個人事業主が健康診断を受ける方法は?費用の経費計上や医療費控除について

個人事業主が健康診断を受ける方法は?費用の経費計上や医療費控除について コラム

「個人事業主の健康診断の費用は経費になるのか知りたい」

「個人事業主の健康診断の費用は医療費控除の対象なのか知りたい」

「個人事業主がお得に健康診断を受ける方法を知りたい」

個人事業主の中には、このような悩みを持つ方も多いでしょう。

そんな方に向けて、今回は「個人事業主は健康診断の費用を経費にできるのか」について詳しく解説していきます。

この記事を読むことで、個人事業主の方は安心して健康診断を受け、スムーズに確定申告を行えるようになるでしょう。

個人事業主が健康診断を受ける方法

会社員であれば、会社が健康診断の手配や指示をしてくれます。

しかし個人事業主は、自分で申し込んで健康診断を受ける必要があります。

個人事業主の中には、何年も健康診断に行っていないという人もいるのではないでしょうか。

しかし、そんな状態では、いつ体調を崩して働けなくなるか分かりません。

自分が資本だと言われている個人事業主こそ、定期的に健康診断を受けることが重要です。

個人事業主が健康診断を受けるには、以下のような方法があります。

病院や健診センター

個人事業主は、健康診断を行なっている病院や健診センターに自分で申し込むことで、健康診断を受けることができます。

希望する場所や日時で検査を受けられるのが、この方法のメリットです。

自宅近くのクリニックに行ったり、得意先からの帰りに立ち寄ったりと、自分の都合に合わせて健康診断を済ませたい方におすすめです。

ただし、次に説明する国民健康保険組合や地方自治体の健康診断と比べると、健康診断の費用が割高になる可能性があります。

国民健康保険組合

国民健康保険組合に加入して健康診断を受けるという方法もあります。

国民健康保険組合とは、地域で加入する「国民健康保険」とは異なり、同じ職種、業務の従事者で形成された健康保険の組合のことです。

一般的に、国民健康保険は自治体に住んでいる個人が自治体ごとに加入しますが、国民健康保険組合は、美術家、税理士、建設業など、職種ごとに加入します。

また参考までに、個人事業主であっても、会社を退職する際に加入していた保険組合で手続きを行えば2年間は任意継続することができます。

加入している保険組合によって、健康診断の補助金や条件が異なるため、事前にチェックをして活用しましょう。

地方自治体の健康診断

国民健康保険に加入していれば、地方自治体が行う健康診断を受けることもできます。

地方自治体の健康診断には、無料、あるいは低料金で受けられるというメリットがある一方、健康診断の日程があらかじめ決められているなど、スケジュール調整が必要な場合があります。

実施場所や人数に制限があるために、なかなかタイミングが合わせられず、利用できないこともあるかもしれません。

地方自治体の健康診断は、以下のような方法で受診できます。

  • 各自治体のサイトから予約をする
  • 役所の窓口で申し込む
  • 郵送される健診チケットを利用する

詳しい実施日程や開催場所などの詳細は、自治体によって異なります。

自治体のホームページや広報紙などを確認し、自分に合った方法で受診計画を立てましょう。

協会けんぽの補助制度を活用

協会けんぽとは「全国健康保険協会」の略称で、中小企業の従業員とその家族を対象としています。

協会けんぽでは、年度内に1人1回限り、健診費用を一部補助してくれます。

健康診断だけでなく、乳がん検診や子宮頸がんの検診、肺炎の検査も対象です。

具体的な健診費用は医療機関によって異なりますので、事前に確認をしましょう。

あんしん財団に加入

あんしん財団とは、怪我の補償・災害防止サービス・福利厚生サービスが受けられる、中小企業向けの保険です。

個人事業主でも月々2,000円で加入でき、健康診断などに一定額の補助金が支給されます。

あんしん財団と契約している病院やクリニックを利用するのであれば、人間ドックやPET健診などを受けた際にも、補助を受けることが可能です。

個人事業主は健康診断の費用を経費にできる?

会社員であれば、福利厚生の一環として、会社側が健康診断の費用を負担してくれるケースがほとんどです。

では、個人事業主も、健康診断の費用を「福利厚生」の経費として計上できるのでしょうか。

解説していきます。

個人事業主本人や家族の費用は経費にできない

個人事業主が、本人や配偶者を含む家族の健康診断の費用を支払う場合、その費用を経費にすることはできません。

家庭の健康診断や人間ドックの費用は、プライベートの費用として扱う必要があります。

雇用している従業員の費用は経費計上できる

個人事業主が家族以外の従業員を雇用している場合は、従業員にかかる健康診断や人間ドッグの費用を「福利厚生費」として経費計上することができます。

福利厚生費とするためには、全従業員を対象とすること、社会通念上高額すぎないことなどの条件がありますので注意しましょう。

また、参考までに、1人でも従業員を雇用すると、雇用主には健康診断を受けさせる義務が生じることを覚えておきましょう。

労働安全衛生法によって、「事業者は、労働者に対し、厚生労働省令で定めるところにより、医師による健康診断を行わなければならない」と定められています。

定めを守らないと、罰金が課せられることもあるので、注意が必要です。

なお従業員には、正社員の週所定労働時間の3/4以上働くパートやアルバイト労働者も該当します。

(参考:厚生労働省|労働安全衛生法に基づく健康診断を実施しましょう

個人事業主の健康診断費用は医療費控除の対象になる?


医療費控除とは、本人とその家族が、1月1日から12月31日までの1年間に支払った医療費が一定金額を超えた場合に、所得控除が受けられる制度です。

(参考:国税庁・医療費を支払ったとき(医療費控除))

確定申告をすることで、医療費控除が適用されます。

では、個人事業主の健康診断費用は、医療費控除の対象になるのかどうかを見ていきましょう。

診断結果に問題がなかった場合

診断結果に問題がなかった場合、個人事業主の健康診断の費用は医療費控除の対象になりません。

なぜなら、その健康診断は治療を目的としたものではなく、あくまで病気の早期発見が目的となるからです。

治療のための医療費ではない、という判断になります。

診断結果で病気が見つかった場合に医療費控除の対象

個人事業主が自身の健康診断を受けた際にかかる医療費は、基本的に医療費控除の対象外となります。

しかし、健康診断の結果で重大な病気が見つかり、引き続き病気の治療を行う場合は治療に先立って行われた診断と考えられ、健康診断の費用は控除の対象となります。

こちらの記事で詳しく書かれているので参考にして下さい。

(参考:国税庁HP No.1122 医療費控除の対象となる医療費)

診断結果で医療費控除の特例を利用する場合

予防接種や健康診断の受診など健康のための一定の取り組みを行い領収書や結果通知表を保存していた場合に、セルフメディケーション税制(特定の医薬品購入額の所得控除制度)を利用することができます。

通常の医療費控除との選択適用のため確定申告の際に確認しましょう。

(参考:厚生労働省・セルフメディケーション税制について)

胃カメラなどのオプション費用を払った場合

人間ドッグや胃カメラなどの費用は、医療費控除の対象になりません。

やはり、健康診断と同様に、病気の早期発見や予防が目的で、治療ではないからです。

しかし、人間ドックの受診によって、がんや糖尿病、心疾患、高血圧などの大きな病気が発見された場合は、医療費控除の対象となることがあります。

その後の治療に先立って行われた、治療の一環と判断されるためです。

ただし、ピロリ菌のように、胃がんの原因と考えられてはいるものの、因果関係がはっきりしていないものについては、治療の一環とは判断されず、医療費控除が適用されないことに注意しましょう。

不明点があれば、確定申告をする前に、所轄の税務署に判断基準を確認しておくのがおすすめです。

健康診断と人間ドックの違い(検査項目について)

健康診断と人間ドックの違い

健康診断 人間ドック
目的 労働者の健康状態の把握 病気の予防や早期発見
検査項目数 最低限(10~15項目) 多い(50項目以上)
健康保険の適用 あり なし
費用 1~3万円 4~10万円

健康診断は病気の早期発見や予防、健康状態の総合的な評価を目的とし、年1回の健康診断を受けることを求められることが一般的です。

人間ドックは任意であり、法的な義務はありません。

ですので、医療費控除の対象ではありません。

しかし、自信の健康への関心や病気の予防・早期発見のために、自主的に受診しましょう。

必要なら健診項目の追加を検討

男女共におすすめ 胃カメラ
腹部超音波検査
CT検査やMRI検査
男性向け 前立腺腫瘍マーカー(PSA)検査
前立腺エコー検査
前立腺触診
女性向け 子宮・卵巣、大腸、乳房の検査
乳がん、子宮がん、大腸がん検査
子宮内膜症や子宮筋腫など

個人事業主として働いている場合、健康診断や人間ドックの受診は自身の意識や判断による部分が大きくなります。

男女共に病気の早期発症リスクを避けるため、30代から気になる部位のオプション検査を受けましょう

(参考:厚生労働省・職場のあんぜんサイト)

個人事業主に健康診断を受ける義務はある?

個人事業主には、健康診断を受ける義務はありません。

自身の健康管理と無収入のリスク回避のために受けることが推奨され、健康診断を受けることで自身の健康意識を高め健康的なライフスタイルの維持にも役立ちます。

健康診断は義務ではない

個人事業主が健康診断を受けることは義務ではありません。

ただし、健康管理を怠ることで健康状態が悪化し、仕事に支障が出る恐れがあります。

そのため、定期的な健康診断は自己責任で行うことが望ましいとされ、公的な健康診断の受診により早期発見・早期治療ができます。

健康状態を維持するためにも、積極的な健康診断の受診が必要です。

無収入の危険を減らせる

個人事業主には健康診断の義務はありませんが、健康診断を受けることは無収入の危険を減らすために非常に重要です。

会社員の場合、体調不良や病気治療によって有給休暇や傷病手当金を受け取ることができます。

一方で個人事業主にはそのようなセーフティーネットがありません。

個人事業主は健康を損なえば収入源が途絶え、無収入に陥ってしまう恐れがあり、健康を損なって仕事が中断することで取引先から契約を打ち切られる可能性も。

健康診断を受けることで自身の健康状態を把握し、病気のリスクを未然に防ぐことができます。

健康診断で健康意識を高める

個人事業主には健康診断を受ける義務はありませんが、定期的な健康診断は自身の健康状態を把握するために重要です。

健康診断で定期的に検査を受けることで、疾患が早期に発見できやすく治療の早期介入ができるようになります。

個人事業主が健康診断を受けるメリット

定期的な健康診断は、生活習慣の改善や病気の早期発見・治療に役立ち、健康維持をサポートします。

個人事業主は病気で仕事を休むと収入が途絶えるリスクがあるため、定期的な健康診断は大切です。

セルフメディケーション税制(特定の医薬品購入額の所得控除制度)を利用する場合にも、健康診断を受ける事が条件の一つです。

この税制を利用すると、スイッチOTC医薬品の購入費を所得控除でき、健康診断や人間ドックで何らかの疾病が見つかり治療を受ける場合、受診費用は医療費控除の対象となります。

まとめ

  • 個人事業主が健康診断を受ける方法には、病院や検診センターの利用、国民健康保険組合の利用、地方自治体の健康診断がある
  • 個人事業主本人や家族の健康診断費用は、原則として経費にはできない
  • 雇用している従業員の健康診断費用は、経費計上が可能
  • 個人事業主の健康診断費用は、原則として医療費控除の対象にはならない
  • 個人事業主の健康診断後に重大な病気が見つかった時は、医療費控除の対象になることもある

今回は「個人事業主は健康診断の費用を経費にできるのか」について解説してきました。

上記5つのポイントを確認し、個人事業主として働く方こそ、定期的に健康診断を受けるようにしましょう。

また、医療費控除の対象になるケースがあるので、確定申告の前にわからないことがあれば税務署や自治体に確認しておきましょう。

マイチョイス編集部

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