個人事業主の領収書に印鑑が必要な理由、領収書の書き方について解説していきます!
個人事業主の領収書に印鑑が必要な理由
個人事業主の領収書に印鑑が必要な理由には、以下2つがあります。
領収書の偽造防止
1つ目の理由は、領収書の偽造防止です。
たとえ印鑑が押されていない領収書でも、必要な項目が記載されていれば領収書として認められます。
しかし、印鑑のない領収書は、誰でも簡単に偽造することができてしまいます。
簡単に偽造できる領収書を発行することで、取引先の不正な経費精算を助けることになってしまったり、取引先の会計処理が事実とは異なる内容になってしまったり、大きなトラブルにもなりかねません。
また何よりも、印鑑のない領収書が取引先からの信用低下につながるようなことは避けたいものです。
正式な領収書であることを示すため、印鑑は必要です。
収入印紙の消印
2つ目の理由は、収入印紙の再利用を防ぐための消印です。
発行する領収書の金額が5万円以上の場合は、必ず領収書に収入印紙を貼らなければなりません。
その際、台紙と収入印紙を跨ぐように押すのが消印です。
消印を押すことは印紙税法で定められており、収入印紙に消印を押すことで、印紙税を納税したことになります。
収入印紙を貼り忘れたり、貼り付けた収入印紙に消印を押し忘れたりしてしまうと、納税として認められません。
罰金として、過怠税という収入印紙の金額の3倍、自主的に気が付いて申告をした場合でも1.1倍を支払わなければならなくなる可能性がありますので、領収書の金額には注意しましょう。
個人事業主の領収書に向いている印鑑の種類
個人事業主の領収書に向いている印鑑には、以下の2種類があります。
角印
領収書の発行者を表す印鑑には、一般的に「角印」が利用されています。
法人の角印には会社名が入っているので、「社判」や「会社印」と呼ばれることもあります。
角印は、役所等への印鑑の登録をされず、柔軟に使用できる印鑑として使われています。
このため、見積書や請求書、領収書などの書類には、角印が押されていることがほとんどです。
時と場合にもよりますが、印鑑を押す必要がある際は、多くのケースで角印が使われていると覚えておきましょう。
丸印
領収書に押す印鑑の種類は特に定められておらず、「丸印」も領収書に使用することができます。
法人の丸印には会社名とともに「代表者印」などの文字が入っているため、「代表者印」とも呼ばれ、法人登記に使われたものであれば「会社実印」とも呼ばれます。
このように丸印は、実印や銀行印など、重要な印鑑として使用されるものです。
法人登記、会社の銀行口座の開設、大切な契約書への押印などにも丸印が使われます。
偽造されてしまうという万が一のリスクを考えると、可能な限り使用を避け、大切に保管しておく必要があるでしょう。
しかし、信頼のある取引相手で、印影を悪用される心配が少なければ、領収書にも丸印を使うことが可能です。
個人事業主の領収書印鑑についてよくある疑問
個人事業主の領収書について、よくある質問を紹介します。
領収書の印鑑にシャチハタは使える?
領収書の印鑑として、シャチハタを利用することも可能です。
個人事業主の場合、人によっては屋号を設定していないこともあるため、屋号名ではなく自分の名前が入っている印鑑でも領収書に押すことができます。
そもそも領収書の場合、印鑑は必須ではありません。
領収書を受け取る側に問題がなければ、シャチハタが押されているものでも領収書として有効です。
しかし、シャチハタは量産されていて誰でも入手できるため、押印による偽造防止効果が期待できません。
よって、個人名の印鑑であっても、可能な限りシャチハタ以外の印鑑を使いましょう。
印鑑の色は赤と黒どっちがいい?
領収書に印鑑を押すこと自体が義務ではないため、赤色と黒色のどちらが良いかという決まりはありません。
しかし、社名が黒色で印刷されていたり、黒いゴム印で押印されている場合が多いため、そこに半分重ねて押すことの多い印鑑には一般的には赤色を利用します。
赤色の印鑑は目にする機会も多く、領収書を見たときにも印鑑が押されていることがひと目で分かります。
領収書に印鑑を押し忘れたらどうすべき?
繰り返しになりますが、領収書に発行者の印鑑を押すことは義務付けられていないため、押し忘れたとしても特に問題はありません。
しかし、取引を継続的にする相手や、取引金額が高額な場合は、トラブルを避けるためにも回収して印鑑を押し直しましょう。
押し直すことで、丁寧で信頼できる取引先だと思われる可能性もあります。
ただし前述のように、収入印紙の消印については、押し忘れると納税が認められず、トラブルに発展しかねません。
過怠税という収入印紙の金額の3倍、自主的に気が付いて申告をした場合でも1.1倍を支払わなければならなくなることもあります。
収入印紙の消印を押し忘れてしまった場合は、回収して確実に押すようにしましょう。
個人事業主の領収書の書き方
個人事業主が領収書を作成する際は、以下の項目を記載する必要があります。
日付
領収書に記載する金額が支払われた日を記載します。
日付に間違いがあると、偽造や改ざんなどの違法行為だと思われてしまう場合もあります。
間違いがないように注意しましょう。
宛名
株式会社や合同会社などを省略せずに、取引先の正式名称や商号を記載します。
きちんと明記せずに「上様」など略式の宛名で発行してしまうと、取引先で領収書として認められない可能性があります。
但書
軽減税率の対象なのか、商品やサービスがどんなものなのか、購入された内容を記載します。
きちんと明記せずに「品代」などの大きな括りにしてしまうと、取引先で領収書として認められない可能性があります。
金額
支払われた金額を、間違いが無いように、正確に記載します。
また、改ざん防止のために、数字の前に「¥」や「金」を入れる、数字の間隔を開けない、3桁ごとにカンマを付けるなど、商習慣という一般的なルールが存在します。
ルールに従って正しく記載しましょう。
収入印紙
領収書の金額が5万円を超える場合に限り、収入印紙を貼り付けます。
収入印紙の貼り付けを忘れたり、消印を押し忘れたりしてしまうと、本来支払う税額よりも多く支払いをすることになる可能性があるため、注意しましょう。
個人事業主の領収書の保管方法
個人事業主が領収書を保管する場合、以下2点の注意が必要です。
月や項目ごとに保管する
過去の情報を知りたい時に効率よく調べられるように、月や項目ごとに保管しましょう。
また、1ヵ月でどの項目にどんな取引があったかも確認しやすくなります。
7年間保管する
基本的に個人事業主であれば、7年間領収書を保管しましょう。
白色申告の事業主であれば5年、青色申告の事業主であれば7年間の保管が義務付けられています。
個人事業主が角印・丸印以外に持っておくと便利な印鑑
個人事業主が持っておくと便利な印鑑は、以下の4種類です。
認印
認印とは、個人名が入っている印鑑で、役所での印鑑登録を行っていない印鑑を指します。
柔軟に使える印として、回覧板への押印や、会社であれば社内書類の確認などに利用されています。
実印
実印とは、上記で解説した「認印」とは異なり、役所で印鑑登録を行った印鑑を指します。
生命保険に加入する際や、住宅ローンの契約など、大切な押印に利用します。
銀行印
銀行印とは、銀行口座を開設する際に、銀行に登録を行った印鑑を指します。
会社では、実印と同じように丸印で、印鑑の内側に「銀行之印」、外側に会社名が入った印鑑を使うのが一般的です。
個人でも、実印と銀行印を分けておきたいような場合に、実印ではない印鑑を利用します。
住所印
住所印とは、屋号、住所、電話番号、ホームページなどの会社情報の印鑑です。
手書きの代わりに利用し、角印や丸印を重ねて押すこともあるため、黒色のインクを使います。
住所印を作成しておくと、封筒や書類に毎回同じことを記載する手間を省くことができます。
個人事業主が印鑑を使うケース
個人事業主が印鑑を利用するタイミングは、主に以下4つです。
契約書
契約書には、役所に登録している実印など、「丸印」を利用します。
実印を利用しなくても契約は成立しますが、取引先によっては、実印を求められることがあります。
見積書・請求書・領収書
見積書、請求書、そして領収書の発行者を示す印には、「角印」を利用するのが一般的です。
角印を利用しなくても、またそもそも押印をしなくても取引は成立しますが、偽造防止のため、そして何よりも取引先から信頼してもらうために押印をしましょう。
領収書に収入印紙を貼り付ける場合の消印には、シャチハタのネーム印、角印、丸印、どのような印鑑でも利用できます。
開業届・青色事業承認申請書
開業届および青色事業承認申請書には「認印」などを利用します。
役所に登録している実印を利用する必要はありません。
また、必ず印鑑が必要なわけではありません。
確定申告書類
確定申告書類でも「認印」などを利用します。
こちらも、役所に登録している実印を利用する必要はありません。
また、必ず印鑑が必要なわけではありません。
まとめ
領収書に印鑑を押すことで、領収書の偽造が防止できます。
偽造されてしまうとさまざまなトラブルに繋がってしまいます。正式な領収書であることを証明するためにも、印鑑が必要です。
領収書の金額が5万円以上の場合、収入印紙を貼る必要があります。
その収入印紙と台紙とを跨ぐように押される消印がないと、納税が認められません。
領収書の印鑑でシャチハタを利用することは可能です。
しかし、領収書に印鑑を押す目的は偽造防止であり、シャチハタでは偽造防止効果が期待できないため、避けるようにしましょう。
原則として領収書に押印の義務はないため、押し忘れても問題はありません。
しかし、取引先に押印を求められたり、求められなくても継続して取引している相手の信頼を損ないたくない場合もあります。
一度回収し、押印してから再提出するのも良いでしょう。
上記4種類の印鑑を用意しておくと、契約書などの印鑑が必須な書類だけでなく、さまざまな面で利用できるためおすすめです。