「個人事業主の男性が育休を取れる制度はあるのか?」と、疑問を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし残念ながら、個人事業主には育休制度は適用されません。
しかし、育児と仕事を両立させたい個人事業主の男性にとって、育児のために休暇をとることができるかどうかは重要な問題です。
本記事では、個人事業主の男性が育休を取る方法や、産後パパ育休制度について紹介します。
個人事業主の男性は育休を取れる?
一般的に「育休」と呼ばれているのは、労働者のための休暇制度を定めた育児介護休業法による「育児休業」のことです。
しかし、この制度は雇用されている労働者のために作られたものなので、個人事業主には適用されません。
そのため、個人事業主の男性が育児のために休暇を取りたい場合に、自己判断で仕事を休む期間を作ることになります。
育児休業制度は個人事業主には適応されない
育児休業制度は、企業や官公庁などに勤める労働者に対して適用される制度です。
個人事業主の男性も、自己判断で育児のための休業を選択することは可能ですが、休業期間の収入減を補填する給付金は支給されません。
収入が減少したり、無くなってしまったり、休業によって仕事の発注が途切れてしまう可能性もあります。
そのため、個人事業主の男性が育休を取得する場合には、事前の準備が必要不可欠です。
育休期間や育休の理由、事業の状況などを考慮して、自己のビジネスに影響を与えないように計画的に取り組むことが重要です。
個人事業主の男性が育休を取るには準備が必要
個人事業主の男性が育休を取得するには、育休期間の決定や生活費の準備など、様々な事前準備が必要です。
本章では、育休期間の決め方や取引先への周知方法、育休中の生活資金の準備など、具体的なポイントを紹介します。
事前にしっかりと準備することで、円滑に育休を取得することができます。
育休期間を決める
企業などに勤めている男性が育休を取得する場合、出産予定日から子どもが1歳になる誕生日の前日までが、育休申請可能な期間として定められています。
しかし、個人事業主の男性の場合は、自分でスケジュールを調整して休暇期間を決めることになります。
まずは主要な取引先に相談をして、今後の仕事のスケジュールを確認しておきましょう。
自分が関与しているプロジェクトの進行状況や今後の発注予定から、休みを取るのに適切な時期を見極めるためです。
また、育休期間にかかりそうな仕事は引き受けない、ということも大切です。
自分に合った育児休暇の時期や期間を検討し、調整を進めていきましょう。
取引先へ育休を周知する
育休を取得したい期間を決めたら、取引先に周知をしましょう。
継続的に取引をしている取引先のスケジュールや納期に影響が出てしまう場合は、普段とは違う調整をお願いすることになります。
早い段階から、誠意をもって相談しておきましょう。
なお、個人事業主の男性は、育休をかなり柔軟に取ることができるため、一般的な育休制度のように長期間職場を離れるのではなく、仕事量を減らすような形で対応することも可能です。
よく検討した休業予定を明解に伝えることで、信頼関係を損なうことなく、スムーズに休暇に入ることができるでしょう。
育休中の生活資金を準備
企業などに勤めている男性が育休を取得する場合、育休中は原則として就業することはできません。
しかし途切れてしまう給与の代わりに、会社の健康保険から「出産手当金」が支給されます。
個人事業主の男性が育休を取る場合は、手当の支給がないため、単純に仕事をしないために収入が減ってしまうか、全く無くなります。
このため、事前にしっかりと計画を立てて、貯金や保険などで生活資金を確保しておく必要があります。
生活資金の準備が難しい場合には、育休を理由とした金融機関からの低利率融資を受けることも検討しましょう。
また、仕事をしないと生活に支障が出てしまう場合には、少ない量で仕事を続けるという選択肢もあることを覚えておきましょう。
生活資金は、育休中に安心して育児に専念するために、最も重要な準備だといえるでしょう。
産後パパ育休制度とは?活用できる個人事業主もいる?
この章では、産後パパ育休制度とはどのようなものか、従来の育休との違いはどこにあるのか、個人事業主の男性にも活用することはできるのかを紹介していきます。
産後パパ育休制度とは
産後パパ育休制度とは、育児休業法の改正により2022年10月1日から施行された、子どもの出生後に父親が取得できる育児休業制度です。
企業などに勤めている男性は、子どもの出生後8週間以内に、最長4週間までの育休を2回まで分割して取得することができます。
取得のための申請期限も、1ヵ月前までに申請する必要のあった従来制度とは異なり、2週間前までに申請すればよいことになっています。
育児休業制度との違い
一般的な育休制度と産後パパ育休制度の違いを、表にまとめました。
比較項目 | 育児休業 | 産後パパ育休 |
---|---|---|
対象者 | 父親・母親 | 父親のみ |
対象期間 | 子が1歳(最長2歳)まで | 子の出生後8週間以内 |
取得可能期間 | 1回あたり最長1年間 | 最長4週間 |
分割取得 | 2回まで分割可能 | 2回まで分割可能 |
申請期限 | 休業1か月前 | 休業2週間前 |
給付金 | 支給対象 | 支給対象 |
このほかにも、育休制度では原則として休業中は就業できませんが、産後パパ育休では事前に労使協定を締結していれば定められた範囲内で仕事をすることができるなど、柔軟さの違いがあります。
産後パパ育休制度によって、企業などに勤めている男性は、以前よりも臨機応変に休業を活用することができるようになりました。
パートナーが会社員であれば制度を活用しよう!
個人事業主本人は、企業などに勤めている人と同じような育児休業制度や産後パパ育休制度を利用することはできません。
しかし、パートナーが企業などに勤めているのであれば、利用できる制度を最大限に活用しましょう。
たとえば、パートナーが同じ時期に育休を取得するのであれば、パートナーが休業開始時に受け取っていた賃金の67%(180日経過後は50%)が「育児休業給付金」として支給されます。
制度を利用して世帯収入を確保しながら、二人で育児に向き合う時間を作ることができます。
また、個人事業主本人の年収が150万円未満となりそうなら、パートナーの扶養に入って節税することを検討してもよいでしょう。
パートナーが利用できる制度も確認しておけば、より安心して育児に専念することができます。
まとめ
- 個人事業主の男性には、育児休業制度は適用されない。育休を取得する場合は自己判断で行う。
- 個人事業主の男性が育休を取得する場合、期間の調整、取引先への周知、生活資金の確保などが必要。
- 法改正によって産後パパ育休制度が新設され、企業などに勤める父親は子どもの出生直後にも柔軟に育休を取得できるようになった。
- パートナーが会社員であれば、パートナーの育休申請によって育児休業給付金の支給を受けるなど、制度を活用することができる。
- 育休取得の準備では、個人事業主の男性本人についてのみではなく、パートナーなどを含めた世帯全体で利用できる制度を考えるとよい。
この記事では、個人事業主の男性が育休を取ることについて解説しました。
育児休業制度は個人事業主本人には適用されませんが、活用できる部分もあります。
個人事業主が育休を取る際は、期間の決定や取引先への周知、生活資金の準備が必要です。
個人事業主で育休の取得を考えている方は、この記事を参考に準備を進めてみてください。