「個人事業主も従業員を雇用できるってホント?」
「個人事業主が従業員を雇用するメリットは?」
「個人事業主が従業員を雇用するときに必要な手続きを知りたい」
個人事業主の方であれば、このような思いを持つ方は多いでしょう。
今回は、個人事業主が従業員を雇用するメリットや手続きについて解説します。
従業員を雇用して事業拡大をしたいと考えている個人事業主の方は、ぜひ参考にしてみてください。
個人事業主は従業員を雇用できる?
個人事業主も従業員を雇用できます。
法人でないと従業員を雇用できないと勘違いをしている方もいると思いますが、必要な手続きを踏めば、従業員の雇用が可能です。
個人事業主が従業員を雇うメリット
個人事業主が従業員を雇用するメリットは次の3つです。
順番に紹介していきます。
事業を拡大できる
従業員を雇えば、仕事量を増やし、事業を拡大することが可能になります。
例えば、店舗販売の事業なら、従業員を雇用することでオンライン販売をおこなったり、2店舗目、3店舗目と実店舗を増やしたり、といったことができるかもしれません。
自分一人では忙しくてなかなか手が回らないことがあっても、従業員がいれば仕事を振り分けることができます。
仕事量の増加や、新しい領域へのチャレンジが可能となるでしょう。
事務作業を任せられる
個人事業主として活動していると、事務作業の負担が多く、本業に集中できない場合があります。
通常の会社では経理、営業、人事、広報と担当がいますが、個人事業主は原則すべて一人でいろいろな部署の仕事をこなさなくてはいけません。
しかし、従業員がいれば事務作業を任せることができます。
経営者として、本来取り組みたい業務に時間を割くことができるでしょう。
事業専従者控除が活用できる
個人事業主は家族を従業員として雇うことで、事業専従者控除を活用できます。
事業専従者控除とは、事業に携わっている家族に払った給与を経費に入れることができる制度です。
例えば、個人事業主が妻を従業員として雇っている場合を考えてみましょう。
妻へ支払う給与を年間100万円とすると、その100万円を事業の経費として計上できれば、その分所得が抑えられ、所得税の節税になります。
参考:国税庁|タックスアンサー|No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除
個人事業主が従業員を雇うデメリット
従業員を雇うことには、メリットがある一方、次のようなデメリットもあります。
順番に紹介していきます。
必要な手続きが増える
個人事業主が従業員を雇うと、必要な手続きが増えます。
例えば、求人を出すために広告を掲載しなくてはいけません。
その後、一人ひとりの履歴書を確認して、面接を実施します。採用が決まったら仕事を教える必要があります。
その他にも、従業員を雇用をすると、給与の支払い、住民税の申告、各種保険の手続きも発生します。
1人で仕事をおこなっているときよりも、やるべきことが多くなってしまうことは間違いありません。
従業員に対しての責任が増える
個人事業主が従業員を雇うと、従業員に対してさまざまな責任を背負わなければなりません。
例えば、従業員を雇用する場合、従業員の生計を支える責任が伴います。
従業員が安心して生活できるように、事業主として安定した収益を確保し、十分な給料を支払う必要があります。
また、従業員が仕事で何らかのミスを起こしたら、雇用主である個人事業主が責任を負わなければなりません。
仕事に関すること以外にも、従業員が事故で他人に怪我を負わせることで、損害賠償を請求される可能性もあります。
従業員を雇うことで、責任とプレッシャーが増加し、かえって負担が増える場合もあるでしょう。
社会保険の加入義務が生じる
個人事業主が従業員を雇用すると社会保険の加入義務が生じ、保険料を負担しなくてはいけません。
加入しなければならない社会保険は、従業員の人数や労働条件によって異なります。
以下に詳しく解説します。
1人雇用すると労災保険と雇用保険に加入
従業員を1人でも雇用すると、個人事業主は労災保険と雇用保険に加入しなくてはいけません。
雇用保険は、従業員と個人事業主で負担しますが、労災保険は個人事業主の全額負担になります。
5人雇用すると健康保険・厚生年金保険に加入
従業員を5人以上雇用すると、事業所として健康保険と厚生年金保険に加入しなくてはいけません。
健康保険と厚生年金保険の保険料は従業員と個人事業主で半分ずつ負担します。
個人事業主が従業員を雇う際に必要な手続き
個人事業主が従業員を雇う際に必要な手続きを紹介します。
労働条件の通知
個人事業主が従業員を雇う場合は、従業員へ労働条件の事前通知が必要です。
労働条件通知書に必要情報を記入したうえで、従業員へ通知しましょう。
労働条件通知書の記入事項は以下のとおりです。
- 労働の契約期間
- 契約更新する場合の判断基準
- 就業の場所
- 従事すべき業務の内容
- 始業と終業の時刻、休憩時間、就業時転換、所要時間外労働の有無に関する事項
- 休日と休暇に関する事項
- 賃金に関する事項
- 退職に関する事項
給与支払事務所の手続き
給与支払事務所の手続きとして、雇用開始から1ヵ月以内に「給与支払事務所等の開設届出書」を所轄の税務署へ提出する必要があります。
従業員に給与を支払う個人事業主には、従業員が負担する税金を給与から差し引いて納税する源泉徴収の義務が生じます。
給与支払事務所等の解説届出書は、源泉徴収に必要な書類の入手にも繋がる、大切な手続きです。
ルールを守らずに雇用を開始してしまい、税務署の調査が入ったときに困るということがないよう、忘れずに届出をおこないましょう。
労災保険の手続き
1人でも従業員を雇う場合は、必ず労災保険に加入しなくてはいけません。
労災保険の手続きのために、以下2点の提出が必要です。
提出物 | 提出期限 | 提出場所 |
---|---|---|
保険関係成立届 | 雇用した日から10日以内 | 所轄の労働基準監督署 |
概算保険料申告書 | 雇用した翌日から50日以内 |
|
雇用保険の手続き
雇用する従業員が以下の条件に当てはまる場合は、雇用保険への加入が必要です。
- 雇用期間が1ヵ月以上
- 労働時間が1週間のうち20時間以上
加入手続きは、ハローワークでおこなえます。
健康保険・厚生年金保険の手続き
従業員が常時5人以上になった場合には、健康保険・厚生年金保険の加入手続きが必要です。
健康保険・厚生年金保険については、従業員が4人以下の場合も、従業員の半数以上の合意があれば任意で加入できます。
必要書類は以下の3点です。
- 健康保険・厚生年金保険 被保険者新規適用届
- 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届
- 健康保険被扶養者(異動)届 ※従業員に扶養家族がいる場合のみ
提出場所は、所轄の年金事務所です。
源泉徴収の準備
源泉徴収の準備として、従業員に「給与所得者の扶養控除申告書」を提出してもらう必要があります。
この書類から扶養家族の情報を得ることで、源泉徴収税額の計算が可能です。
扶養控除申告書は1年に1回提出してもらいます。
税務署より提出を求められる場合もあるので、毎年しっかり回収して保管しましょう。
個人事業主が従業員を募集する方法
個人事業主が従業員を募集する方法には、以下のようなものがあります。
求人サイト
Web上の求人サイトで従業員を募集する方法です。
求人情報を掲載するWeb上のサービスには、仕事を探す人が有料で利用できるものと無料で利用できるものがあります。
有料の求人サイトではマイナビやビズリーチ、無料求人サイトではIndeedやジモティーが有名です。
ハローワーク
ハローワークは、無料で利用できる行政サービスです。
求人サイトと比べると事業所のある地域もしくは近隣地域に住んでいる人からの応募が多い点が特徴です。
ハローワークに行って求人票を書き、興味を持ってもらいやすい求人の出し方などを相談してみるとよいでしょう。
採用サイト作成ツール
採用サイト作成ツールとは、採用サイトの作成に特化したツールです。
自社Webサイトを作成するように、採用に特化したページをWeb上に公開することができます。
求人サイトを利用するためには、利用料を支払い、外部サイトを経由して応募者とやりとりをしなくてはいけません。
しかし、採用サイト作成ツールを使って自社の採用サイトを作成すれば、個人事業主は運用コストを抑えつつ、応募者と直接やりとりをすることができます。
まとめ
- 個人事業主でも従業員を雇うことができる
- 従業員を雇うメリットは、事業拡大と事務作業の削減と事業専従者控除が使えること
- 従業員を雇うデメリットは、手続きの手間や責任が増えることと社会保険に加入する義務が生じること
- 従業員を雇用する際は、労働条件の通知や官公庁等への届出などの手続きがある
- 従業員を募集する方法は、求人サイトやハローワーク、採用サイト作成ツールなどがある
今回は、個人事業主が従業員を雇用するメリットや手続きについて解説しました。
従業員の雇用にはデメリットもありますが、事業拡大を目指すのであれば、人を雇うことも検討してみてはいかがでしょうか。