個人事業主は自宅とは別に事務所が必要?借りるメリットや手順を解説

コラム

個人事業主として独立する際に、

「事務所は必要なの?」

「個人事業主はどうやって事務所を借りる?」

「事務所の家賃は経費にできるの?」

このような疑問や悩みをお持ちではないでしょうか。

この記事では、個人事業主として事業を始める上で、事務所は必要なのか、事務所の家賃は経費にできるのか、などについて詳しく解説していきます。

個人事業主は自宅とは別に事務所が必要?


個人事業主が事業を始める際、必ずしも自宅とは別に事務所が必要とは限りません。

事業の種類や環境をしっかりと把握した上で、自宅を事務所にするのか、自宅とは別に事務所を構えるのか、判断をする必要があります。

自宅を事務所にする際に気をつけること

自宅が賃貸である場合、その自宅を事務所として使用する際には、賃貸契約書を確認する必要があります。

一般的に、居住を目的として借りている住居は、「不特定多数の人が出入りする事務所」としての使用ができません。

自分以外の人が出入りをする予定がなくても、ポストや玄関の表札に屋号を表示したい場合もあるでしょう。

許可を得ずに事務所としてしまうと、後にトラブルに発展してしまう恐れがあります。

自宅を事務所にする際は、まず賃貸契約書を確認し、一度オーナーや仲介会社にどのような事務所にしたいのかを伝えて、問題がないかことを事前に確認することが大切です。

自宅を事務所にするメリット

個人事業主が自宅を事務所にするメリットには、以下のようなものが挙げられます。

コストが削減できる

自宅を事務所にすることにより、事務所を別に用意する場合に比べて、賃料や光熱費などを節約することができます。

また、自宅の賃料や光熱費の一部を「家事按分」で事業経費に計上することができます。

自宅で仕事をしている場合は、賃料や光熱費も事業に必要なものとして経費にすることが認められています。

以下、家事按分による経費計上の具体例です。

賃料に関しては、事務所として利用している部分に相当する割合を経費に計上できます。

賃料を床面積で家事按分する例
  • 家賃が月10万円、広さ30㎡の部屋
  • そのうち、15㎡を事務所として使用した場合
  • 15㎡ ÷ 30㎡ = 事業で利用した割合 0.5
  • 家賃100,000円 × 0.5 = 50,000円

このような計算で、50,000円を経費として計上できることになります。

事務所として利用している部分を床面積で計算することが難しい場合や、光熱費のように面積で計算をすることが適していない費用の場合には、事業に使用した時間や日数を元に計算します。

光熱費を時間で家事按分する例
  • 自宅兼事務所の使用時間:720時間(24時間 × 30日間)
  • そのうち事務所として使用した時間が180時間
  • 180時間使用した際の光熱費が8000円だった場合
  • 180時間 ÷ 720時間 = 事業で利用した割合 0.25
  • 光熱費8,000円 × 0.25 = 2,000円

このような計算で、2,000円を経費として計上できます。

時間を有効活用できる

自宅を事務所にすることにより、通勤時間がなくなります。

事務所を別に用意する場合に比べて、より多くの時間を確保することができ、自分のペースで効率的に業務を行えます。

子育てや介護がしやすくなる

自宅を事務所にすることにより、時間や場所に縛られることが少なくなるので、仕事と子育て・介護の両立が容易になります。

自宅を事務所にするデメリット

個人事業主が自宅を事務所にするデメリットには、以下のようなものが挙げられます。

集中力が欠如してしまう

自宅を事務所にしていると、家族やペットなどが気になったり、リラックスしすぎてしまったりして、集中力を欠きやすいことがデメリットのひとつに挙げられます。

仕事とプライベートの境界線がなくなる

自宅を事務所にしていると、仕事とプライベートの境界線が曖昧になります。

プライベートと混同することで仕事の時間が長引いてしまったり、休日にも仕事を行ってしまったり、疲れやストレスを溜めやすくなってしまうこともあります。

信用性の問題が起こる

上記の他に、事業の信用性が低くなる可能性もあります。

自宅を事務所にしていると、副業や規模の小さいビジネスに見えてしまいます。

「本気でビジネスを行っていないのでは?」と疑念を抱かれ、事業の信用を得られないおそれがあるのです。

ビジネスでは、資金調達や新規取引の際に信用が大切です。

自宅とは別に事務所を構えていると、より信用を高めることができるでしょう。

個人事業主が自宅とは別に事務所を借りるメリット


自宅とは別に事務所を借りる主なメリットとしては、集中力が高まる、接客しやすくなる、社会的な信用が上がるといったことがあります。

以下、詳しく解説していきます。

集中力が高まる

自宅と事務所を分けることで、集中力が高まります。

家族やペット、家事などの影響を受けることが少なく、生産性の向上が期待できるのです。

また、自宅と事務所を分けることで、仕事とプライベートのメリハリをつけることができます。

自宅で仕事をするとプライベートの境界線が曖昧になりがちですが、事務所を借りると区別が明確になります。

今は仕事の時間だとしっかりと認識できるので、より集中して仕事に取り組めるでしょう。

接客しやすくなる

自宅と事務所を分けることで、接客がしやすくなります。

事務所には、クライアントや顧客を受け入れるための応接スペースを設けることができます。

立地や建物も自分のビジネスに適したところを選ぶことができます。

そのため、自宅でクライアントや顧客を受け入れるよりも、接客に適した環境を作りやすいと言えるでしょう。

社会的な信用が上がる

自宅とは別に事務所を構えることで、社会的な信用を高めることができます。

専用の事務所を持っていることで、ビジネスへの真剣さをアピールできます。

また、ビジネスに関する様々な活動にも積極的になれるでしょう。

新規顧客の獲得やビジネスの拡大につながれば、より社会的な信用度は高くなります。

個人事業主が自宅とは別に事務所を借りるデメリット


では次に、個人事業主が自宅とは別に事務所を借りたときのデメリットについて見ていきましょう。

主なデメリットとしては、家賃や光熱費がかかることや通勤が必要になることなど、必要な費用や時間の増加が挙げられます。

以下、詳しく解説していきます。

家賃や光熱費がかかる

自宅とは別に事務所を借りるデメリットとして、一番に挙げられるのが、コストがかかってしまうということでしょう。

自宅を事務所としている場合、事務所のための余分なコストは発生しません。

しかし、自宅とは別に事務所を借りた場合、事務所の賃料はもちろん、光熱費や新たな備品の購入など、追加のコストが発生します。

その他、敷金や礼金、さらに場合によっては引っ越し費用などもかかるので、事務所を構える際はしっかりと支出を予測しておくことが大切になります。

通勤が必要になる

自宅と別に事務所を借りると、通勤が必要になるということもデメリットです。

通勤が必要になるということは、当然、通勤時間が増え、仕事に充てる時間が少なくなるということです。

また、通勤にかかる費用もデメリットの1つです。

交通機関を利用すれば当然、毎回その運賃がかかります。

自家用車を使用する場合には、駐車場代やガソリンなどの燃料代が、自転車を使用する場合は駐輪場代がかかります。

さらに、通勤によって体力や精神面に負担をかけてしまう可能性があります。

特に、自動車での移動は交通事故に遭うリスクが高くなるため、安全運転に気をつかわなければなりません。

移動時間が長い場合には、事故に遭うリスクが高まるのはもちろん、疲れやストレスもたまりやすく、健康にも悪影響を与える可能性があるでしょう。

個人事業主が事務所を借りるための手順


ここでは、個人事業主が事務所を借りる手順について解説していきます。

手続きの内容は、プライベートで部屋を借りる場合とさほど変わりありません。

ただし、個人事業主が事務所を借りる場合、審査に関しては、少々ハードルが高くなる可能性があります。

詳しく解説していきます。

物件を探す

事務所を借りるにあたって最初に行うのが、物件を探すということです。

自身のビジネスを行うのに適した場所なのか、地域性、自宅や駅からの距離、駐車場の有無など、周辺の環境を調査しながら探す必要があります。

また、上述したとおり、事務所として使用可能な物件なのか、ということもしっかりと確認しなくてはなりません。

その他、来客を想定した広さ、必要な機器・備品が収まる広さがあるかなど、事前に抜け漏れなく確認して物件を選びましょう。

入居審査を受ける

良い物件が見つかったら、次は入居審査を受けることになります。

ただし、個人事業主が事務所を借りる際は、審査が通りにくい場合があります。

入居審査に通るためには、どのような点に注意すればよいのでしょうか。

以下で解説いたします。

収入を証明する

個人事業主は収入が不安定だというイメージを持つオーナーが多く、会社員と比べて入居審査が厳しい傾向にあります。

しかし確定申告書や収入証明書などで安定した収入を得ていることを証明できれば、入居審査に通る可能性が高くなります。

ただし、たとえ現時点で収入があったとしても、事業を始めたばかりでは住所地の役所で収入証明書を発行してもらうことができません。

前年度の収入証明書を発行できるかなど、事前に確認をして用意しましょう。

貯蓄を証明する

収入を証明する以外に、貯蓄金額を証明することで、オーナーからの信用を得る方法もあります。

おおよその目安として、検討している物件の家賃の6ヶ月から12ヶ月分の貯蓄があると、支払い能力があると認められ、入居審査に通る可能性が高まります。

収入にあった家賃の物件を探す

収入にあった家賃の物件を探すということも大切です。

基本的には、事業資金を残すために、収入の1/3の家賃で借りられる物件を選ぶと良いでしょう。

連帯保証人をつける

個人事業主が事務所を借りる場合、上述した通り信用度が低いため、不動産会社やオーナーから連帯保証人を求められることがよくあります。

連帯保証人は、借り手が賃料を滞納した場合や契約違反をした場合に、貸主に代わって支払いをする義務を負う人です。

連帯保証人を設定できれば、契約に応じてもらいやすくなります。

契約する

無事に審査が通り、契約となった場合も、以下の契約内容をしっかりと確認することが重要です。

契約条件の確認

賃料や保証金、更新条件や解約条件、共益費の支払い方法など、契約条件についてしっかりと確認しましょう。

建物の状態の確認

外観や内装、電気・水道設備など、建物の状態が事業に影響することもあります。

契約前に建物の状態を確認し、修繕や改装などが必要な場合は、事前にオーナーや不動産会社へ確認すると良いでしょう。

契約の範囲の確認

契約によって、使用できる部屋や設備が異なる場合があります。

共用部分の化粧室を自分の顧客が利用できるか、事務所ドアの前に掲示物を出せるかなど、自分の事業に必要な施設や機器の利用が可能かどうかを、確認しておきましょう。

個人事業主は事務所の賃料を経費にできる?


個人事業主が自宅とは別に事務所を借りた場合、その事務所の賃料はすべて経費に計上することができます。

しかし、事務所を借りる際の敷金や保証金などは、退去後に戻ってくるため、経費に計上することができません。

以下、経費に計上できるものと、できないものの一覧表になります。

賃貸事務所に関する費用
家賃 経費にできる
敷金・保証金 経費にできない
礼金 経費にできる
仲介手数料 経費にできる
自宅との往復交通費 経費にできる
光熱費 経費にできる

交通費は、事務所と自宅の往復費用はもちろん、顧客訪問や取引先への営業など、事業に関わる交通費を全て経費として計上することができます。

個人事業主が賃貸物件以外で事務所を確保する方法とは?

個人事業主には、物件の賃貸以外で事務所を確保する方法もあります。

賃貸物件には上述した通り、多くの利点がある一方で、審査の厳しさや費用が増えてしまうという難点があります。

また、自宅を事務所にする場合は、業務に集中できない、公私のメリハリがつかないといったデメリットがあります。

そこで、費用を抑えながら事務所を確保する方法として、シェアオフィスやコワーキングスペースといった選択肢があります。

シェアオフィス

シェアオフィスは、複数の企業などが共有するオフィススペースです。

シェアオフィスを利用すれば、事務所を借りるために賃貸契約をする必要がないため、初期投資や賃料を抑えることができます。

また、光熱費、共有部分の清掃費、インターネット代などの通信費も、共有設備を利用すれば安く抑えることができます。

特にスタートアップや小規模な企業はオフィスを維持するのが難しいため、コストや効率性の観点から、シェアオフィスの利用が増えてきています。

ただし、一般的なシェアオフィスでは、一定以上の人数規模がある企業を想定して料金設定しています。

個人や少人数で利用する場合、使用料が高額になってしまうこともあるので注意が必要です。

コワーキングスペース

コワーキングスペースは、複数の企業や個人が共有するオフィススペースです。

一定以上の人数規模がある企業の利用が多いシェアオフィスに対し、コワーキングスペースは個人や少人数のスタッフが利用しやすいオフィススペースと言えます。

レンタルできるスペースが一席からなど比較的小規模で、一人用デスク、Zoomなどのミーティングに対応した防音室がある場合が多く、より個人や少人数の企業に向いていると言えるでしょう。

まとめ

  • 個人事業主は自宅を事務所にすることができる
  • 個人事業主は自宅とは別に事務所を借りることができる
  • 個人事業主は社会的信用が低いため、入居審査が厳しい傾向にある
  • 事務所の賃料や経費にすることができる
  • 賃貸物件以外にも事務所を確保する方法はある

今回の記事では、個人事業主が自宅を事務所とする場合、自宅とは別に事務所を借りる場合、それ以外の方法で事務所を構える場合などについて、詳しく解説しました。

自分の事業の特徴、現在の状況などをふまえて、ビジネスのために最適な環境を用意しましょう。

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