個人事業主には業務委託契約書が必要!契約書を作るメリットや注意点を解説!

注意点・ない場合を解説 個人事業主には業務委託契約書が必要! コラム

個人事業主にとって、業務委託契約書の作成は法律上の義務ではありませんが、事前に契約内容を明確にしたうえで業務にあたらなければ、思いもよらないトラブルが発生することがあります。

最悪の場合、業務に対して報酬が支払われないというリスクを未然に防ぐためにも、きちんと業務委託契約書を作成しておくべきです。

本記事では、個人事業主に業務委託契約書が必要な理由と業務委託の種類、業務委託契約書を作成するメリットや注意点、作成手順について詳しく解説します。

個人事業主として業務委託契約書についてお悩みでしたら、ぜひ参考にしてください。

個人事業主には業務委託契約書が必要!ないとどうなる?

個人事業主が他の事業者に仕事を委託する場合、業務委託契約書の作成が必要です。

なぜなら、契約書がない場合、思わぬトラブルが発生したり、未払いのリスクがあるためです。

また、報酬が決まっている作業以外の追加作業が発生した場合には、報酬が認められない場合があります。

契約書がないと未払いのリスクがある

業務委託契約書がない場合、報酬の未払いなどのトラブルが発生した場合に、契約内容や報酬などが証明できず、解決が難しくなる可能性があります。

メールやチャットツールなどでのメッセージのやり取りなどが残っているならまだしも、単なる口約束だけだった場合、言った言わないでトラブルになりかねません。

そうなると、個人事業主の場合はどうしても立場が弱くなってしまいがちですので、最悪の場合、報酬を支払ってもらえないというリスクもあります。

トラブルや未払いのリスクを未然に防ぎ、自分の利益を守るためにも、業務委託契約書を作成することをおすすめします。

報酬なしで追加作業の可能性も

明確な業務内容を定めた業務委託契約書がない場合、報酬なしで追加作業を依頼される可能性もあります。

クライアントから、ここまでやってもらえるつもりで契約したと主張された場合、事前に業務範囲を取り決めていなかったとしたら、個人事業主としてはやらざるを得ません。

業務委託契約書には、報酬の支払い条件や追加作業についての規定が記載されているため、契約書がない場合は、そのようなトラブルが起こる可能性があるということです。

以上のような問題を未然に防ぐためにも、業務委託契約書を作成することをおすすめします。

業務委託契約とは

業務委託契約とは、自社で対応できない業務を、ほかの会社や個人といった外部に任せる契約です。

口約束だけで仕事を進めると食い違いが発生する可能性があるため、契約書を作成することが重要です。

以上のような理由から、業務委託契約書は、業務内容や報酬などについて明確に記載されていることが求められます。

業務委託には主に以下の2つの契約形態があります。

委任契約

委任契約は、厳密には「委任契約」と「準委任契約」に分類されます。

「委任契約」とは、弁護士への訴訟依頼や司法書士への登記依頼などのような、法律行為に関する業務を依頼する際の契約形態を指します。

「準委任契約」とは、法律行為以外の業務を委任する契約のことを指し、多くの業務委託はこちらの「準委託契約」に該当することが一般的です。

たとえば、データ入力やコンサルティング、セミナーなど、労働に対する対価として報酬を支払う場合は、「準委任契約」に該当します。

つまり、クライアントから依頼された業務を「行う」ことに対して報酬が支払われる契約形態ということです。

事務作業であれば時給や日給、セミナー講師などであればセミナーの回数などに応じて報酬が支払われます。

請負契約

請負契約とは、「業務(成果物)を達成(納品)する」ことによって報酬が支払われる契約形態を指します。

Webライターやプログラマー、イラストレーターなどのように、記事やプログラム、イラストなど完成した成果物を納品することで、成果物に対しての報酬をもらう契約形態のことです。

与えられた業務を行う準委任契約に対して、クライアントに満足してもらえる成果物を完成させなければ報酬を受け取れない請負契約のほうが、責任もリスクも大きいと言えるでしょう。

参考:デジタル庁|民法(明治二十九年法律第八十九号)

個人事業主が契約書を交わすメリット

契約書には納期や報酬などの条件が記載されているため、双方納得した上で仕事を進めることができます。

また、機密保持や著作権などの取り決めも記載しておくことで、情報漏洩やトラブルを未然に防げます。

個人事業主が契約書を交わすメリットには、主に以下のようなものがあります。

トラブル回避できる

個人事業主が契約書を交わすことで、トラブルを未然に防ぎ、さまざまなリスクを回避できます。

事前に契約内容を取り決めて書面に残しておくことで、もしトラブルに発展した場合でも解決方法が明確になり、迅速に対処できます。

信頼性が高まる

個人事業主が契約書を交わすことで、お互いに信頼性を高めることができます。

新規の契約の場合は、クライアントは「期日までにちゃんと制作物を納品してくれるだろうか」という不安があるでしょうし、個人事業主としては「きちんと報酬を支払ってくれるだろうか」という不安があるでしょう。

しかし、事前にしっかりと業務内容や報酬面について協議して取り決めしておくことで、クライアントからの信頼性が高まりますし、自分自身も安心して業務に取り組めるというメリットがあります。

個人事業主がクライアントと業務委託契約書を交わす手順


それでは、実際に業務委託契約書を交わす場合、どういった流れで行うのかについて解説します。

【受注側】見積書を提出する

まず、受注側が見積書を作成し、発注先に提出します。

見積書には、以下の3点を記載しておきます。

  • 報酬額(追加作業が起きる可能性がある場合には、その報酬額も記載)
  • 作業内容
  • 納品スケジュール

【双方】契約内容を交渉する

見積書を元に、発注側と受注側で調整する事柄や追加する事柄があれば、交渉を行います。

あとからトラブルにならないように、この段階で委任契約なのか請負契約なのか、業務内容や報酬、制作物の仕様や納期などについてしっかりと話し合いをしておきましょう。

業務内容を明確にしておかないと、不当な労働を強いられた挙げ句に、安い報酬しかもらえなかった…という事態になることもあります。

そのようなリスクを避けるためにも、業務内容や範囲については、お互いが納得できるまでしっかりと話し合って契約内容を取り決めておくことが重要です。

【受注側】契約書を作成する

交渉の結果まとまった内容を、契約書に修正・追記した上で、契約書を作成します。

取引先から希望があった場合や、何度も見積書を作り直した場合には、最終版の見積書も作成しておくと便利です。

契約書は受注側が雛形を準備しているケースが一般的です。

業務の種類や内容によっては、受注側が準備した雛形だけでは不十分な場合も多くみられます。

専門的なことや細かい業務内容についてなどは、こちら側の意見も提示したうえで契約内容を取り決めていきましょう。

【発注側】契約内容を確認する

発注側が契約内容を確認し、認識の相違や文言に問題がないか、一方だけに不利な条件がないか、お互いが満足できる内容か確認します。

例えば、報酬が妥当かどうかや、制作物の仕様について受注側が求めるものと一致しているかどうかなどです。

追加または変更された項目がある場合は、それに付随して他の項目を変更する必要が生じることもあります。

そのため、再度契約内容全体を見直すなど、双方にとってメリットがある内容にできるように修正と再確認をしておきましょう。

【双方】契約を締結する

契約書の内容に問題がなければ、双方が署名・捺印を行い、契約を締結します。

最近では契約をオンラインですべて完結させることが多くなっています。

契約を電子化することで、オンラインでスピーディーに契約を締結できますし、契約書を印刷して郵送する手間も省けます。

さらに、電子契約の場合は収入印紙も不要となりますので、コスト削減にもなります。

オンラインでの契約の場合、誤ってデータを削除してしまったりしないように、PDF化して保存しておいたり、外部ハードディスクに別途保存しておくなど、保管方法にも注意しておくことが必要です。

個人事業主が業務委託契約書に記載すべき内容


業務委託契約書を作成したのに、あとから記載内容に不備や不足を発見したなどということは、トラブル防止のためにも避けたいものです。

ここでは、厚生労働省の「契約書の記載例」からの引用も参考にしながら、業務委託契約書に記載すべき内容と、記載例について説明します。

署名欄への記入の仕方

屋号を持つ個人事業主の場合、契約書における署名は「屋号と氏名」という形で行うべきです。

単に屋号だけでは、関係者を特定することが難しく、個人事業主としての契約書としての効力が不足する可能性があります。

商号登記を行っていない個人事業主の屋号は一般には公には知られていないため、第三者がこれを確認する方法はありません。

したがって、「◯◯(屋号)こと◯◯(氏名)」という表記を使用して、契約当事者を明確に特定できるように記載すべきです。

住所情報や必要な印章も、忘れずに契約書に記載しましょう。

契約形態

契約形態については、業務委託であれば「甲(発注側)は、 乙(受注側)に△△△に関する業務(以下「本件業務」という。)を委託する」といった、定型の文言で記載します。

業務内容・業務範囲

業務内容や業務範囲について、記載します。

例えばWebライティングであれば「乙が運営するWebサイトに掲載する原稿の執筆」、Webデザインであれば「 乙が運営するWebサイト及びWeb広告のデザイン作成」といった内容です。

報酬の金額や支払い方法

報酬の金額は、例えば紙媒体のライティングであれば「400字詰め原稿用紙1枚あたり〇〇〇〇円とする」、Web媒体のライティングであれば「1文字〇円とする」と、明確に記載します。

また、支払い方法と支払期限の記載も必要です。

記載例としては「甲は、乙から毎月末日までに提出を受けた請求書に関し、各月分の報酬額を翌月末日までに乙指定の銀行口座に振り込むことで支払う。なお、その際の振込手数料は、甲の負担とする。」といった形です。

業務に関わる経費

業務に関わる経費を、どちらがどのように負担するかについても記載します。

記載例としては、「交通費、通信費等諸経費の取扱いについては、甲乙協議の上、決定する」や、「甲が事前に承諾したものを除き乙が負担する」といった文言です。

損害賠償の義務

情報漏洩などのトラブルに備えて記載が必要なのが、損害賠償についての項目です。

「甲又は乙の責めに帰すべき事由により契約書に定めた内容が守られず、甲又は乙が重大な損害を受けた場合は、直接かつ現実に受けた通常損害の範囲内において、相手方に損害賠償を請求できるものとする」といった文言で記載します。

知的財産権の帰属

ライティングやデザインなど、制作物を納品する形の契約の場合に必要なのが、著作権などの知的財産権に関する規定です。

「本件業務の成果物に関する著作権等の知的財産権については乙に帰属する」といった文言で記載します。

秘密保持条項

ほかの企業や個人の行っている業務の一部を委託される業務委託では、秘密保持条項を必ず設ける必要があります。

「乙は、本件業務の履行にあたって知り得た情報を取り扱うに当たっては、適切に取り扱わなければならない。」や「甲の承諾なく第三者に開示または漏洩してはならない。」といった文言で記載されます。

納品の期限や検収期間

納品期限や、発注側が検収を行う期間を記載する場合は、以下のような文言が使用されます。

「甲は、乙から提出を受けた成果物に関し、○日以内に検査を行う。検査により成果物が一定の水準に達していないと甲が判断した場合は、乙はこれを○日以内に修正すること」

有効期限・中途解約

契約の効力がある期間と、発注側・受注側の事情により期間の途中で解約する場合の規定を記載します。

契約期間についての記載例は「甲が本件業務を乙に委託する期間は、令和○年○月○日から令和○年○月○日までとする」です。

また、中途解約の場合の記載例は以下の通りです。

「甲又は乙は、本契約期間中であっても、契約の相手方が本契約に違反したときは、本契約を解除することができる。」

「契約満了日1ヶ月前までに甲または乙いずれか一方から本契約を終了させる旨の申し出を行う」

所轄裁判所

最後に、所轄裁判所についても記載します。

記載例は「本契約に関する訴訟については、〇〇裁判所をもって管轄裁判所とする」といった形です。

雛形・テンプレートから業務委託契約書を作成する際のポイント

テンプレートを適切に使用すれば、簡単に業務委託契約書を作成できます。

しかし、注意点を把握しておかないと、契約後に重大な問題が発生する可能性もあることを理解してください。

以下では、雛形から業務委託契約書を作成する際の要点を整理します。

テンプレートの内容をしっかり読み込む

業務委託契約書において、一番気をつけなければならないことは、テンプレートを使用する際に内容を全く理解せずに契約に進んでしまうことです。

テンプレートを作成した信頼性のある人物がいたとしても、そのテンプレートが具体的に何を規定しているかを把握していない場合、業務の実行中に何が許可されているか、どこまでが許容範囲かなどを判断できなくなります。

契約違反が発生した後に、「テンプレートを使用しただけで、詳細を理解していなかった」という言い訳は通用しません。

さらに、同じ業務委託契約書であっても、微妙な違いが存在し、時にはフリーランスやクライアントに有利な記述が含まれていることもあります。

可能であれば、利用するテンプレートの特徴や違いを認識し、適切な選択を行うことが重要です。

作業に応じて内容を変更する

一般的な業務委託契約書のテンプレートは、通常、一般的なケースに適した形式で提供されています。

しかし、業務委託契約を締結する場合、作業内容が専門的な場合もよくあります。

このような場合、契約書を具体的な作業に合わせて変更する必要が生じます。

たとえば、「販売後に印税が発生する」や「一定の成果を達成した場合にボーナスが支給される」などの契約条件が含まれる場合、これらの条件を契約書に明確に記載することが重要です。

また、同じ業務委託契約書でも、微妙な違いが存在し、フリーランスやクライアントに有利な表現があることもあります。

可能であれば、使用するテンプレートの特徴を把握し、契約書の内容を最適化することがおすすめです。

曖昧な点、不安点をそのままにしない

業務委託契約書を読む際に、疑問や不安が生じる場合があります。

例えば、「この部分は実際に必要なのか?」や「少し不利に感じる箇所があるな」といったことです。

このような場合、遠慮せずに疑問点を取り上げ、積極的に対処しましょう。

契約書は一度締結すると、途中で変更するのが難しいことが多いです。

したがって、気になる点があれば契約相手と協議し、最適な解決策を模索することが重要です。

困った時はプロに相談する

業務委託契約は、個人事業主にとって身近ながら、理解が難しいこともあります。

自力では解決が難しい場合、問題を抱え込まずにプロに相談することが大切です。

契約内容についての相談は、法律の専門家である弁護士に頼るのが賢明です。

場合によっては、業務委託契約書そのものをプロに作成してもらうこともできます。

書類の作成は主に行政書士の専門領域であり、通常は1部1万円前後から依頼が可能です。

個人事業主が業務委託契約書を交わす方法


業務委託契約書を交わすには、「文書(紙)で契約する」か、「電子化して電子契約書とする」という2つの方法があります。

文書で契約する

契約書をかわす方法の一つ目は、従来の方法である文書(紙)での契約です。

郵送、あるいは直接取引先を訪問してのやり取りになるため、契約の締結に時間がかかるというデメリットはあります。

しかし、「紙」で実物がある、押印されている、という安心感があるため、電子契約に抵抗がある取引先との契約には適しているでしょう。

電子化する

もう一つの方法が、契約書を電子化してやり取りする方法です。

「クラウドサイン」のように、契約締結から契約書管理まで可能なクラウド型の電子契約サービスもあります。

契約書の作成者側がサービスへの登録を行えば、利用できます。

電子化した契約書であれば、オンライン上で契約を交わすことが可能なため、契約をスピーディーに行えます。

そのまま電子保存をすることができたり、収入印紙が不要になるのもメリットです。

まとめ

  • 個人事業主には業務委託契約書が必要。契約書がないと未払いのリスクがある。
  • 業務委託契約とは、口約束だけだと食い違いが発生する可能性がある。
  • 個人事業主が契約書を交わすことで、トラブル回避しやすく信頼性が高まるメリットがある。
  • 個人事業主が契約書を交わすための手順は、主に4つある。
  • 個人事業主の業務委託契約書作成には6つの注意点がある。

個人事業主が業務を請け負う場合には、事前に業務委託契約書を交わしておくことで、安心して業務に取り組めるメリットがあります。

トラブルやリスクを回避して自分の身を守るためにも、しっかりと業務内容や範囲、契約期間や報酬形態、保証や損害賠償などについてしっかりと取り決めをしたうえで契約書を作成しておくことが重要です。

本記事が、あなたが個人事業主として業務委託契約をする際の参考になれば幸いです。

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