個人事業主はふるさと納税をすべき?メリットや手順を解説

コラム

「個人事業主がふるさと納税するメリットやデメリットを知りたい」

「個人事業主の場合、ふるさと納税の控除限度額はいくらか知りたい」

「個人事業主がふるさと納税した場合、確定申告の記入方法を知りたい」

このような疑問を持つ個人事業主の方は多いのではないでしょうか。

今回は、個人事業主がふるさと納税をするメリットや手順について詳しく解説していきます。

個人事業主の方で、ふるさと納税についての理解があやふやな方は、ぜひこの機会に知識を深めてくださいね。

個人事業主のふるさと納税について


ふるさと納税とは、地方自治体への寄付を通じて、その地域の発展に貢献できる特別な制度です。

ふるさと納税制度では、寄付をおこなう自治体を自由に選択することができます。

自分が生まれ育った故郷に限らず、住んでいない場所でも、あなたが支援したい地方自治体を選べるのが特徴です。

寄付先の自治体によっては、その地域特有の商品や名産品をお礼として送ってくれたり、地域で使える観光クーポンなどを提供してくれることがあります。

また、サラリーマンだけでなく個人事業主にとっても、納税上の利点がいくつもある制度です。

個人事業主がふるさと納税をおこなうことで、どのようなメリットがあるのか、控除上限額や控除される税金について詳しくみていきましょう。

ふるさと納税とは

ふるさと納税とは、進学や就職のために故郷を離れた方でも、自分の育った故郷の自治体へ納税できる機会をもたらすために、2008年から始まった制度です。

「納税」という言葉が使われていますが、実際には税金を納めるのではなく、都道府県や市区町村への寄付として扱われます。

利用者はその後、所得税や自分の住む自治体に納める住民税から、寄付した金額を差し引く「税額控除」を利用できます。

この仕組みによって、利用者は納税額を抑えることができるのです。

また、寄付先の自治体から、食品から嗜好品、食器、観光クーポンなど、幅広い返礼品を受け取れるのも、ふるさと納税の魅力の一つです。

寄付を行う際には一度お金を支払う必要がありますが、上限に達するまで2,000円を除く全額が節税額になり、さらに返礼品があるという、利用したくなる工夫が凝らされた制度です。

参考:総務省|よくわかる!ふるさと納税

ふるさと納税の控除上限額

ふるさと納税では、寄付した金額がいくらでも全額控除されるわけではありません。

人によって、控除される金額には上限があります。

ふるさと納税の控除上限額の決まり方

ふるさと納税の控除上限額は、総所得金額や家族構成、扶養有無、住んでいる地域などによって異なります。

控除の上限金額を超えて寄付することもできますが、超過分は控除の対象になりません

ふるさと納税の節税効果をより活用するには、自分が控除を受けられる金額の上限を把握したうえで、その金額の範囲内でふるさと納税をおこなうことが重要です。

ふるさと納税のサイトにある、自分の控除上限額をシュミレーションできるツールを利用してみるのもおすすめです。

参考:ふるさとチョイス|控除上限額シュミレーション

ふるさと納税の控除上限額の目安

個人事業主の場合、売上と所得には大きな差が出ることが少なくありません。

これは、経費の引き当てなどによって所得が減少することがあるからです。

そのため、個人事業主がふるさと納税の控除上限額を売上だけで計算してしまうと、実際の上限額とは異なる値が出てしまう可能性があります。

前年度の所得を参考にふるさと納税の控除上限額を計算する場合は、基準として「前年度の住民税の所得割額」を利用しましょう。

所得割額とは、住民税のうち所得に応じて決まる部分のことを指します。

この所得割額の20%程度をふるさと納税の上限額として考えると、控除上限を超えるリスクを減らすことができます。

ただし、この計算方法は前年度の所得を基準にしています。

今年の売上が前年と大きく異なる場合には、注意が必要です。

特に、今年の売上が前年を大幅に下回っている場合は、前年の所得を参考に計算をした上限額よりも、今年の実際の上限額が低くなる可能性が高くなります。

そのため、個人事業主がふるさと納税の控除上限額を計算する際は、最近の所得状況を考慮に入れることが重要です。

参考:総務省|ふるさと納税のしくみ

ふるさと納税で控除される税金

ふるさと納税で控除される税金は、所得税と住民税です。

ふるさと納税すると、寄付金額から2,000円を除いた金額が、その年の所得税や、翌年の住民税から控除されます。

所得税

所得税の控除額は、以下の式で計算されます。

所得税の控除額=(ふるさと納税額−2,000円)× 所得税率

例えば、課税所得金額が300万円の個人事業主の場合、所得税率は10%になります。

3万円のふるさと納税をした場合の所得税の控除額は、次のとおりです。

所得税の控除額=(30,000円−2,000円)×10%=2,800円

ただし、寄附金控除の対象となるふるさと納税額は、所得税の場合、総所得金額の40%が上限です。

住民税

住民税の控除額は、「基本控除額+特例控除額」で計算され、ふるさと納税をおこなった翌年分の住民税から控除されます。

基本控除額は、以下の式で計算されます。

住民税の基本控除額=(ふるさと納税額−2,000円)×10%

ただし、控除の対象となるふるさと納税額は、住民税の場合、総所得金額の30%が上限です。

住民税の特例控除額は、以下の式で計算されます。

住民税の特例控除額=(ふるさと納税額−2,000円)×(90%−所得税率)

ただし、住民税からの特例控除額が住民税所得割額の20%を超える場合は、「住民税の特例控除額=住民税所得割額×20%」で計算します。

例えば、課税所得金額が300万円の個人事業主の場合、所得税率は10%になります。

3万円のふるさと納税をした場合の住民税の控除額は次のとおりです。

住民税の基本控除額=(30,000円−2,000円)×10%=2,800円
住民税の特例控除額=(30,000円−2,000円)×(90%−10%)=22,400円

よって、翌年の住民税からは、2,800円+22,400円=25,200円が差し引かれます。

個人事業主がふるさと納税をするメリット


個人事業主がふるさと納税をすることで、いくつかのメリットがあります。

順番に見ていきましょう。

返礼品がもらえる

ふるさと納税では、各地域の特産品や独自の特典を得られる点が、魅力の一つです。

寄付金に応じて、地元自治体から、その地域ならではのお米、肉、魚、野菜などのおいしい食品や、地元産の日本酒やワインなどの飲料、または工芸品や服など、さまざまなカテゴリから選んで返礼を受け取ることができます。

控除を受けられる

ふるさと納税で各自治体に寄付をすると、寄付金額から自己負担額2,000円を引いた金額が、確定申告を通じて所得税や住民税から控除されます。

ただし、控除額には、収入や家族構成などに応じて上限があります。

自分の上限を把握して、その範囲内で制度を利用すれば、節税メリットを最大化することができます。

寄附金の使い道を選べる

通常、所得税や住民税は、納税者が税金の具体的な用途を決めることはできません。

しかし、ふるさと納税では、自分の寄付金の使い道を選択することができます。

例えば、地域の子どもや高齢者向けの施設の運営費や地元産業の復興など、あなたが支援したいと思う項目へ、寄付した資金の割り当て先を指定できます。

ポイントが貯まる

ふるさと納税は、貯めているポイントを増やすことができます。

多くのふるさと納税サイトは、オンラインショッピングと同じように、返礼品を選んで購入するかたちになっています。

この際、決済にクレジットカードを利用することで、支払い金額に応じた利用ポイントを増やすことができます。

また、ポイントが貯められるショッピングサイトを利用してポイントを増やすこともできます。

ポイントを貯められる代表的なふるさと納税サイトは、以下のとおりです。

ふるさと納税サイト 貯まるポイント
楽天ふるさと納税 楽天ポイント
au PAYふるさと納税 Pontaポイント
ANAのふるさと納税 ANAマイル・Tポイント

通常通りの確定申告手順で利用できる

個人事業主が寄附金控除を受けるために必要な手続きは、確定申告書にある寄附金控除欄に控除額を追記することだけです。

普段から行っている通常の確定申告時に、ふるさと納税の詳細を追記するだけで、手間をかけずに手続きが終わります。

ただし、確定申告の際には寄付金受領証明書が必要です。

寄付金受領証明書は寄付する度に送付されるので、確定申告までなくさないよう、まとめて保管しておくことが重要です。

個人事業主がふるさと納税をするデメリット


個人事業主がふるさと納税をすると、デメリットもあります。

注意すべき点を5つ紹介します。

上限を把握しづらい

個人事業主の収入は一定ではなく、変動が大きい場合があるので、ふるさと納税で控除可能な上限額を正確に把握するのが難しいというデメリットがあります。

そのため年初よりも、その年の所得が予測できる年末に、ふるさと納税をおこなうことがおすすめです。

ワンストップ特例制度が利用できない

個人事業主のふるさと納税は、ワンストップ特例制度が利用できません。

ワンストップ特例制度とは、寄付先が5ヶ所以内の場合、所得税の確定申告をおこなわなくても、自動的にふるさと納税の控除が受けられる制度です。

しかし、この制度を利用できるのは所得税の確定申告をしない人だけです。

個人事業主は確定申告をおこなう必要があるため、ワンストップ特例制度の対象外となります。

赤字申告の場合は控除を受けられない

赤字申告をおこなう個人事業主の場合、所得がないため、ふるさと納税による控除を受けることができません。

控除はあくまで所得税と住民税からおこなわれるため、所得がなければ控除の対象となる税金もありません。

控除分は翌年扱いになる

ふるさと納税で控除される所得税や住民税は、寄付した翌年に適用されます。

寄付した年の税金を控除できるわけではないので、計画的に制度を利用することが重要です。

一時的に出費が増える

ふるさと納税をおこなうと、その分一時的な出費が増加します。

手元のお金に余裕がない場合、お得だからといって無理に寄付をすると、金銭的な負担につながる可能性があります。

個人事業主がふるさと納税をする手順


個人事業主がふるさと納税をおこなう際のステップは、次の5つです。

初めてふるさと納税をする際は、確認しながらおこないましょう。

控除限度額を調べる

まずは、自分の収入から控除可能な上限額を確認します。

控除上限額をこえるふるさと納税は控除対象外となるので注意しましょう。

ふるさと納税のサイトにある、自分の控除上限額をシュミレーションできるツールを利用すると、簡単に控除限度額を把握できます。

参考:ふるさとチョイス|控除上限額シュミレーション

ふるさと納税サイトを決める

次に、返礼品の品揃えや、サイトの使いやすさなどから、利用したいふるさと納税サイトを選びます。

利用者の評価や口コミを参考にするとよいでしょう。

ポイントを貯めたい場合は、欲しいポイントが貯まるサイトを検討しましょう。

自治体・返礼品を選ぶ

寄付したい自治体と、返礼品を選択します。

寄付する自治体の決め方にルールはありません。

自分の嗜好に合わせて返礼品を選ぶのがおすすめです。

申し込みをする

選んだサイト上で、必要な情報を入力して申し込みをおこないます。

申込方法は自治体ごとに異なりますが、多くの自治体では、ふるさと納税サイトや特設Webサイトから申し込みを受け付けています。

支払方法は、ほとんどのサイトでクレジットカードによるオンライン決済が利用可能です。

返礼品・受領証明書を受け取る

申し込みが完了すると、返礼品と寄付金受領証明書が送付されます。

証明書は控除を受けるために必要なので、大切に保管しましょう。

参考:総務省|ふるさと納税の流れ

個人事業主がふるさと納税をした際の確定申告の記入方法


ふるさと納税の控除額は、確定申告書第一表の「所得から差し引かれる金額」欄の「寄附金控除」の部分に記載します。

寄附金控除額は、次の2つのなかで、少ないほうの金額を記入します。

  • 所得金額の合計×40%
  • 寄付金合計−2,000円

例えば、所得金額合計が8,000,000円、寄付金合計が250,000円の場合、それぞれの金額は以下のとおりです。

所得金額の合計8,000,000円×40%=3,200,000円
寄付金合計250,000円−2,000円=248,000円

この場合、寄附金控除欄には、少ないほうを選んで248,000円と記入します。

ふるさと納税以外の寄付があった場合は、第一表の寄附金控除の金額には合計額を記入しましょう。

まとめ

  • ふるさと納税の控除上限額は、総所得金額や家族構成、扶養有無、住んでいる地域などによって異なる
  • 自分の控除上限額を把握したい場合は、ふるさと納税のサイトにあるシュミレーションツールを利用するのがおすすめ
  • 個人事業主がふるさと納税をするメリットは、ポイントが貯まるという点などがある
  • 個人事業主は、ワンストップ特例制度を利用できない
  • 個人事業主は、5つのステップを踏めばふるさと納税ができる

今回は、個人事業主がふるさと納税をするメリットや手順について解説しました。

税金に関する心配を減らすために、そして節税のメリットを最大化するために、個人事業主の方はふるさと納税のルールをしっかり把握しておきましょう。

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