個人事業主は車を購入して節税しよう!経費で落とせる条件や計算方法

コラム

仕事で使用する車を購入したいけど、「車の購入代金は経費で落とせるの?」と疑問に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。

仕事で使用する場合は、車の購入費用や自動車税、ガソリン代など、車を維持していくためにかかる出費のほとんどを経費にできます。

しかし、車両代全額をそのまま経費として計上できなかったり、購入方法によって仕訳や勘定項目が変わったりするため注意が必要です。

この記事では、個人事業主が車の購入代金を経費で計上する方法や、経費にするときの注意点について解説します。

車の経費計上についてしっかり理解して節税対策をおこない、お得に車を利用しましょう。

個人事業主の車購入代金は経費にできる?

個人事業主の車の購入代金は経費として計上できますが、使用目的によっては経費にできないケースもあります。

まずは、「仕事のみで使用する場合」「プライベートのみで使用する場合」「仕事とプライベート兼用の場合」の3つのパターンで、車の購入費用が経費にできるかを確認してみましょう。

仕事のみで使用する場合

車を仕事だけで使用する場合は、問題なく車の購入費用を経費として計上できます。

例えば、取引先への訪問や配達など、業務目的で車を使用するのであれば経費扱いになります。

経費に計上する際は用途だけでなく、経費に計上するタイミングにも注目しましょう。

ポイントは3つあり、仕入れ先と契約済みであること、期末までに仕入れ物品の代金が確定していること、納品が完了していることが条件です。

この3つの条件がクリアできれば、経費として計上できます。

プライベートのみで使用する場合

個人事業主であってもコレクション目的や、プライベートでの移動手段として車を購入する場合は、経費にできません。

あくまでも経費は、「業務に関連する出費であることが条件」となるので注意してください。

仕事とプライベート兼用の場合

仕事とプライベート両方で使用する場合は、車の購入費用や保険料、ガソリン代などを経費として計上できます。

しかし、兼用の場合はプライベートと仕事で使用する区別が、あいまいになってしまいがちです。

そのため、「家事按分」といって、出費に対しての業務利用分をきちんと計上しなければなりません。

使用する割合によって家事按分の計算方法は異なります。

例えば、1ヵ月の走行距離が100キロメートルで、そのうちの約30キロメートルを使用した場合は、30%を経費として計上する方法があります。

家事按分の割合や計算方法については、きちんと根拠を説明できるようにしておきましょう。

個人事業主の車購入代金は減価償却する

自動車のように取得価格が高額な資産の場合は減価償却の対象となるため、購入した年に車の購入費用全額を経費として計上できません。

まずは、減価償却とはどのようなものなのかや、計算方法について詳しく解説していきます。

減価償却とは

文房具のような消耗品ではなく、購入から数年かけて使用するような資産を「固定資産」と呼びます。

固定資産は、以下の2つに分けられます。

●減価償却資産
所有年数が経過していくごとに価値が減少していく資産

●非償却資産
所有年数が経過しても価値が減少しない資産

自動車は数年または数十年にわたって使用し、年数が経過するにつれて劣化したり、性能が落ちたりして価値が減少していく資産なので「減価償却資産」に該当します。

そのため、経費として計上するときには、購入した年に車両代全額を経費にするのではなく、車の耐用年数に応じて資産の減価分を数年にわたって計上していきます。

このように数年かけて計上していく方法を「減価償却」といいます。

車の耐用年数

事業者ごとに耐用年数が異なると税計算が事業所ごとに変わってくるため、減価償却資産の耐用年数を法的に定めています。

自動車の種類やサイズ、使用用途によって耐用年数はそれぞれ異なります。

主な車の法定耐用年数は以下のとおりです。

構造・用途 耐用年数
小型車(総排気量0.66リットル以下) 4年
普通車 6年
貨物自動車(ダンプ式) 4年
貨物自動車(その他) 5年
報道通信用の自動車 5年

参照:国税庁 確定申告書作成コーナー

減価償却の計算方法

減価償却は主に、毎年一定額を減価償却する「定額法」と、末償却残高に償却率をかけて一定の割合ずつ減価償却していく「定率法」の2種類があり、計算方法がそれぞれ異なります。

定額法と定率法の計算式は以下のとおりです。

定額法の計算式 「取得価額 × 定額法の償却率 = 定額法の減価償却費」

定率法の計算式 「末償却残高 × 定率法の償却率 = 定率法の減価償却費」

定額法と定率法の主な違いは「1年間で減価償却する費用の大きさ」です。

定額法では、自動車の取得価額に見合った定額法の償却率をかけて計算するため、減価償却費は毎月一定です。

しかし、定率法の場合は、末償却残高に定率法の償却率をかけて計算するため、車を取得した初年度の減価償却費が大きくなり、年数が経つにつれて小さくなります。

個人事業主が車の購入費用を経費計上する場合は原則として「定額法」で計算しますが、定額法で減価償却する場合は、事前の届出が必要です。

確定申告の提出期限までに「所得税の減価償却資産の償却方法の届出書」を、税務署へ提出しておきましょう

個人事業主は車購入代金をいくらまで経費にできる?

個人事業主が車の購入代金を経費にするときにはまず、減価償却費を計算しなければなりません。

減価償却費用の計算方法である「定額法」と「定率法」について詳しく解説していきます。

定額法の場合

定額法で車の購入代金を経費計上する場合は、以下の計算式を用いて減価償却費を計算します。

 車の取得価額 × 定額法の償却率 = 減価償却費

このときの償却率は、購入した車の耐用年数で異なります。

耐用年数ごとの償却率は以下のとおりです。

耐用年数 償却率
2年 0.5
3年 0.334
4年 0.25
5年 0.2
6年 0.167

参考:国税庁 減価償却資産の償却率等表

例えば、購入した車が200万円の軽自動車(耐用年数4年)だった場合は、購入額の200万円に定額法償却率の0.25をかけると、1年あたりの減価償却費が計算できます。

定率法の場合

定率法で車を経費計上する場合は、以下の計算式を用いて減価償却費を計算します。

 末償却残高 (購入した年の場合は自動車取得価格)× 定率法の償却率 = 減価償却費

定率法の償却率も定額法と同じように耐用年数によって異なります。

耐用年数 償却率 改定償却率 保証率
2年 1.000
3年 0.667 1.000 0.11089
4年 0.500 1.000 0.12499
5年 0.400 0.500 0.10800
6年 0.333 0.334 0.09911

参考:国税庁 減価償却資産の償却率等表

定率法の計算は定額法よりも複雑です。

減価償却費用が償却保証額(車の購入金額×保証率)を下回ると、その年度から終了年まで改定償却率を用いて計算しなければなりません。

しかし、定率法では車を取得した初年度の減価償却費用が大きくなるため、購入した年にできるだけ多い金額を経費として計上したい場合に適しています。

例えば、仕事に使用する車を現金一括で購入するケースです。

一括で購入すると、購入した年は支払い負担が大きくなってしまうため、初年度の減価償却費用が大きくなる「定率法」を選択したほうが、節税効果が高くなります。

個人事業主はローン購入やリースでも経費にできる?

仕事で使用する車を購入する場合は、ローン購入やリース契約の場合でも経費にできます。

また、車両代の他にもガソリン代や駐車場代、保険料など、車の維持費に関わる費用も経費として計上可能です。

カーリースではリース会社と契約を結び、毎月リース料金を払って車を使用します。

現金やローンで車を購入した場合は会社の固定資産の扱いになりますが、リースの場合は所有者がリース会社になるため減価償却は不要です。

そのため、カーリースなら現金やローンで車を購入するよりも初期費用が安くなり、経費処理の手間も少なくなります。

個人事業主が車を購入した場合の仕訳・勘定科目

仕事で使用する車を購入したときの仕訳は、現金かローンのどちらの支払い方法を選択したかによって異なります。

また、長期間借りるリース契約のときにも仕訳の対象です。

車を「現金で購入した場合」と「ローンで購入した場合」「リース契約の場合」の3パターンの仕訳方法や勘定科目を見ていきましょう。

現金購入の場合

車の本体代とその他の費用の勘定項目は、大きく5つにわけられます。

  • 車両運搬具(納車費用含む)
  • 保険料
  • 支払手数料
  • 租税公課
  • 預け金、前渡金など

以下の取引内容をもとに、車を現金で購入した場合の仕訳は以下のとおりです。

■取引内容

車両価格 2,800,000円

納車費用 25,000円

自動車税 30,500円

自賠責保険料 27,180円

検査登録代行費用 25,000円

自動車重量税 0円(エコカー免税対象車)

借方 貸方
車両運搬具

(※納車費用含む)

2,825,000円 現金 2,907,680円
租税公課 30,500円
損害保険料 27,180円
支払手数料 25,000円

納車費用は自動車の購入のために必要な不随費用になるため、車両本体代と一緒に処理します。

自動車重量税は、自動車税の扱いと同じ「租税公課」の勘定項目になるので注意しておきましょう。

ローン購入の場合

以下の取引内容をもとに、車をローンで購入したときの仕訳は以下のとおりです。

■取引内容

車両価格 2,800,000円

ローン分割手数料 200,000円

納車費用 25,000円

自動車税 30,500円

自賠責保険料 27,180円

検査登録代行費用 25,000円

自動車重量税 0円(エコカー免税対象車)

 

借方 貸方
車両運搬具

(※納車費用含む)

2,825,000円 長期未払金 3,107,680円
租税公課 30,500円
損害保険料 27,180円
支払手数料 25,000円
長期前払費用 200,000円

カーローンで車を購入した場合でも、固定資産や各費用の計上方法は現金で購入した場合と同様です。

カーローンの分割手数料を支払う場合は、車両運搬具に含めず「長期前払費用」として計上します。

リース契約の場合

以下の取引内容をもとに、車のリース契約を結んだときの仕訳は以下のとおりです。

■取引内容
自動車5年のリース契約を結んだ(ファイナンス・リース取引に該当)
リース料総額の現在価値は300万円

借方 貸方
リース資産 3,000,000円 リース債務 3,000,000円

リース期間が終了したタイミングで所有権が移転する「ファイナンス・リース取引」に該当する場合、減価償却の対象になる資産となるため、リース資産とリース債務の処理が必要です。

自動車の耐用年数またはリース期間に応じて減価償却をおこないます。

個人事業主が車購入代金を経費にする場合のポイント

個人事業主が車の購入代金を経費にする際、場合によっては経費として認められなかったり、追加で税金を徴収されたりする可能性もあります。

個人事業主が車の購入代金を経費で計上するときの注意点について、詳しく解説します。

車の名義は本人または同一生計の人のみ

車の購入代金を経費にするときには、車の名義は本人名義が原則です。

車の名義が他人だった場合は認められませんが、同一生計にあたる家族や親族の場合は、経費として認められます。

ただし、同一生計でない親族の場合は、車の購入代金を経費として計上できないので注意してください。

30万円までは一括で計上できる

車のような高額な資産の場合は、基本的に減価償却の対象となりますが、車の購入代金が30万円までであれば一括で経費として計上できます。

30万円未満の車は例外として「少額減価償却資産の特例」が適用されるためです。

以下の条件を満たしていれば、特例の対象となります。

少額減価償却資産の特例の対象になる条件

  • 青色申告書を提出する人
  • 資本金または出資金の額が1億円以下
  • 常時使用する従業員数が500人以下
  • 連結法人ではない
  • 適用除外該当者に該当していない中小企業または農業協同組合など

上記の条件を満たしていても、以下の条件に該当する場合は対象外となるので注意してください。

  • 少額減価償却資産の特例の対象外
  • 大規模法人から2分の1以上の出資を受けている法人
  • 2カ所以上の大規模法人から3分の2以上の出資を受けている法人

参考:少額減価償却資産の特例

複数台の計上には注意する

仕事で使用する車の金額や車種の決まりは、税務上ありません。

「日々の業務で使用する車かどうか」が、経費として計上できるかのポイントになります。

そのため、営業車が高級車の場合や複数台所有した場合でも、事業用に使用しているのであれば経費として計上できます。

例えば、運搬業や営業用で使用する車など、使用目的がはっきりしていて業務上使用しなければならない車であれば問題ありません。

しかし、単に車が好きでコレクションを目的として購入していたり、業務上での使用目的を説明できなかったりすると、経費として認められない可能性はあります。

複数台の車を経費にするときには国税調査が入っても怪しまれないように、すべての車の使用目的や頻度を証明できるようにしておくことが大切です。

あらかじめ青色申告をしておく

車の購入費用を経費にするなら、青色申告をしておきましょう。

個人事業主の確定申告の方法は「青色申告」と「白色申告」の2種類ありますが、青色申告であれば、最大65万円の特別控除を受けられます。

白色申告の場合は青色申告よりも申告方法がシンプルではあるものの、特別控除は受けらず、48万円の基礎控除が適用されます。

また、30万円未満の車を購入したときに購入費用を一括経費計上するときの「少額減価償却資産の特例」は、青色申告のみ対象です。

車の購入費用を経費計上するなら、青色申告をしておくことで高い節税効果を得られます。

個人事業主が車関連で経費にできるもの

車の購入費用以外にも、車関連で経費にできるものはたくさんあります。

車の維持費として必要な費用は、ほとんどが経費にして問題ありません。

具体的には以下の費用があげられます。

  • 車両代
  • 自動車税、重量税
  • 消費税
  • 自賠責保険
  • 車検代
  • ガソリン代
  • 駐車場代

業務で車を使用するうえで必要な費用のほとんどが経費にできますが、リサイクル料については廃車にともなう費用になるため、車の購入時の経費にできません。

まとめ

  • 事業用で使用する車の購入費は経費にできる
  • 車は原則として減価償却の対象
  • ローン購入やリース契約の場合も経費として計上可能
  • 車の購入費用を経費にするときには、購入方法によって仕訳が異なる
  • 車の購入代金を経費にするなら青色申告のほうが節税効果が高い

個人事業主が業務上で使用する車であれば、車の購入費用だけでなく、ガソリン代や自動車税、車検代なども経費にできます。

車は耐用年数に応じて分割で計上していく「減価償却」の対象となるため、自分の車の耐用年数がどれくらいなのかを知っておかなければなりません。

プライベートと仕事の両方で使用する場合は、事業利用分をきちんと計算して、利用頻度や利用状況などを正確に証明できるようにしておきましょう。

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