個人事業主は屋号付き口座を開設するべきか、メリットやデメリットを解説していきます!
屋号付き口座とは
屋号付き口座とは、個人事業主が事業のためにつくる銀行口座です。
事業の名前(屋号)を口座名義に付けるため「屋号付き口座」と呼ばれています。
屋号には一般的に「〇〇企画」や「〇〇デザイン事務所」、「〇〇自動車」など、どんな事業か分かる名前が付けられます。
「法人」や「会社」のような法人と間違われやすい屋号は付けられないため注意しましょう。
個人事業主が屋号付き口座を開設するメリット
お金の管理が楽になる
屋号付き口座を開設する1つ目のメリットは、個人用の口座と事業用の口座を分けることで、お金の管理が楽になることです。
プライベートと同じ個人口座しか使用しない場合、帳簿付けなどで見返した際に、プライベートで利用した金額なのか事業で利用した金額なのか、分からなくなってしまうことがあります。
しかし、事業用の口座として屋号付き口座を開設しておけば、事業に使用したことが一目でわかるため、お金の管理が楽になります。
確定申告に対応しやすい
屋号付き口座を開設する2つ目のメリットは、1年間に経費として支払った金額が一目で分かるため、確定申告が楽になることです。
屋号付き口座の入出金と残高を見れば、確定申告のための仕訳や確認がとてもスムーズです。
「プライベートの支出を間違えて経費にしてしまった」、「経費として計上できたものをプライベートの支出にしてしまった」といったミスを防ぐこともできますし、仕訳の抜け漏れのチェックも簡単です。
毎年の作業の手間を減らせるのは嬉しいですね。
会計ソフトを導入しやすい
屋号付き口座を開設する3つ目のメリットは、会計ソフトの導入がしやすいことです。
最近の会計ソフトは金融機関と連携できるものが多く、事業用の口座情報を会計ソフトに取り込めば、簡単に仕訳データを作成できます。
損益計算書や試算表といった決算書類も自動的に作成されるので、経理業務に手間や時間をかけずにすむのは大きな利点ですね。
取引相手に信頼されやすい
屋号付き口座を開設する4つ目のメリットは、取引相手に「真面目に事業に取り組んでいる」と思われ、信頼されやすくなることです。
取引相手が自分に売上金や手数料などを振込する際、個人名義の口座であると不安を抱かれることがあります。
その点、屋号付き口座なら、実際に事業に継続的に取り組んでいることが伝わり、安心感を与えることができます。
個人事業主が屋号付き口座を開設するデメリット
開設に手間がかかる
1つ目のデメリットは、口座の開設に手間がかかることです。
屋号付き口座の開設は、一部のネット銀行ではオンライン手続きが可能な場合もあるのですが、利用したい銀行でオンライン手続きができない場合は銀行窓口での手続きをしなければなりません。
また、通常の口座開設同様に、本人確認ができる書類や個人事業主であることが証明できる書類なども必要となり、手間がかかってしまいます。
支店によっては開設できない場合がある
利用したい銀行の支店によっては、一人で複数の口座を作れない、事務所のある場所を管轄している支店でしか作れない、決まった支店の窓口でしか事業用口座は作れないなど、開設に制約がある場合があります。
開設予定の支店に問い合わせ、屋号付き口座の開設が可能かどうか、近くに事務所がない場合でも開設できるか、必ず確認するようにしましょう。
個人事業主が屋号付き口座を開設する銀行を選ぶ際のポイント
事業内容に適している
選択するべき銀行は、今後の事業展開によって変わります。
たとえば、特に銀行から融資を受ける予定がない場合や、売上の入金および仕入にかかった代金を振り込むような取引がメインである場合は、手数料が安いネット銀行を選択するのがいいでしょう。
一方、事業を運営していく中で、将来的に事業を拡大していく予定であり、融資を考えているような場合には、融資の相談をしやすい地域の地方銀行や信用金庫、信用組合を選択するのがおすすめです。
ATMが使いやすい
少しでも取引の手間を軽減するために、ATMの使いやすさも確認しておきましょう。
いつでも取引に対応するためには、ATM台数や、身近にあるかどうかということも重要です。
利用可能な時間帯、小銭を利用できるかどうかも確認しておいたほうがよいでしょう。
全国的に設置台数が多いのはゆうちょ銀行ですが、時間帯によっては、利用できない取引がある場合もあります。
取引頻度が多い方、近くにゆうちょ銀行のATMが無い方には、セブン銀行のATMを利用できる銀行がおすすめです。
セブン銀行のATMはセブンイレブン内に設置されているため、身近にセブンイレブンがあれば行きやすく、24時間利用可能です。
その他のコンビニにもATMは設置されていますので、利用できるかどうかを事前に確認しておきましょう。
ただし、コンビニのATMでは小銭の利用はできませんので、小銭を扱う場合には注意が必要です。
口座開設しやすい
屋号付き口座を開設のしやすさで選ぶのも1つのポイントです。
個人事業主の方の中には、屋号付き口座を開設したいが窓口に行く時間がないという方もいるのではないでしょうか。
少しでも開設時の手間や時間を削減したい場合は、PayPay銀行がおすすめです。
PayPay銀行は、Webサイトだけで事業の内容が分かり、開業してから6ヵ月以上経っている場合に限りますが、開業届を提出しなくても口座開設が可能です。
この様に、開設の手間や時間があまりかからない場合がありますので、銀行を選ぶ上での1つの基準にしましょう。
手数料が安い
銀行の手数料が高いと、手取り収入が減少してしまいます。
手数料が安いかどうかも、銀行選びの1つのポイントです。
取引回数が多く、手数料が高くなりそうな場合は、メガバンクなどに比べて手数料が安いネット銀行がおすすめです。
また、ATMを利用して振り込む場合、ATMの種類や利用時間によって振込手数料が変動する銀行もあります。
利用回数が多くなるATM、時間帯の振込手数料を確認しておきましょう。
【個人事業主におすすめ】屋号付き口座を開設できる銀行7選
屋号付き口座を開設する際は、メガバンクかネットバンクがおすすめです。
メガバンクには、ネットバンクと比較して信頼性が高く、実店舗があり安心できるという利点があります。
一方でネットバンクには、メガバンクと比較して口座開設しやすく、手数料が安いというメリットがあります。
それぞれの良さがありますので、自分の目的に適した銀行を選ぶことが大切です。
屋号付き口座を開設できるメガバンク
三井住友銀行
三井住友銀行では、屋号付き口座の開設に必要な書類が少なく、準備をする手間があまりかかりません。
本人確認書類と印鑑のほか、税務署の受付印がある開業届を用意すれば、自宅か事務所の住所を管轄する支店窓口で申し込みをすることができます。
キャッシュカードは後日郵送となりますが、口座開設の手続きは当日中に完了します。
また、三井住友銀行のWeb通帳では、2019年以降の明細であれば、30年分の利用明細を見ることができます。
取引の件数が多く、通帳を記帳して保管しておくのが大変な場合は、Web通帳を利用すると管理も楽になり安心です。
三菱UFJ銀行
三菱UFJ銀行では、グループ会社である「三菱UFJフィナンシャルパートナーズ」が資金調達や預金取引、資金決済といった相談の窓口になっており、口座開設以外にもビジネスに関する相談ができます。
また、相談だけでなく三菱UFJ銀行が展開するビジネスマッチングサービスを利用することで、よりビジネスを効率的に行うことも可能です。
ただし、屋号付き口座の開設にあたっては、個人の身分証明書などの他に、下記のいずれか1点を用意する必要があります。
- 国税または地方税の領収書または納税証明書(原本)
- 社会保険料の領収書(原本)
- 商号登記簿謄本(原本)
- 事務所の賃貸契約書(コピー可)
- 公共料金の領収書(原本)
- 税務署収受印付の確定申告書(原本)
みずほ銀行
みずほ銀行では、屋号付き口座を一般的な個人口座と同様のものとして取り扱っています。
そのため屋号付き口座も、個人口座の開設と同じように本人確認書類と印鑑を窓口に持参して申し込むことになります。
窓口では事業内容や口座開設目的などを確認されるため、来店前に事業を紹介する資料などを用意しておくことが大切です。
ただし、複数の口座を開設できないという制限があるため、みずほ銀行ですでに個人口座を持っている方は屋号付き口座を別途開設することが難しいので注意しましょう。
りそな銀行
りそな銀行は、屋号付き口座を「りそなビジネスダイレクト口座」として取り扱っています。
りそな銀行に口座を開設した個人事業主が、審査を受けてビジネスダイレクトの利用を開始するという形になります。
審査の結果は後日、郵送にて送られてきます。
ただし、「りそなビジネスダイレクト口座」には月額手数料が発生するので注意しましょう。
屋号付き口座を開設できるネットバンク
PayPay銀行
PayPay銀行(旧ジャパンネット銀行)では、屋号付き口座の開設に必要な書類が少なく、ネット完結でスムーズに申し込みをすることができます。
また、開設が完了すると必ず無料でVISAデビット付キャッシュカードをもらえます。
VISAデビットを利用可能店でクレジットカードのように提示して使えば、すぐに銀行口座の残高が減り、お金の管理も楽になります。
そのほかにもPayPay銀行には、売上金をPayPay払いで受け取ることができる、融資もネット完結で申し込めるなどの特徴があります。
ただし、屋号付き口座では、デビットカード利用によるポイント付与やキャッシュバック還元は無いという点に注意しましょう。
楽天銀行
楽天銀行では、屋号付き口座を「個人ビジネス口座」として扱っています。
開設手続きはネット完結で、まず個人口座をWEB申込で開設し、その後、個人ビジネス口座をWEB申込する流れになります。
かんたんなWEB決済画面を作成する機能や、メールアドレスと名前(口座名義)だけで振込ができる機能などがあり、ネット上の取引に役立つ決済サービスが充実しているのが特徴です。
また、手数料が他行に比べて安く、特に海外に送金する際や受け取る際の手数料が安いという魅力があります。
そのほかにも、JCBのビジネスデビットカードを利用すれば、100円につき1円の現金還元が受けられます。
しかし、デビットカードを利用するには別途申し込みが必要であり、年会費もかかりますので理解しておきましょう。
GMOあおぞらネット銀行
GMOあおぞらネット銀行には、手数料が業界最安レベルであり、Visaデビットカードを利用すると1%キャッシュバックが受けられるという魅力があります。
開設手続きはネット完結で、まず個人口座をWEB申込で開設し、その後、個人事業主口座をWEB申込する流れになります。
また、GMOあおぞらネット銀行には、口座の中にさらに細かい仮想の口座を作る「つかいわけ口座」というサービスがあり、取引先別に異なる振込先情報を10件まで作ることができます。
売上金などの振込を受けると、それぞれの振込先情報に紐づいた仮想口座に自動的に振り分けられるため、得意先ごとに振込を区別したい場合には便利です。
ただし、2023年4月現在、海外送金はできないので注意しましょう。
個人事業主が屋号付き口座を開設するために必要な書類
本人確認書類
個人事業主が屋号付き口座を開設する場合、まずは個人口座の開設時と同様に、本人確認書類を用意する必要があります。
本人確認は、書類1点で済む場合と、書類2点が必要な場合があります。
代表的な書類の例は以下の通りです。
【1点で本人確認できる書類】
- 運転免許証
- マイナンバーカード
- パスポート
- 運転経歴証明書
- 特別永住者証明書
- 住民基本台帳カード
- 官公庁から発行、発給された書類で官公庁が顔写真を貼付したもの
- 在留カード
- 各種福祉手帳
【2点で本人確認できる書類】
本人確認を書類2点でする場合は、以下の「①の書類2点」または「①の書類1点と、②または③の書類1点」という条件を満たす必要があります。
種類①
- 各種年金手帳
- 印鑑登録証明書(当該実印を取引に利用する場合)
- 母子健康手帳
- 後期高齢者医療被保険者証
- 各種児童扶養手当証書
- 共済組合の組合員証、加入者証
- 各種健康保険証
種類②
- 住民票の写し
- 官公庁より発行、発給された書類(顔写真なし)
- 印鑑登録証明書(当該実印を取引に利用しない場合)
- 戸籍の附票の写し
- 住民票の記載事項証明書
種類③
- 社会保険料の領収書
- 国税、地方税の領収書または納税証明書
- 電気、水道ガスなど公共料金の領収書
個人事業主の確認書類
屋号付き口座を開設するためには、個人事業主の確認書類が必要です。
代表的な個人事業主の確認書類は、以下の通りです。
- 個人事業開業届出書の控え(税務署の受付印があるもの)
- 確定申告書(税務署の受付印があるもの)
- 個人事業開始申告書の控え(税務署の受付印があるもの)
- 青色申告承認申請書の控え(税務署の受付印があるもの)
- 国税又は地方税の領収書または納税証明書
屋号を確認できる書類
上記の個人事業主の確認書類に「屋号」「本人氏名」が記載されていない場合は、下記のような書類で「屋号」の確認が必要となります。
既にホームページを作成している場合は、そのURLや画面の資料を用意しておくと良いでしょう。
- 事業の概要を紹介する資料
- 事業の案内パンフレットなど
- 各行政機関発行の許認可証
印鑑
屋号付き口座を開設する際には、屋号が彫刻された印鑑を銀行印として使うのが一般的です。
印鑑が必要な銀行で口座を開設する場合は、準備をしておきましょう。
個人事業主が屋号付き口座を上手く活用するコツ
屋号付き口座から支払う費用を決める
公共料金、ネット通販での仕入など、屋号付き口座から支払う費用を決めておきましょう。
プライベートな口座とは、最初に用途をきちんと分けておくことで、生活費と混ざってしまう心配がなく安心です。
生活費はプライベート口座に移動する
生活費は経費として計上できません。
屋号付き口座からはプライベートな支払いはせず、生活費はプライベート口座に移動して、「事業主貸」として仕訳をするようにしましょう。
仕訳の作成や経費の管理がしやすくなります。
経費の按分
自宅の家賃や光熱費は、割合に応じて按分することで、事業にかかった部分の金額を経費として計上することができます。
屋号付き口座から支払いをする場合は、プライベート部分の金額を「事業主貸」として、事業にかかった部分の金額を経費として、それぞれ区別をして仕訳をしましょう。
まとめ
屋号付き口座とは、個人事業主が事業用のためにつくる銀行口座であり、事業の名前(屋号)を口座名義に付けるため「屋号付き口座」と呼ばれています。
個人用の口座と事業用の口座が分けられることで、プライベートで利用した金額と事業に利用した金額が一目でわかり、お金の管理が楽になります。
銀行の支店によっては、屋号付き口座が作れません。
口座を開設する前に、手続きを行う予定の支店に確認するようにしましょう。
屋号付き口座を開設する際の銀行口座選びでは、「事業内容に適しているか」「ATMが使いやすいか」「口座開設しやすいか」「手数料が安いか」などの情報を比較しましょう。
メガバンクには、ネットバンクと比較して信頼性が高く、実店舗があり安心できるという利点があります。
ネットバンクには、メガバンクと比較して口座を開設しやすく、手数料が安いというメリットがあります。
それぞれの良さがありますので、自分の目的に適した銀行を選択しましょう。