個人事業主が住所変更した時の手続きを解説!忘れていたらどうなる?

コラム

個人事業主は、住所を変更するときにさまざまな手続きが必要です。

しかし、どの手続きが必要であるかは変更内容によって異なるため、混乱することがあります。

この記事では、自宅住所、事務所の住所、海外住所を変更する際に必要な手続きについて説明します。

また、個人事業主が手続きを忘れた場合の対処法についても紹介します。

個人事業主の住所変更の手続き

個人事業主が自宅や事務所の住所を変更する際には、さまざまな手続きが必要です。

しかし、状況によって必要な書類や手続きが異なるため、混乱することもあるかもしれません。

個人事業主が住所変更をする際に行う手続きと、必要な書類について、紹介していきます。

さまざまなパターンがあるため書類が異なる

個人事業主が住所変更をする場合、そのケースによって必要となる書類や手続きが異なります。

たとえば、「自宅のみ住所を変更する」「自宅と事務所の住所を変更する」「自宅はそのままで、事務所だけ住所を変更する」など、その状況に応じて必要な手続きが変わってきます。

個人事業主の多くは自宅住所の場所を納税地としていますが、それを今後はどうするのかもポイントです。

また、住所変更の内容によっては、税務署のほか、年金事務所、労働基準監督署にも届出が必要となってきます。

自身のケースに応じて必要な書類や手続きを確認し、手続きを適切に行うようにしましょう。

自宅住所が変わる場合の手続き

自宅の住所が変更になると、役所やライフラインサービス、金融機関などに対しての手続きが必要になります。

まずは役所で住民票を更新する必要があるでしょう。

社会保険や年金についても住所変更が必要ですが、内容によって必要な手続きが異なるため、役所の窓口で確認しておくことが大切です。

ここからは、自宅住所が変更になり納税地が変更になる場合と、変更にならない場合の2つのパターンに分けて解説していきます。

納税地が変わる場合

自宅住所が変更になり、所得税の納税地が変わるパターンには、以下のようなものがあります。

  • 「住所地=納税地」としていた個人事業主が、新しい住所地に引っ越す
  • 「住所地=納税地」としていた個人事業主が、引っ越しにともない、居所や事務所の住所地を納税地にする
  • 居所や事務所の住所地を納税地としていた個人事業主が、引っ越し後にともない、「住所地=納税地」にする

住所地を納税地としていた個人事業主が新しい住所に引っ越した場合、基本的には確定申告のときに、申告書を新しい住所地の税務署に提出することになっています。

「所得税又は消費税の申告書」に新しい住所を記載して、税務署に書類を提出するか、e-Taxにより提出しましょう。

ただし、年度の途中で国税当局からの各種文書の送付先を新しい住所に変更したい場合は、申出書を提出して変更しておく必要があります。こちらもe-Taxを利用できます。

手続きにはマイナンバーカードや住民票が必要となる場合があるので、手元に用意しておきましょう。

納税地は変わらない場合

自宅住所が変更になっても、納税地は変わらない場合があります。

たとえば、事務所の住所地を納税地としている個人事業主であれば、自宅住所が変更になっても納税地は変わりません。

ただし、新しい住所を証明する書類はさまざまな手続きに必要なので、新しい住民票は取得しておきましょう。

また前述のとおり、社会保険や年金については、自治体の窓口に確認して対応しましょう。

事務所の住所が変わる場合の手続き

事務所の住所が変わる場合にも、納税地が変わる場合と変わらない場合があります。

それぞれのパターンで必要な手続きを確認し、移転先の市区町村役場や税務署に必要書類を提出しましょう。

また、社会保険や雇用保険の手続きも必要になる場合があります。

移転前に手続きをしっかりと把握し、必要書類や期限について確認することが重要です。

事務所の住所と納税地が変わる場合

事務所の住所や納税地が変更になった場合は、国税や都道府県税の納税にも関係するため、税務署への届出が必要です。

移転先の税務署に、国税法に基づく「開業・移転届出書」と都道府県税法に基づく「変更届出書」を提出します。

必要書類や提出先については、移転先の税務署に事前に確認しておきましょう。

納税地は変わらない場合

納税地が変更されない場合でも、事業所の住所が変更になった場合には各種手続きが必要です。

必要書類や提出先については、移転先の税務署に事前に確認しておきましょう。

さらに、事務所の状況によっては、社会保険事務所や労働基準監督署など、その他の機関にも変更の届出をする必要がでてきます。

手続きの詳細については、移転先の所在地にある各種公的機関に問い合わせるか、各種情報サイトを参考にしましょう。

自宅の住所変更はあるが事務所の住所変更はない場合

自宅の住所のみ変更となり、事務所の住所は変わらない場合にも、事業者として必要な届出や手続きが存在します。

国税や都道府県税の納税地の税務署に、必要な変更届について確認しておきましょう。

また、社会保険事務所には、雇用保険・労働保険の事業主届出書の提出が必要です。

事業内容によっては、その他の届出や手続きも必要になる場合があります。

手続きの詳細については、移転先の所在地にある各種公的機関に問い合わせるか、各種情報サイトを参考にしましょう。

海外に住所を変更する場合の手続き

海外に住所を完全に変更する場合、その個人事業主は「非居住者」となります。

非居住者となる場合、一般的に以下のような手続きが必要です。

まず、日本国内の住民票を抹消します。手続きは、登録されている市区町村の役所で行います。

戸籍謄本や附票の提出が必要となる場合がありますので、事前に確認をして用意しておきましょう。

また、海外転出届を提出する必要があります。

この手続きは、国外転出する日の約2週間前から当日までに、住んでいる市区町村の役所で行います。

海外転出届を提出すると、国民年金の加入義務はなくなりますが、任意加入することができます。国民保険の加入は抹消されます。

また、海外に住所を変更する場合はさらに、転居先の海外の住所を登録する手続きも必要となります。

そして将来、日本に戻ってきたときには、改めて国外からの転入届を提出します。

以上が、海外に住所を完全に変更する場合の一般的な手続きになります。

このような手続きを経て完全に海外へ引っ越すと、その個人事業主は非居住者という扱いになり、所得税の課税対象になる所得は日本国内で稼いだ所得のみとなります。

一方、海外に引っ越しをする場合でも、日本国内に住所を持っているなど、完全には拠点を海外に移さない場合があるでしょう。

その場合は「居住者」という扱いになり、どの国で稼いだ所得も全てが課税対象となります。

個人の状況によって、引っ越しのとき、確定申告のとき、それぞれのタイミングで必要な手続きの内容が異なります。

特殊な手続きが多いため、詳細は各市区町村の役所に問い合わせておくことをおすすめします。

また、海外からの納税方法についても、どのような手段があるのか、あらかじめ税務署に確認して決めておいたほうがよいでしょう。

預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書の提出

この章では、口座からの引き落としによって納税できる「振替納税」を希望する場合に必要な「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書」の提出方法について説明します。

提出が必要な人や、提出期限についても解説します。

振替納税したい人は提出が必要

所得税や消費税などを支払うとき、振替納税を利用することで、納付する金額を自動的に口座から引き落とすことができます。

しかし、振替納税を利用するには、事前に「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書」を提出する必要があります。

この書類を提出しなければ、口座引き落としによる納税はできません。

提出する必要があるのは以下のような場合です。

  • 振替納税を利用する場合
  • 振替納税を利用しており、口座情報の変更がある場合
  • 振替依頼書を再発行する必要がある場合

口座振替依頼書は、所轄の税務署のほか、金融機関の窓口でも提出することができます。

金融機関の窓口を利用する場合には、念のため事前に、取り扱いについて問い合わせをしておきましょう。

提出について

口座振替依頼書は、税務署や国税局のホームページからダウンロードすることができます。

提出先は、納税地を所轄する税務署か、振替依頼書に記載されている金融機関の窓口となります。

提出期限は納税期限までとなっていますが、スムーズにいかない場合にも備えて、余裕を持って提出するようにしましょう。

また、e-Taxでの提出も可能です。金融機関届出印や電子証明書は不要です。

提出する際には、記入漏れや記入誤りがないように十分注意しましょう。

(参考:国税庁|[手続名] 申告所得税及び復興特別所得税、消費税及び地方消費税(個人事業者)の振替納税手続による納付
(参考:国税庁|振替納税の新規(変更)申込み

個人事業の開業・廃業等届出書

「個人事業の開業・廃業等届出書」は、個人事業主が事業を開始する際に提出するものですが、事務所の移転・廃止などの変更があった場合にも提出する書類です。

この章では、特に事務所移転における届出の必要性や提出先、提出期限、そして提出方法について解説します。

事務所移転の場合届出が必要

個人事業主が事務所を移転する場合、移転前と移転後の住所を記載した「個人事業の開業・廃業等届出書」を提出する必要があります。

期限については、移転後1カ月以内に提出することが義務付けられています。

なお、移転後に手続きを行うと、納税書類や確定申告書の送付先が移転前の住所になってしまう場合があります。

移転前に届出することをおすすめします。

提出先

「個人事業の開業・廃業等届出書」の提出先は、所轄の税務署です。

開業の場合は居住地を管轄する税務署に、廃業の場合は廃業した地域の税務署に提出します。

事務所の移転については、移転前の税務署または移転後の税務署のいずれかに提出すればよいことになっています。

提出先の詳細については、あらかじめ税務署のホームページや電話での問い合わせ、税務署での相談などにより、確認しておくことをおすすめします。

提出期限

個人事業の開業・廃業等届出書の提出期限は、開業・廃業・事務所移転があった場合、それぞれのケースで異なります。

開業届は開業日の1か月以内、廃業届は廃業日の1か月以内です。

そして、事務所移転届は移転日の1か月以内に提出する必要があります。

期日までに必ず提出しましょう。

提出は郵送かe-Tax

個人事業の開業・廃業等届出書の提出方法には、税務署窓口への持参か郵送、または電子申告システムのe-Taxを利用する方法があります。

e-Taxは、国税庁のウェブサイトから利用可能で、24時間申告ができるため手続きがスムーズです。

ただし、e-Taxの利用には事前にマイナンバーカードや、読み取り機器としてのスマートフォンまたはICカードリーダライターなどの準備が必要になります。

紙の届出書を提出する場合は、提出期限までに自分で税務署に提出するか、郵送で送付する必要があります。

(参考URL:国税庁|[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続

国民健康保険・国民年金の住所変更手続き

個人事業主が国民健康保険・国民年金の住所変更手続きをする場合、それぞれ個別に手続きが必要です。

国民健康保険は、住所変更の手続きをしないと保険証が無効になり、治療費が自己負担になる場合があります。

国民年金は、第3号被保険者の場合は配偶者の勤務先に、第1号被保険者の場合は居住地の役所に届出をする必要があります。

手続きに必要な書類や提出期限はそれぞれ異なるため、事前に確認が必要です。

(参考:日本年金機構|年金に加入している方が引越したときの手続き

従業員がいる場合の手続き

この章では、従業員を雇用している場合の手続きについて説明します。

健康保険や厚生年金保険、労災保険などの社会保険関係の手続きや、給与支払事務所の開設、移転、廃止に必要な届出書の提出方法などを解説しています。

これらの手続きをきちんと行うことで、従業員の社会保障を確保し、企業の運営に必要な事務手続きを適切に行うことができます。

健康保険・厚生年金保険

従業員がいる場合には、健康保険と厚生年金保険に加入する必要があります。

加入手続きは、社会保険事業所への届出によって行います。

また、従業員の入社や退職などの変更があった場合も、社会保険事業所へその届出を行う必要があります。

これらの手続きには厳格な期限があるため、早めに手続きを行うことが重要です。

住所の変更がある場合にも、自分のケースで必要な手続きはどのようなものなのか、社会保険事業所に確認をして対応しましょう。

(参考:日本年金機構|従業員を採用したとき

労災保険

従業員がいる場合、労働災害が発生した場合に備え、労災保険に加入することが法律で義務づけられています。

加入手続きは、労働基準監督署または公共職業安定所への届出によって行います。

また、従業員の入社や退職などにより、変更の必要が生じた場合にはさらに届出が必要です。

住所の変更がある場合にも、自分のケースで必要な手続きはどのようなものなのか、労働基準監督署または公共職業安定所に確認をして対応しましょう。

(参考:厚生労働省|事業主の行う雇用保険の手続き

給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書

従業員がいる場合で、給与支払いを行う事務所の開設、移転、または廃止をする場合には、届出書を提出する必要があります。

提出先は、所轄の税務署です。

期限については、「開設、移転又は廃止の事実があった日から1か月以内」とされています。

個人事業主が住所変更の手続きを忘れていた場合は?

個人事業主が住所変更の手続きを忘れた場合、罰則があるわけではありませんが、気が付いたときに速やかに手続きを行うべきです。

住所変更の各種手続きが遅れていると、税務署に提出する確定申告が滞ってしまう可能性もあります。

また、住所変更の届出を忘れていると、さまざまな機関とのやりとりでもトラブルが生じてしまったり、いざというときにスムーズに手続きが進められなくなってしまう可能性があります。

確定申告が滞る可能性がある

個人事業主が住所変更のさまざまな手続きを怠ると、確定申告に支障をきたす可能性があります。

まず、事前に届く確定申告のための書類や通知書などが以前の住所に届いてしまうと、期限内に申告することが難しくなる可能性があります。

また、申告漏れや申告内容の誤りだと判断されてしまうと、税務署から指摘を受けたり、追徴課税が発生してしまうこともあります。

各機関への住所変更の手続きは、決まったときに迅速に行うようにしましょう。

まとめ

  • 個人事業主は住所変更時に、納税地が変更になるかどうかを確認する必要がある
  • トラブルを避けるためには、状況に合わせた必要手続きを怠らないことが重要
  • 事務所の移転時には、必要な手続きがある
  • 海外に転居する時にも、必要な手続がある
  • 各種手続きは期限内に行い、正確な情報を提出することが重要

今回の記事では、個人事業主が住所変更する際の手続きについて解説しました。

自宅や事務所の住所変更、海外へ移住する場合の変更、預貯金口座振替依頼書、開業・廃業届出書など、状況に応じてさまざまな手続きが必要になります。

また、国民健康保険や従業員がいる場合の手続きも留意すべき点です。

手続きを怠ると確定申告が滞ったり、税務署の指摘を受ける可能性があるため、住所変更による手続きは速やかに行いましょう。

今回の記事を参考に、必要な手続きを確認して、適切なタイミングで行動することをお勧めします。

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