「個人事業主の共同経営は、問題なくできるのだろうか?」
個人事業主で事業を共同経営しようと検討しているなら、このような疑問を持っている人も多いのではないでしょうか。
この記事では個人事業主が問題を抱えることなくスムーズな共同経営ができるよう、共同経営の方法や注意点について解説します。
個人事業主で共同経営に不安を抱えている人はぜひ参考にしてみてください。
個人事業主は共同経営が可能
個人事業主での共同経営は、一般的には難しいと言われています。
しかし、お互いを信頼し、事業を経営していくことができるなら、共同経営は可能です。
しかし、万が一経営が思うように行かなかった場合は、トラブルに発展してしまう可能性も考えられます。
出資額や売上・経費の配分などについて、共同経営を行う前に細かくルールを決めておくようにしましょう。
個人事業主が共同経営する4つの方法
共同経営と聞くと、単純に売上や経費を折半して事業を行うイメージを持たれる方も多いかと思いますが、実はさまざまな共同経営の方法が存在します。
以下に個人事業主が共同経営する方法について詳しく紹介します。
全員が個人事業主になる
1つ目は、共同経営する全員が個人事業主になる方法です。
全員が個人事業主になれば、お互いに上下関係ができないため、平等な立場で経営することができます。
しかし、全員が個人事業主になると、上下関係がない分、売上や経費の配分が難しくなってしまうという問題があります。
誰か一人が高額な経費を使っていたり、売上が圧倒的に多かったりした場合には、立場は平等であっても実績が平等ではありません。
不公平感が生じ、トラブルに発展してしまう可能性も高くなります。
そのような事態にならないためにも、全員で売上・経費を公平に分け合い、仕事量も偏りなく振り分けるなど、トラブルを避けるためのルール作りを意識しましょう。
個人事業主が一部の事業を共同で行う
2つ目は、個人事業主が一部の事業を共同で行う方法です。
この場合は、代表者をたてるのか、各自独立して契約を結ぶのかで方法が変わってきます。
具体的には、以下2つの形態があります。
代表者をたてる
個人事業主の一人が代表者として仕事を受注し、代表者以外は代表者から「外注」される形で業務を請け負うシステムです。
各自独立して契約を結ぶ
数人の個人事業主がグループとして仕事を受注し、各個人が仕事の依頼者とそれぞれ個別で契約を結び、個別に支払いを受けるシステムです。
また、企画やデザイン、コンサルタント業務など、受注した業務内容に合わせてその都度、必要なメンバーを収集して仕事を請け負うケースや、同じシェアオフィスのメンバーなどで継続的に長期の仕事を請け負うというケースもあります。
ここでポイントになるのが、依頼を受けた業務に対して、各個人事業主が取り組む仕事の配分や担当分けが明確にできているかどうかです。
担当範囲を明確にしておけば、売上と費用の按分割合も決定しやすくなります。
不公平感によるトラブルを未然に防ぐことにも繋がります。
この方法では、短期間のプロジェクトを実行するために集まり、終了後は解散することになります。
依頼を受ける業務内容にもよりますが、効率的に業務が進められる方法です。
法人格を持つ会社を設立する
3つ目は、法人格を持つ会社を設立する方法です。
法人格とは、法が権利義務の主体となり得ることを認めた人格のことを指し、簡単に言うと株式会社や合同会社、一般社団法人などを設立することです。
法人格を持つ会社を設立することで、社会的な信用を得やすく、取引先との契約もスムーズになる可能性があります。
ただし、法人を立ち上げる場合、必ず代表を決める必要があり、会社設立のための定款作成や登記などの費用や手間が発生します。
こうした手続きは面倒だと思うかもしれませんが、大きな利益が出そうなビジネスなら、法人化することで節税対策などのメリットを最大化することが可能です。
また、事業が失敗してしまった場合に、個人事業主は無限責任となり、負債などのすべてを個人として負う必要がありますが、法人は基本的に有限責任です。
有限責任事業組合を設立する
4つ目の方法は、有限責任事業組合を設立することです。
有限責任事業組合とは、LLPとも呼ばれる、個人や法人が共同して事業を営むことを目的とした組織です。
「有限責任事業組合契約に関する法律」に基づいた、組合契約によって設立された共同事業体を指します。
この方法は、全員が対等な関係で共同経営をしていきたい場合におすすめです。
有限責任事業組合は、株式会社などと比べると、設立費用が安かったり、設立までに要する時間が短かったりといったメリットがあります。
また、有限責任事業組合の組合員は、出資金額までしか責任を負う必要がありません。
個人事業主でありながら有限責任で仕事ができる点が、大きな特徴です。
参考個人事業主が複数人で共同経営する方法については、こちらで詳しく解説しています。
個人事業主が共同経営するメリット
慎重に進めなければトラブルになるかもしれない個人事業主の共同経営ですが、メリットもあります。
資金が多く準備できる
1つ目のメリットは、一人で経営するよりも資金が多く準備できることです。
共同経営では、複数人が協力し事業を経営するため、個人で事業を経営するよりも多くの資金を準備することができます。
事業経営においては、もちろん継続的にその事業によって利益を出すことが求められますが、資金が多ければ多いほど資金繰りに余裕が生まれます。
設備投資の判断をするなど、機動的に経営することが可能です。
お互いの強みが活かせる
2つ目のメリットは、お互いの強みが活かせることです。
一人で事業を経営する場合、得意分野だけでなく、不得意な分野も自分一人で行わなければなりません。
優秀な従業員を採用したり、コンサルタントを依頼したりするのにも、その分資金が必要になってしまいます。
しかし、共同経営であれば、営業が得意な人、経営管理が得意な人、技術分野に長けている人など、それぞれの得意分野を活かすことが可能です。
別々に活動するよりも、効率的に利益を上げて分配することが期待できます。
個人事業主が共同経営するデメリット
メリットがある一方で、個人事業主が共同経営するにはデメリットもあります。
人間関係や資金面のトラブルで解消につながりやすい
1つ目のデメリットは、人間関係や資金面でのトラブルによって共同経営の解消へつながりやすいことです。
共同経営では、事業への貢献度により報酬金額を設定するのが一般的です。
しかし、始める時にはお互いが納得していても、共同経営をしていくうちに資金面で揉めてしまうことも少なくありません。
実際に経営していく中で、相手の仕事ぶりに不満を持つこともあります。
事業の収益が大きくなるに連れて、もっと大きな利益を受け取りたいと思うこともあります。
お金のトラブルで人間関係が悪化し、場合によっては廃業まで繋がってしまうケースもあります。
共同経営においては、常にお金や人間関係のトラブルが起こり得ると考えて、注意しながら運営を進めましょう。
仕事量で偏りが生じやすい
2つ目のデメリットは、仕事量で偏りが生じやすいことです。
個人の営業成果や仕事量に偏りがある場合、その不公平感が原因でトラブルに発展してしまうケースも少なくありません。
あくまで共同経営の目的は、自分の得意分野を活かしつつ効率的に事業を経営することです。
そのため、お互いが得意な分野を活かしつつ、苦手分野を補い合えるように、不公平感が生じない配分で仕事を分担する必要があります。
尊重し合える人間関係の構築を心掛けましょう。
個人事業主が共同経営する際の注意点と解消回避策
最後に、個人事業主が共同経営する際の注意点について解説します。
共同経営契約書を作成しておく
共同経営契約書とは、事業の目的や内容、お互いの役割分担や利益配分、経営に関する基本的なルールについて記載した契約書で、経営者になる人同士がこの内容に合意して契約します。
この共同経営契約書があることで、資金や仕事量の不公平で起こりうるトラブルを回避することができます。
万が一トラブルが発生した場合にも、契約書の内容を確認しながら話し合いを進めることができるため、共同経営を開始する前に、必ず共同経営契約書を作成するようにしましょう。
夫婦や親子関係であっても責任範囲を明確にする
共同経営においては、業務の役割や範囲とともに、責任範囲も明確にしておきましょう。
何かトラブルが生じた際に、責任範囲があらかじめ明確になっていないと、原因や責任を押し付け合うなどの問題に発展しかねないためです。
そのような事態を起こさないようにするためにも、それぞれの責任範囲を明確にし、書面に残しておくといいでしょう。
まとめ
- 個人事業主の共同経営は可能だが、信頼し尊重し合える人と行うのがポイント
- 共同経営を行う方法には、「全員が個人事業主になる方法」や「法人格を持つ会社を設立する方法」などがある
- 個人事業主は、共同経営にすることで、多くの資金を準備できる
- 共同経営では、資金面や仕事量の不公平感によって、トラブルが発生しやすい
- 共同経営を開始する前に、必ず共同経営契約書で役割や業務範囲を明確にしておく
個人事業主が共同経営をすることは可能ですが、報酬や仕事量に不公平を感じトラブルに発展してしまうケースが多く存在します。
最悪の場合、事業廃業となってしまう可能性もあります。
そのような事態を防ぐためにも、共同経営を開始する前には、共同経営契約書の作成をおすすめします。
あらかじめ起こりうるトラブルを想定し、前もって話し合いをしたり契約書を交わしておくことで、メリットを活かした円滑な共同経営を目指しましょう。