社会保険の扶養になるための要件や外れるタイミング、手続き方法などを疑問に感じている個人事業主の方も多いのではないでしょうか。
本記事では、扶養に関する基本的な説明や個人事業主が扶養から外れるタイミング、実際に行うべき手続きについて詳しく解説していきます。
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扶養の種類は2つある
「扶養」は何気なく使われている言葉ですが、じつはこの「扶養」には2つの種類があり、意味や範囲が異なります。
例えば、一方では扶養範囲になっても、もう一方では範囲外になるケースもあります。2種類の扶養と共に、それぞれのケースについて詳しく解説していきます。
社会保険上の扶養
まずは「社会保険上の扶養」です。主に、会社員が勤務先で加入する社会保険の場合に、配偶者や親族がその社会保険の被扶養者になることができます。
被扶養者になることで、社会保険の保障を受けられるようになります。
被扶養者の扶養範囲
被扶養者になることができるのは、以下の範囲の人に限られます。
- 扶養者の配偶者および3親等内の親族
- 原則として国内居住者
さらに、1の範囲は続柄によって2種類に分類されます。
同居でも別居でもよい | 父母・祖父母/配偶者/子・孫/兄弟・姉妹 |
同居していることが条件 | 上記以外の3親等内の親族/配偶者の父母・連れ子 |
被扶養者の収入基準
被扶養者の要件として、収入の基準を満たす必要があります。
この基準は、扶養者と同居しているかどうかで内容が異なります。
①対象者(被扶養者)の年間収入が130万円未満
②対象者(被扶養者)の年間収入が扶養者の年間収入の2分の1未満
扶養者と別世帯
①対象者(被扶養者)の年間収入が130万円未満
②対象者(被扶養者)の年間収入が扶養者からの援助額未満
税法上の扶養
次に「税法上の扶養」です。一定の要件を満たす親族がいる場合に、所得税と住民税の計算において控除を受けられます。
扶養親族とは、その年の12月31日(納税者が年の中途で死亡しまたは出国※する場合は、その死亡または出国の時)の現況で、次の4つの要件のすべてに当てはまる人です(※出国とは、納税管理人の届出をしないで国内に住所および居所を有しないことをいいます)。
- 配偶者以外の親族(6親等内の血族および3親等内の姻族)
または都道府県知事から養育を委託された児童(いわゆる里子)や市町村長から養護を委託された老人であること。 - 納税者と生計を一にしている※必ずしも同居している必要はなく、別居であっても生活費等を送金している事実があれば「生計を一にする」と扱われます。
- 合計所得金額が48万円以下
- 青色申告者の事業専従者として給与を受け取っていない又は白色申告者の事業専従者ではない
基礎控除について
基礎控除とは、下表のように合計所得金額に応じて所得控除を受けられるものです。
合計所得金額 | 控除額 |
2,400万円以下 | 48万円 |
2,400万円超~2,450万円以下 | 32万円 |
2,450万円超~2,500万円以下 | 16万円 |
2,500万円超 | 0円(適用なし) |
「合計所得金額が48万円以下」という要件は、この基礎控除を差し引く前の所得金額になります。
配偶者控除について
税法上、配偶者は扶養親族ではないため、扶養控除の対象となりません。ただし、「配偶者控除」という別の控除の対象となります。
対象となるには、配偶者が先述した扶養親族の要件2〜4を満たしていることが条件です。
加えて、納税者の合計所得金額が1,000万円以下であれば、納税者にとって最大38万円の所得控除となります。
なお、配偶者の合計所得金額が48万円を超える場合であっても、133万円以下であれば「配偶者特別控除」として1〜38万円の控除が可能です。
扶養控除について
先述した扶養親族の要件1〜4を満たす扶養親族のうち、16歳以上の方については「控除対象扶養親族」となり、納税者の所得から控除することができます。
控除額は以下の表のとおりです。
区分 | 控除額 | |
一般の控除対象扶養親族 | 38万円 | |
特定扶養親族※1 | 63万円 | |
老人扶養親族※2 | 同居老親等以外の者 | 48万円 |
同居老親等 | 58万円 |
※1 控除対象扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が19歳以上23歳未満の者
※2 控除対象扶養親族のうち、その年12月31日現在の年齢が70歳以上の者をいい、同居しているかどうかで控除額が異なります。
個人事業主が社会保険上の扶養から外れるタイミング
「社会保険上の扶養」における被扶養者の収入基準については先に述べました。
ここでは、どのタイミングで扶養から外れるのかを詳しく解説していきます。
年収が130万円を超えたとき
被扶養者の年収が130万円(対象者が60歳以上もしくは障害厚生年金を受けている障害者の場合は180万円)を超えると、年収要件を満たさなくなるため、扶養から外れることになります。
ただし、個人事業主と会社員とでは年収の考え方が異なります。
個人事業主の年収とは、純粋な収入のことではなく「売上から直接的経費(仕入等の原価)を差し引いた金額」のことを指します。
そのため「年収=粗利」と考えるとわかりやすいでしょう。
参考個人事業主の130万円の壁については、こちらで詳しく解説しています。
被保険者の年収の2分の1を超えたとき
同一世帯の場合、対象者(被扶養者)の年間収入が扶養者の年間収入の2分の1を超えると、扶養から外れることになります。
ただし、2分の1を超えた場合でも例外的に被扶養者として認められるケースもあります。認められるケースは、以下のとおりです。
- 被扶養者の収入が扶養者の収入を下回っている
- 扶養者の収入が世帯の生計を維持するための、中心的役割を果たしている
日本年金機構が以上のような状況を認めた場合は、収入基準の例外となりえます。
年齢が75歳以上になったとき
収入基準を満たしていても、被扶養者の年齢が75歳を超えると社会保険上の扶養から外れることになります。
これは、75歳以上の人は加入している医療保険を後期高齢者医療制度に切り替える必要があるためです。
また、反対に扶養者が75歳以上になった場合も同様に、扶養者は健康保険の資格を失います。
被扶養者になっている人が75歳未満であっても扶養者とともに加入資格を失うので、別の医療保険に加入する必要があります。
個人事業主が社会保険上の扶養から外れた場合の手続き
年収基準によって個人事業主が社会保険上の扶養から外れてしまった場合、自身で別の保険に加入しなければなりません。
ここでは、社会保険上の扶養から外れてしまった場合の手続き方法について、詳しく解説していきます。
勤務先の社会保険に加入する
個人事業主であっても、勤務先の会社で社会保険に加入できる可能性があります。この場合、加入手続きは会社で行なってくれます。
被扶養者とは異なり保険料を支払う必要があるものの、勤務先との折半になるため、自己負担額を抑えることができます。
国民年金と国民健康保険に加入する
原則として、個人事業主は健康保険に加入できないため、国民健康保険に加入することになります。
健康保険とは異なり、自身で市区町村へ必要書類を提出して手続きを行う必要があります。
資格を失ってから14日以内に手続きしなければならないので、早めに準備を進めましょう。
国民健康保険は健康保険と比べると「保険料が全額自己負担」「傷病手当金が受給できない」などの違いがあります。
また、国民健康保険には「扶養」という概念がありません。配偶者や親族を扶養に入れることができないので、それぞれが自分で加入しなければなりません。
扶養者が行う手続き
配偶者や親族が扶養から外れることになった場合、扶養者の勤務先でも手続きが発生します。
扶養から外れることが確定してから、5日以内に「健康保険被扶養者(異動)届」を提出する必要があります。
あわせて「健康保険資格喪失証明」も発行してもらうように依頼しましょう。
これは資格喪失した日を証明するための書類です。
健康保険資格喪失証は、扶養を外れた方が国民健康保険に加入する際の手続きで必要になります。
手続きを忘れてしまった場合
扶養から外れているにも関わらず届出が遅れた場合は、遡って資格を失います。
その期間中に保険診療などを受けていたときは、医療費等の返還請求をされる場合があります。
また、国民健康保険など別の医療保険への加入手続きを怠っていた場合、遡って加入することになります。
その際には遡った分の保険料が一括で請求されるので、空白期間が長いと多額の保険料を請求されることになります。
個人事業主が税法上の扶養から外れるタイミング
扶養親族になるための要件については先述しましたが、これらのいずれか1つでも満たさなくなった場合には扶養から外れることになります。
配偶者控除の要件も扶養親族とほとんど同じなので、同様に注意が必要です。
ここでは、個人事業主が税法上の扶養から外れるタイミングについて解説していきます。
合計所得金額が48万円を超えたとき
扶養親族の要件のうち、最も意識しておきたいのが所得金額の要件です。
個人事業主は給与所得者と比べて収入の変動が大きいため、特に注意が必要です。
扶養親族(配偶者)が個人事業主として事業収入のみ得ている場合
収入から経費を差し引いた金額が利益となりますが、これが「合計所得金額」にあたります。
したがって、利益が48万円を超えた時点で扶養から外れます。
扶養親族(配偶者)が事業収入と給与収入を得ている場合
個人事業主でありながらパートをしているような場合がこれに該当します。
給与収入からは給与所得控除として最大55万円を控除できるので、事業収入のみの場合とは計算が異なります。
事業の利益:20万円 パートの給料:80万円の場合
合計所得金額 = 20万円 + (80万円-55万円) = 45万円
このケースでは、所得が48万円以下なので扶養内となります。
なお、フリーランスの場合も、個人事業主と同様の考え方となります。
業務で得た収入は基本的に事業所得として扱われるため「事業収入のみを得ている場合」に該当します。
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個人事業主が税法上の扶養から外れた場合の確定申告
個人事業主が税法上の扶養から外れると、扶養者が扶養控除や配偶者控除を差し引くことができなくなるため、扶養者の所得税負担が大きくなることが考えられます。
また、被扶養者には住民税が発生することになります。
税法上の扶養から外れた場合には、特別な手続きはありません。
ただし、扶養者の年末調整または確定申告の際に、扶養控除や配偶者控除を適用しないように気を付けましょう。
扶養から外れたにも関わらず控除を適用すると、誤った年末調整が行われることになってしまい、確定申告で修正する必要が出てきます。
一度扶養から外れても再び戻ることは可能
もしも、収入が増えてしまい扶養を外れることになったとしても、要件さえ満たせば再び戻ることができます。
社会保険上の扶養
社会保険の扶養については「扶養に入ろうとする時点以降の1年間の見込み収入額」が基準となります。
1年間の見込み収入額は、現在の月収を12倍することで算出できます。
社会保険上の扶養から外れてしまったとしても、直近の月収が108,333円未満であれば年収130万円未満が見込まれるため、再び扶養の対象になります。
税法上の扶養
税法上の扶養については「その年の12月31日時点での状況」で判断されます。
ある年(1〜12月)の年収が増えたために控除対象から外れたとしても、翌年(1〜12月)に再び収入が減って要件を満たすようになれば、その年から扶養の対象に戻ることができます。
年単位で判定していくので、年の途中で変更がかかるわけではなく、年末調整や確定申告のタイミングで控除対象から削除されることになります。
まとめ
・所得48万円を超えると、税法上の扶養から外れる。
・社会保険上の扶養から外れたときは、早急に別の社会保険に入りなおす必要がある。
・税法上の扶養から外れたときは、急ぎの手続きは不要。年末調整等の際に控除から削除する。
・扶養から外れても再び入ることは可能。社会保険上と税法上では判定基準が異なるため要注意。
ここまで、社会保険上と税法上の扶養についてさまざまな観点から解説してきました。
個人事業主は、扶養から外れるタイミングや戻るタイミングに注意しながら、速やかに手続きをしていきましょう。
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