く活用して相続税を抑えよう
  • 個人事業主が死亡した際は最大7つの届け出が必要
  • 相続対策として遺言書や業務管理簿を作成しておこう

被相続人の本籍地で戸籍謄本を確認しないと、自分が想像している範囲外に相続権を持った人物がいる可能性があります。

裁判沙汰になる可能性もありますので、必ず戸籍謄本で相続人数を確認しましょう。

相続する債務や負債が多い場合は、相続することで多額の負債を相続してしまうため、相続放棄を検討することも必要です。

事業を継ぎたい場合は一部の財産のみ相続できる、限定承認と呼ばれる制度を利用することも検討すべきでしょう。

個人版事業継承税制や小規模宅地等の特例の制度を活用し、相続税を少しでも抑えることが大切です。

また、役員報酬等により資産を分配することで相続税を減少させることも可能なため、状況に応じて法人化を検討するのもありでしょう。

個人事業主が死亡した場合は、最大で「死亡届」「廃業届」「事業廃止届」「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」「準確定申告」「所得税に関係する書類の提出」「消費税に関係する書類の提出」の7つの書類を提出する必要があります。

死亡した場合に備えて、遺言書や業務管理簿を作成し、事業継承時に少しでも影響がないように備えておくことが大切です。

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