「PL保険(生産物賠償責任保険)」は、製造者が製造、販売をした商品が使用者にケガをさせてしまった場合などに、その損害を補償するための保険です。
「製造者のための保険だから、企業しか加入できない?」
こう思う方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では、個人事業主もPL保険に加入できるのか、加入できるならどこに気をつけて保険を選べばいいのかを解説します。
特に、PL保険は「企業に雇用されていない、個人事業主自身の身を守る」ことにつながる保険です。
ぜひ最後までお読みください。
個人事業主はPL保険に加入できる?
個人事業主でも、PL保険に加入できます。
飲食店を経営していたり、物を作って販売したりしていれば、売ったものが原因で、顧客に思いがけないトラブルが起こることがあり得ます。
詳しい内容は後述しますが、PL保険はそんなトラブル時の損害を補償してくれる保険です。
損害がもし1,000万円だとしたら、大企業であれば問題なく支払えるのでしょうが、中小企業や個人事業主にとっては致命的な損害になってしまう可能性があります。
PL保険は、個人事業主こそ加入した方が良い保険です。
PL保険(生産物損害賠償責任保険)とは
PL保険の正式名称は、「生産物損害賠償責任保険」と言い、事業者向けの保険です。
生産・販売された製品の欠陥や、工事の施工不良により、消費者がケガなど身体の危険や、財産に被害を受けた場合、その製品の製造業者、販売者、事業者などは、消費者に対して損害賠償責任を負います。
たとえ事業者に「過失がなかった」としてもです。
被害を受けた消費者から損害賠償請求を受けたときに支払う損害賠償金や訴訟の費用など、事業者側の損害を補償する保険が、PL保険です。
PL保険の適用になる事業者
PL保険の適用になる事業者は、主に製造者・販売者・飲食業者・工事業者です。
事業者ごとの賠償事故例は、以下の通りです。
製造業者 | (製造した商品の賠償事故) 充電中のモバイルバッテリーが発火し、使用者がやけどをしてしまった。 |
---|---|
飲食業者 | (調理した食品の賠償事故) 提供した食べ物で、お客様が食中毒になってしまった。 |
販売業者 | (販売した商品の賠償事故) 販売した化粧品を使ったお客様の肌が、かぶれてしまった。 |
工事業者 | (施工による賠償事故) 屋根の施工が不十分で雨漏りをしてしまい、お客様の家財に損害を与えてしまった。 |
そのほか、工事業者で注意が必要なのは、工事途中に起こった事故です。
たとえば、作業中に隣接する建物を壊してしまった場合などには、消費者の損害とは範囲が異なるため、PL保険は適用されません。
こういった状況に備えるためには、別途「請負業者賠償責任保険」のような、異なる範囲の保険に加入する必要があります。
PL保険の補償内容
基本的な補償内容は以下の6種類になります。
損害賠償金 | 損害賠償金として支払った費用など。ただし、「見舞金」は対象外。 |
---|---|
争訴(そうしょう)費用 | 賠償責任に関する裁判などの、訴訟費用や弁護士費用など。 |
損害防止費用 | 事故の拡大や、再発を防ぐためにかかった費用など。 |
求償権の保全・行使手続き費用 | 他から損害賠償の請求をするために支払った費用など。 |
緊急措置費用 | 事故発生時の応急手当の費用など。 |
協力費用 | 保険会社が事故対応にあたる場合、保険会社に協力するためにかかった費用など。 |
上記の基本補償では対応できない部分は、特約として付加することでカバーできます。
特約でプラスできる保障の一例です。
リコール特約 | リコール対象になった生産物の回収などにかかった費用の補償 |
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被害者治療費等保障特約 | 被害者に支払った治療費や見舞金などを補償 |
初期対応費用保障特約 | 事故が起こった際に調査・派遣・現場の片づけなど、初期対応にかかった費用を補償 |
食中毒・特定感染症利益保障特約 | 食中毒や感染症などで営業が休止したときに、減少した営業利益や給与などを補償 |
保障金は、保険の契約内容によって設定されている支払限度額の範囲内で支払われます。
保険会社によって補償内容や付加できる特約が異なるため、どのような内容が保障されるのか、しっかり確認しておく必要があります。
個人事業主のPL保険料相場は?
個人事業主が加入するPL保険の相場は、いくらぐらいでしょうか?
PL保険を調べると、とても安いところでは月額1,000円未満で加入できるものもあります。
しかし、他の保険でもいえることですが、PL保険料の内容も一律で決まっているわけではありません。
- 保障される金額
- 業種や生産物の種類によるリスク区分
- 直近1年の年間売上高
- 特約の付加
これらに応じて保険料は大幅に変わります。
PL保険の保険期間は1年間で、毎年更新です。
損害賠償などの保険を使用した場合には、翌年の保険料が上がることもあります。
複数の保険会社に見積もりを依頼しよう
上記の項目のほか、保険会社によっても料金や保障内容、付けられる特約の種類が異なります。
まずは、保険会社に見積もりを依頼してみましょう。
一括で見積もりができるサービスもあるので、利用を検討しても良いでしょう。
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個人事業主のPL保険の選び方【ポイントをおさえよう】
PL保険を選ぶにあたって、重要なポイントが2点あります。
業種によってどんなリスクがあるのかを知っておくこと、そして、複数の保険商品の比較をすることです。
この2点について、説明します。
リスクは何か
1つ目のポイントは、リスクは何かということです。
「どんなリスクが起こりえるか」によって、必要な補償は変わります。
業種によって、どんなリスクがあるのかを考えてみましょう。
食品販売や、飲食店の経営をしている場合、提供した料理が原因でお客様が食中毒になってしまう可能性があります。
お客様の治療費を支払ったり、営業を休止しないといけないという状況に備えて、「被害者治療費等保障特約」や「食中毒・特定感染症利益保障特約」という特約を付加しておいた方がいいでしょう。
製造業をしている場合は、製品の不具合でリコールが必要になるかもしれません。
「リコール特約」を付加していると、そんな時に損害をカバーすることができます。
このように、業種によって起こりうるリスクは違います。
自分の業種のリスクが何かを考えることが、保険加入にあたって重要です。
複数の保険を比較する
2つ目のポイントは、複数の保険を比較するということです。
保険会社によって、PL保険の基本補償の内容や、付加できる特約の種類や内容、金額も違ってきます。
自分の業種に必要な補償が分かったら、加入前に複数の保険を比較して、一番適している保険を選びましょう。
PL保険に加入する際の2つの注意点
PL保険に加入する際に注意しなければいけないことは、どんなことでしょうか。
加入する際の2つの注意点について、説明します。
リスク区分の選択を間違えない
PL保険に加入する際に、間違ってはいけないのが「リスク区分」です。
リスク区分とは「リスクの高さに応じて分けるランク」ことです。
保険料を決める項目の1つにこのリスク区分がありますが、業種や生産物の種類によって、適切なリスク区分は異なります。
たとえば同じ製造業でも、製造しているものがアクセサリーなのか、医薬品なのか、楽器なのかということでリスク区分は異なり、保険料も変わります。
この判断を間違えてしまうと、損害賠償責任が発生した場合に、必要な保険金を受け取れなくなるかもしれません。
リスク区分を選ぶ際は、必ず保険会社に相談しながら間違いのないように選択しましょう。
保険会社によってはリスク区分を選ばず、職種や生産物を選択して加入する仕組みになっている場合もあります。
PL保険補償の対象外になる場合もある
PL保険や特約を付加していても、補償の対象外になってしまう場合もあります。
以下のような事例には、保険会社は対応できません。
- 契約者、被保険者の故意
- 重大な過失
- アスベスト、放射線、核燃料などの危険物から生じる損害
- 戦争、暴動、労働争議などから生じる損害
- 地震、噴火、洪水などの自然災害生じる損害
このほかにも、保険会社によってさまざまな保障対象外の事例があります。
加入を決める前に、対象外となっている内容をしっかり確認しておきましょう。
まとめ
- PL保険には、個人事業主でも加入できる。
- 保険料は、保障を受ける額、業種や生産物の種類、年間売上高、特約の付加によって大幅に変わる。
- 複数の保険会社の見積もりをとって比較しよう。
- PL保険の補償対象外になる事例もある。
- PL保険には、個人事業主こそ加入したほうがいい。
たとえ故意ではなくても、製造物に不具合があればその事業者が損害賠償責任を負わなくてはいけません。
もしPL保険に加入していない状態で、損害賠償が発生するような事態が起こった際には、何千万、何億もの負債を抱え込むことにもなりかねません。
自分やお客様を守るためにも、まだ加入していない飲食店や製造・販売業、工事・作業をされている方は、PL保険の加入を考えてみてはいかがでしょうか。