大型トラックで個人事業主として開業できる?メリットや必要なもの

コラム

大型トラックを所有している人や、トラック運転手の中には、「大型トラックで個人事業主として独立・開業したい」と考える人もいるでしょう。

本記事ではそのような方に向けて、大型トラックで個人事業主として開業できるのか、メリットとデメリット、開業するために必要なものについて解説します。

大型トラックで個人事業主として開業することを検討しているのであれば、ぜひ参考にしてください。

大型トラックで個人事業主として開業できる?


大型トラックで個人事業主として開業することは可能です。

従業員を雇わない一人親方として独立するトラック運転手も多く、月収100万円を越す人も珍しくありません。

トラックの登録区分には、白ナンバーの自家用登録と、緑ナンバーの事業用登録の2種類があります。

輸送での運賃収入を得るには、緑ナンバーの事業用登録が必要となります。

もしも、自家用登録の白ナンバーで運賃が生じる運送業務を行ってしまうと、「貨物自動車運送事業法違反」で処罰され、「1年から3年以下の懲役または300万円以下の罰金」が科されます。

また、懲役刑が科された場合は、出所してから2年が経過しないと新規許可申請が行えないというペナルティもあります。

参考:e-Gov 法令検索|貨物自動車運送事業法

そのため、運賃を受け取る運送業務を開始するためには、事業用登録をして緑ナンバーを取得しなければなりません。

また、運送業として事業登録する場合には、以下の3種類から事業内容を選ぶことになります。

一般貨物自動車運送事業 複数の荷主からの荷物を取り扱う運送事業者
特定貨物自動車運送業 1社の荷主のみからの貨物を取り扱う運送事業者
貨物軽自動車運送事業 軽自動車や125cc以上のバイクを使用し、複数の荷主からの荷物を取り扱う運送事業者

個人事業主として開業するためには、一般貨物自動車運送事業や特定貨物自動車運送事業など、経営しようとする運送事業のルールに沿って、国土交通大臣や地方運輸局長の認可を取得しなければなりません。

参考:国土交通省|一般貨物自動車運送事業

運送事業者登録をすることで、その後、自動車運送事業者としての届出や、車両の保険加入が可能となります。

以上のように、大型トラックを所有している個人は、運送事業者登録をして緑ナンバーを取得すること、運輸事業者として認可を受けることなどのステップを経て、個人事業主として運送業を営むことができるようになります。

事業用登録をしていない白ナンバーのトラックでは、運賃が発生しない自社製品の納品や配送といった業務しか行えません。

荷主から荷物を預かる場合には、必ず緑ナンバーを取得しましょう。

では、緑ナンバーを取得するためには、どうすればよいのでしょうか。

一般貨物自動車運送事業や特定貨物自動車運送事業の許可を受ける方法をインターネットで調べると、法人を設立する前提で書かれている情報がほとんどで、ハードルが高いと感じるかもしれません。

しかし、自前のトラックを運送事業者に持ち込んで、業務委託・請負・専属契約のような契約を結ぶという方法があります。

たとえば、工事現場に土砂を運ぶ大型ダンプカーの運転手などは、「自前のダンプカーを持ち込む契約社員」のような形で、運賃に相当する労働賃金を受け取っていることがあります。

このような方法をとることで、法人を設立して緑ナンバーを取得しなくても、個人事業主として独立し、収入を得ることが可能です。

大型トラックで個人事業主として開業するメリット


大型トラックで個人事業主として開業するメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。

ひとつずつ解説していきます。

自分のペースで仕事ができる

個人事業主として開業すれば、自分で自分の働き方を決めることができます。

運送業務の時間やルートを自分で決めて、自分のペースに合わせて働くことができるのです。

自分で仕事のスケジュールを管理できるため、仕事の量を調整しやすく、無理のないペースにすることも、頑張って稼ぎたい金額を目指すこともできます。

ただし、個人事業主として開業する場合は、自分自身で顧客を獲得しなければなりません。

トラックのメンテナンスや修理も、自分で行う必要があります。

また、ある程度の収益を出して事業を軌道に乗せるまでは、やりたい仕事だけを選んだり、自分の都合やペースだけを優先するのではなく、荷主の要望に応え、嫌な仕事を引き受ける必要もあるでしょう。

トラック運転手の仕事は長時間運転が必要とされるため、疲労やストレスによる健康面でのリスクもあり、健康管理にも注意が必要です。

このように、大型トラックで個人事業主として開業することには、自分自身のライフスタイルに合わせた働き方ができるというメリットがあります。

しかし、自己責任の範囲が広く、健康リスクなどもあるため、慎重に計画を立てて事業を進めることが必要です。

設立費用が法人に比べてかからない

一般的に、法人として開業するためには、登記に必要な資本金や法的費用、さらには事業所や駐車場などの設備投資費用など、最低でも数十万円、規模によっては数百万円以上の設立費用が必要となります。

これに対し、個人事業主として開業する場合は、それらの設立費用を大幅に削減することができます。

ただし、大型トラックで個人事業主として開業する場合も、少なくとも以下のような設立費用は必要です。

  • 開業に必要なトラック購入費
  • 保険料
  • 燃料費
  • 車検費用
  • 税金などの諸経費

大型トラックを既に所有している場合は、事業を開業するための初期費用は比較的少なくすませることができます。

なお、上記以外にも、トラックのメンテナンスや修理などが必要であれば、そちらも自己負担となります。

努力次第で収入が青天井

大型トラックで個人事業主として開業すると、高い収入を得られる可能性があります。

組織に雇用されているトラック運転手は、その組織のルールの範囲内で働き、その給与体系の中で収入を上げていくことしか出来ません。

しかし、個人事業主として開業することで、自分自身で仕事量をコントロールし、必要であれば自由に仕事を増やすこともできるため、労働時間や収入金額の上限がなくなります

ただし、収入が青天井と言えるほど高額になるかどうかは、個人の能力や努力次第です。

収入を増やすには、運転技術やサービスの向上、顧客開拓、コスト削減などの様々な努力が必要になります。

また、得られる収入は、輸送業界の需要や市場競争、荷主との契約条件、燃料費やトラックの維持費など、多くの自分以外の外部の要素によって左右されてしまいます。

事業を成功させるには、上記のような要素を把握して、計画的に経営を行うことが必要です。

また、需要には変動があるため、需要が低迷した場合には、収入が減少する可能性も考慮しておきましょう。

ただトラックを所有しているだけで、安定した収入、高額の収入が得られるわけではないのです。

収入を増やすためには、顧客との信頼関係の構築や、顧客のニーズに合わせたサービス提供など、マーケティングや営業力も必要です。

さらに、収入が途絶えて困ることのないように、万が一の事故やトラブルに備えた保険やリスク管理にも、十分な対策が必要です。

こうしたことに充分な注意を払うことができれば、大型トラックでの個人事業主として開業することで、自分自身の努力次第で高い収入を得られる可能性があります。

トラック運転手で個人事業主として開業するデメリット


トラック運転手で個人事業主として開業する場合のデメリットには、以下のようなものがあります。

社会的な信頼度が低い

トラック運転手に限らず、一般的に個人事業主は、法人に比べて信用度が低い傾向があります。

やはり法人であるほうが、営業などを掛けた際にも話を聞いてもらいやすく、仕事を任せてもらえる可能性も高いのです。

個人事業主でありながら、自分の事業の信用度を高めるためには、安全運転や業務遂行能力の向上、顧客満足度の向上など、多くの努力が必要です。

さらに、個人事業主は自己責任で事業を進めるため、取引先と交渉が必要になった場合や、事故やトラブルが発生した場合など、全てのシーンにおいて自己責任で対処することが求められます。

法令や規制を遵守し、車両の整備や運転時間の管理を行い、荷物の積載量の遵守をするなど、必要な知識をすべて自分で身につけて、誠実に仕事をすることが大切です。

以上のとおり、大型トラックで個人事業主として開業する場合は、法令や規制を遵守し、顧客満足度を向上させ、法人に比べて低い事業者としての信用度を高める努力が必要です。

自己負担が大きい

トラック運転手が個人事業主として開業する場合、自己負担が大きいというデメリットがあります。

以下にその理由を挙げます。

  • トラックの購入や維持に、多額の資金が必要となる
  • 保険料、税金、燃料費、車両の整備費用など、多くの経費がかかる

これらの費用は、個人事業主自身が全て負担することになります。

また、個人事業主として仕事を得るためには、顧客の開拓や営業活動が必要となります。

このため、自分自身の労力や時間の負担が大きくなることがあります。

さらに、個人事業主となると、社会保険や年金などの加入や納付が自己責任となります。

現在や将来の生活を安定させるためには、これらの保障についても理解して、自分で手続きをする必要があります。

以上のように、大型トラックで個人事業主として開業する場合には、多くの自己負担が必要となります。

ただし、自己負担が大きい反面、事業が軌道に乗って安定すれば、収入は組織に勤めている場合よりも多くなる可能性があります。

計画的に経営を行い、自己負担を抑えながら、安定した収入を得られるように事業を育てていきましょう。

必要な手続きが多い

大型トラックで個人事業主として開業するためには、事業を開始してから1ヶ月以内に、最寄りの税務署にて「個人事業主の開業・廃業等届出書」を提出する必要があります。

その他にも、国土交通省への登録や保険の加入など、事業開始前に行うべき手続きが多数あります。

とくに運送業許可申請は、運送業の許可を取得するために必要な手続きであり、要件があるので注意が必要です。

さらに、トラック運転には、関係する法令や規制が多く存在します。

個人事業主として開業する場合には、これらの法令や規制にも従わなければなりません。

以上のように、トラック運転手が個人事業主として開業する場合には、多くの手続きや、関連知識が必要となります。

しかし、これらの手続きをしっかりと行うことができれば、安定した事業展開が可能になるでしょう。

大型トラックで個人事業主として開業するために必要なもの


大型トラックで個人事業主として開業するために必要なものは、主に以下の4つです。

ひとつずつ詳しく解説していきましょう。

資金

個人事業主として事業を開始するためには、車両の購入や修理、保険料、燃料費など、開業に必要なコストを事前に算出して資金を調達する必要があります。

大型トラックで個人事業主として開業するために必要な資金には、以下のようなものがあります。

車両購入費用 大型トラックを購入するための資金。中古車を購入する場合でも数百万円以上の資金が必要になります。
保険料 自賠責保険、任意保険、労災保険など。保険料は、車両の種類や利用用途、保険金額などによって異なりますが、大型トラックの場合は年間およそ40万円〜50万円程度が必要です。
燃料費 燃料費は、走行距離や燃費、車両の保有台数によって異なりますが、月間で30万円〜50万円必要になる場合もあります。
車両維持費用 車検代、修理代、タイヤ交換代など。車検代は、大型トラックの場合はおよそ15万円程度が必要です。

事務所、駐車場

トラック運転手として開業する場合、車両の駐車場所を用意する必要があります。

また、事務所を構えれば、事業を運営するための事務所スペースも確保できます。

大型トラックで個人事業主として開業する際、事務所や駐車場については、以下のような点を考慮しておきましょう。

事務所 事務所を借りる必要はありませんが、自宅を事務所として使用する場合には、自治体に届け出をする必要があります。また、事務所にはパソコンやプリンター、電話などの必要な機器や文具類が必要になる場合があります。
駐車場 大型トラックは、普通車と比べて駐車スペースが大きいため、大型トラックを停められる広さの駐車場が必要です。

最低5台のトラック

従業員を雇わない一人親方の場合は、トラックが一台あれば開業することができます。

しかし、荷主となる企業と業務提携をする方法をとらず、自前で事業用の「緑ナンバー」を取得するのであれば、運送車両を5台以上所有する必要があります。

大型トラックで個人事業主として開業するために、必ずしも最低5台のトラックが必要というわけではありません。

運送業界においては、トラックの数や規模は事業者によって異なります。

しかし、運送業を拡大していこうと考えると、やはり一定数のトラックが必要です。

トラックの数が増えることで、仕事の幅を広げることもできます。

ただし、トラックの数が多くなると、車両購入費や維持費などの費用が増えることには注意が必要です。

また、ドライバーの雇用や管理も必要になります。

そのため、トラックの数を増やして事業を拡大していく場合には、十分に計画を練ってリスクを把握した上で行うことが重要です。

最低5人の従業員

自前で事業用の「緑ナンバー」を取得する場合、前述したとおり5台のトラックが必要となります。

そして、運転手についても、トラックの台数と同じ人数が必要です。

また、運送業許可を取得するためには、最低でも常勤の運行管理者を1名確保する必要があります。

運送業を拡大していくためには、トラックを運転するドライバーだけでなく、事務スタッフや整備士など、事業に必要な人材を揃えることが重要です。

ドライバー以外のスタッフが、車両の手配や整備、運送スケジュールの調整、顧客との橋渡しなどを担当すれば、事業全体の運営がスムーズになります。

また、ドライバーの負担を軽減するために、二人一組でドライバーを運転するチームを編成することもできます。

以上のように、従業員を採用することで、さまざまなメリットを生み出すことが可能です。

ただし、従業員を採用することによる費用や、人員の管理・育成にかかる時間のリスクや負担も発生します。

また、従業員を採用する場合は、労働法や社会保険などの法的な規制にも十分に配慮する必要があります。

まとめ

  • 大型トラックで個人事業主として開業は可能
  • 自分のペースで仕事ができ、努力次第で収入が青天井というメリットがある
  • 自己負担が大きく、必要な手続きが多いというデメリットがある
  • 個人事業主として開業するにはいくつかの必要条件がある
  • 個人事業主として開業するにはしっかりと事業計画を練る必要がある

本記事では、大型トラックで個人事業主として開業するメリットや、必要なものについて解説しました。

大型トラックで個人事業主として開業するメリットとして、自分のペースで仕事ができること、法人に比べて設立費用がかからないこと、努力次第で収入が青天井であることが挙げられます。

しかし、自己負担が大きいこと、必要な手続きが多いことなどのデメリットもあります。

また、大型トラックで個人事業主として開業して、自分自身で緑ナンバーを取得するためには、資金、事務所・駐車場、最低5台のトラック、最低5人の従業員が必要とされます。

注意すべき要素が一気に増えるため、事業拡大にあたっては慎重に計画を作成しましょう。

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