個人事業主で起業を考えている人にとって、資金調達は大きな壁のひとつです。
しかし、創業融資制度を利用することで、資金調達をする方法があります。
この記事では、個人事業主が創業融資を受けるために必要な情報やポイント、創業融資以外の資金調達方法などを詳しく解説していきます。
日本政策金融公庫や自治体が用意する融資制度についても触れ、創業融資についての理解を深めることができるでしょう。
この記事を参考に、創業に必要な資金調達の知識を身につけ、スタートアップ成功に向けて一歩踏み出してみましょう。
個人事業主が受けられる創業融資
個人事業主が創業時に必要とする資金を調達する方法のひとつに、創業融資があります。
創業融資には、日本政策金融公庫の融資や、自治体の制度融資があります。
そして、それぞれに、融資限度額や返済期間、利率、担保・保証人の有無などの異なる特徴があります。
ここでは、個人事業主が受けられる創業融資の種類や特徴について、詳しく解説します。
日本政策金融公庫の融資
日本政策金融公庫は、日本経済の発展と安定に資することを目的として、中小企業の業績向上、地域経済の発展などを支援しています。
日本政策金融公庫の創業融資には、以下のようなものがあります。
新創業融資制度
新創業融資制度は、日本政策金融公庫が新たに事業を始める個人事業主や事業開始後に2期の税務申告を終えていない方に提供する、融資制度です。
制度を利用するためには、創業時に自己資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できる必要があります。
担保や保証人は原則不要で、最大融資限度額は3,000万円(内訳は運転資金1,500万円)となっています。
利率は利用目的や返済期間によって異なります。
なお、法人が融資を受ける場合、通常は代表者が連帯保証人となりますが、新創業融資制度では代表者個人には責任が及ばないため、代表者が連帯保証人となる必要がありません。
しかし、代表者が連帯保証人となることも可能で、その場合は利率が0.1%提言されます。
新創業融資制度の利用には創業計画書の提出や事業計画の内容確認が必要ですが、新規創業者のための制度なので、一般的な金融機関で受ける融資に比べてハードルはとても低くなっています。
参考URL:日本政策金融公庫|新創業融資制度
挑戦支援資本強化特別貸付
「挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)」は、日本政策金融公庫から提供される融資制度の一つです。
スタートアップや新事業展開・海外展開・事業再生などに取り組む企業や個人事業主の、財務体質強化や民間金融機関からの資金調達の円滑化を支援します。
制度を利用するためには、地域経済活性化に貢献することが必要であり、税務申告を1期以上行い、原則として所得税等を完納していることが条件です。
最大融資限度額は7,200万円で、担保や保証人を必要とせず、無担保・無保証人で融資を受けることが可能です。
利率は業績に応じて変動するという特徴があります。返済期間は5年1ヵ月以上20年以内となっています。
参照URL:日本政策金融公庫|挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン)
自治体の制度融資
自治体も、個人事業主が創業時に利用できる融資制度を用意しています。
自治体によって具体的な条件や名称が異なりますが、ここでは代表的な2つの自治体融資について説明します。
小口フリーランス
自治体の制度融資における小口フリーランス向けの融資では、東京都の場合、融資限度額は最大2,000万円、返済期間は7年以内(運転資金)または10年以内(設備資金)です。
金利は0.10%~2.50%で、担保は原則として不要ですが、代表者連帯保証人が必要です。
東京都の場合、対象者は、都内に事業所がある中小企業者又は組合であり、信用保証協会の保証対象業種を営むことが条件となっています。
自治体の制度融資は、審査が一般的な銀行融資と比べて厳しすぎず、金利も低いため利用しやすいのですが、融資実行までに時間が必要で、3ヶ月程度かかることもあります。
利用したい自治体の情報を確認して、早めに申請することが大切です。
東京都制度融資
東京都制度融資は、東京都、東京信用保証協会、指定金融機関の協調によって実施されている制度融資です。
都内の中小企業者が、金融機関から融資を受けやすくなるようにすることを目的としています。
融資の種類は、小規模事業融資、女性起業家向け融資、海外展開支援融資、新規事業者向け融資、企業再生支援融資などがあり、それぞれ融資限度額や金利、返済期間が異なります。
また、東京信用保証協会の保証が必要となり、融資限度額に応じた保証料が必要となります。
さらに、融資を受けるには一定の条件があり、受け入れ可能な担保や財務状況、信用状況などが要求されます。
個人事業主が創業融資の審査を通過するためのポイント
創業融資を受けるためには、審査に通過する必要があります。
個人事業主が創業融資の審査を通過するためには、自己資金の準備、経験・能力、信用情報、公共料金の支払い、開業予定地のリサーチ、そして根拠のある事業計画の用意などが重要です。
ここでは、創業融資の審査を通過するためのポイントを詳しく解説します。
自己資金を準備している
創業融資を受ける際、金融機関は返済能力やリスクを評価するため、個人事業主が用意する自己資金の額に注目します。
一般的に、自己資金を用意できる割合が高ければ、融資を受けやすくなる傾向があります。
自己資金の準備ができない場合でも、無利息の借入制度を活用することで、自己資金を確保することができます。
自己資金の確保方法としては、創業者自身の資産や、友人や家族からの借入、クラウドファンディングなどがあります。
ただし、自己資金を充分に準備することができない場合でも、事業計画書を含めた融資申請書類の内容充実や、信用情報の維持など、他の審査項目の改善に取り組むことで、融資を受けやすくすることができます。
創業分野について最低1年半以上の経験がある
創業融資の審査基準の1つに、創業分野について最低1年半以上の経験があることが挙げられます。
この基準は、事業を開始する分野に関する知識やノウハウ、業界の動向やトレンドを理解していることが重要だからです。
審査では、過去の職歴や実績、資格などから、創業分野について適切な経験があるかどうかが判断されます。
そのため、創業を考えている場合は、まずは業界の知識を深め、経験を積むことが必要です。
経験が不足している場合は、業界の人脈を作り、アドバイザーに相談するなどして、不足分をカバーするようにしましょう。
このように、創業融資を受けるためには、自分の経験や能力をアピールできるような計画をしっかりと用意することが必要です。
過去の信用情報に傷がない
創業融資審査において、過去の信用情報も重要な判断基準の一つです。
個人事業主は、信用情報機関に加入している金融機関からの借り入れ履歴や延滞履歴、個人信用情報、債務整理の有無などが、事前に確認されます。
過去に支払い遅延や延滞、借金返済に困ったことがある場合は、信用情報が悪くなり、融資審査に落ちることも考えられます。
そのため、創業融資を考える場合には、さまざまな支払いの期日を守り、滞納をしないように心がけることが大切です。
公共料金や税金を滞納していない
創業融資の審査において、公共料金や税金の納付状況も重要な判断基準の一つです。
滞納している場合、返済能力に疑問があるとみなされ、融資審査に通過しづらくなります。
このため、創業前から公共料金や税金を滞納せずに、きちんと納付することが求められます。
滞納してしまった場合は、早急に納付するようにしましょう。
また、納付する際には、滞納していたことが原因で信用情報に悪影響を与えることがあるため、支払い済みだと証明ができるように、返済履歴などの記録を残しておくようにしましょう。
対策を講じることで、審査を通りやすくすることができます。
開業予定地を念入りにリサーチする
開業予定地のリサーチは、ビジネスプランの作成に欠かせないポイントの一つです。
地域の需要や競合状況、交通アクセス、地価などを調査することで、自分のビジネスが成功するかどうかの見通しを立てることができます。
また、地元自治体の支援制度や、周辺のビジネスネットワークを活用することで、ビジネスを成功に導くことができます。
リサーチはネットで調べるだけではなく、実際に現地を訪れることでより正確な情報を得ることができます。
開業予定地はビジネスにとって重要な要素であるため、慎重に選ぶことが大切です。
根拠のある事業計画を用意する
創業融資審査において、事業計画は非常に重要な要素の一つです。
事業計画は、開業後のビジネス展開のロードマップとして、融資申請において最も注目されます。
そのため、根拠のある事業計画を用意することが求められます。
事業の特徴や目的、市場規模や競合環境、商品やサービスの特長、マーケティング戦略、販売計画、人員配置などを具体的に記載し、細部まで綿密に計画を立てることが必要です。
また、経費や予算、利益計画も算出し、具体的な数字を示すことで、融資審査において評価される内容にしましょう。
個人事業主が日本政策金融公庫と制度融資を併用する場合の注意点
個人事業主が資金調達をする際、日本政策金融公庫の貸付や制度融資を利用することがあります。
両方の融資制度を併用することで、より多くの資金を調達することができるかもしれません。
しかし、同時に複数の融資を申し込むことには注意が必要です。
このセクションでは、個人事業主が日本政策金融公庫と制度融資を併用する場合に気をつけるべき注意点について説明します。
同じ期間内に申し込む
個人事業主が日本政策金融公庫と制度融資を併用する場合、注意点として、同じ期間内に申し込むことが必要です。
両方の融資制度に申し込むときは、各制度の申請書を同時期に提出することが必要です。
それぞれの審査結果が別々に出るため、時間に余裕を持って早めに申し込みを行うことが望ましいです。
設備資金の申込はどちらか片方だけにする
個人事業主が日本政策金融公庫と制度融資を併用する場合、設備資金の申込はどちらか片方だけにすることが重要です。
設備資金の重要性は高いですが、両方から同時に申込すると過剰な借入金額となり、審査通過率が下がることがあります。
そのため、どちらか一方の融資先に設備資金を申し込み、もう一方の融資先には事業資金や運転資金などの必要経費に絞って申し込むことが効果的です。
また、申込書類や事業計画書も、それぞれの融資制度に合わせた適切な内容を盛り込むことが重要です。
それぞれに適した事業計画書を作成する
日本政策金融公庫と制度融資は、それぞれ独自の審査基準を持っています。
そのため、どちらの融資も同時に受ける場合は、それぞれに合わせた事業計画書を作成する必要があります。
公庫は事業計画書の概要やキャッシュフロー表などが必要ですが、制度融資は詳細なビジネスプランが必要となります。
また、受け取る融資の用途によっては、どちらか片方の融資に絞って申し込む方が適切な場合もあります。
両方の融資を同時に受ける場合は、それぞれの金融機関に合わせた事業計画書を準備し、申請していくことが重要です。
個人事業主が創業融資以外で開業資金を調達する方法
個人事業主が開業資金を調達する方法には、創業融資以外にも様々な選択肢があります。
その中でも、家族や知人からの借入やクラウドファンディングは、比較的手軽な方法として知られています。
しかし、それぞれの方法には注意点があるため、資金調達を検討する際は事前にリスクを把握することが大切です。
家族や知人から借りる
個人事業主が創業融資以外で開業資金を調達する方法の1つは、家族や知人からの借り入れです。
融資より手続きが簡単で、金利や返済条件を自由に設定できるという利点があります。
ただし、貸し借りによって個人間の関係にトラブルが起こる可能性があることに注意をしましょう。
トラブルを回避するためには、金額や返済期間を明確にすることが重要です。
また、借入先が知人や家族であることを理由に、取り決めを軽視してしまうことは避け、誠実な姿勢で返済に取り組むことが大切です。
税金や法律についても、きちんと関連法令を調べるなど、注意が必要です。
クラウドファンディングをする
クラウドファンディングは、インターネットを通じて多くの人々に自分のビジネスプランやアイデアを共有し、支援を募る資金調達方法です。
個人事業主が開業資金を調達する手段としても有効で、資金調達だけでなく、市場調査やプロモーションにも利用することができます。
ただし、成功するためには魅力的なプランの提供やアピール力のあるコンテンツ制作が必要です。
また、クラウドファンディングで調達した資金には手数料がかかるため、運営会社やプラットフォームによって差がある手数料にも注意が必要です。
個人事業主が創業後一定期間が経過してから利用できる資金調達方法
個人事業主としての創業後、一定期間が経過してから利用できる資金調達方法には、銀行融資、信用金庫からの融資、補助金・助成金などがあります。
これらの資金調達方法は、一定期間以上の事業運営実績がある個人事業主が利用できるものであり、創業融資とは異なります。
このセクションでは、創業後一定期間が経過してから利用できる資金調達方法について、詳しく説明していきます。
銀行融資
個人事業主が創業後一定期間が経過してから利用できる資金調達方法として、銀行融資が挙げられます。
銀行融資は、金融機関からの融資で、多くの場合は個人事業主が事業の資金調達に利用する方法としてもっとも一般的です。
銀行融資の特徴として、長期的な資金調達が可能で、低い金利で借りられることが挙げられます。
ただし、融資額や返済期間によっては担保や保証人の用意が必要になることもあります。
また、個人事業主が銀行融資を利用するには、事業の安定性や返済能力などが信頼される必要があるため、融資を受けるためには手続きや審査が必要です。
信用金庫からの融資
信用金庫は、個人事業主向けの融資制度が充実しており、銀行に比べ審査が柔軟な場合があります。
また、地域密着型の金融機関であるため、地元の事情に詳しい担当者がいることが多く、相談しやすいというメリットもあります。
ただし、信用金庫によっては融資条件が厳しくなっている場合もあるので、複数の金融機関に相談して比較検討することが大切です。
とはいえ、信用金庫からの融資にも、個人保証や担保の提供が必要な場合があるため、事前にしっかりと準備をすることが必要です。
補助金・助成金
個人事業主が利用できる補助金・助成金は、銀行などからの融資が難しい場合には有用な資金調達手段となります。
例えば、補助金や助成金は、環境保全や地域振興など特定の目的に対して、一定の条件を満たす事業者に対して支給されます。
また、政府や自治体などが実施する支援制度を利用することも可能です。
借り入れではないため、受け取ることが出来れば資金繰りの大きな助けとなるでしょう。
ただし、補助金・助成金は、申請から支給までに時間がかかることがあります。
事前にしっかりと情報収集をして、申請期限や必要書類などについて把握することが重要です。
まとめ
- 個人事業主が創業後資金調達する方法には、銀行融資、信用金庫融資、補助金・助成金の3つがある。
- 創業時には日本政策金融公庫の融資制度を利用できる。
- 個人事業主が資金調達したいと考えるタイミングは、店舗や事務所、機材購入など事業の拡大時が多い。
- 補助金・助成金は、法人に比べて銀行からの融資を受けにくい個人事業主にとって重要な資金調達方法。
- 個人事業主が融資を利用する場合、事前にキャッシュフローを正確に把握し、返済計画を立てることが大切。
この記事では、個人事業主が創業融資を受ける方法について解説しました。
創業融資を受けるためには、自己資金の確保やビジネスプランの作成、審査基準の理解などが必要です。
また、創業融資以外にも、銀行融資や信用金庫からの融資、補助金・助成金などの資金調達方法も紹介しました。
これらの資金調達方法は、個人事業主が事業を拡大するために必要な資金を確保するのに役立ちます。
個人事業主として事業を展開する方は、まずは自己資金の確保や資金調達方法の理解をして、ビジネスをスタートさせる準備を整えてみてください。