個人事業主が事業を始めるときには、準備のためにお金がかかります。
開業にかかった費用は、通常「開業費」という勘定科目で経理処理をします。
しかし、いつまでの、どんな内容の費用が開業費として認められるのか、不安もあるのではないでしょうか。
本記事では、開業費の範囲や、計上方法、減税のポイントまで詳しく解説します。
ぜひ最後までお読みいただき、開業に役立つ知識を身につけてください。
個人事業主の開業費はいつまで支払った分が認められる?
まずは、個人事業主が開業のために支払った費用が、いつまで開業費として認められるのかについて、解説します。
実際に認められる期間や、必要となる手続きは、個別のケースによって異なります。
どうしてもわからない場合には、税務署への問い合わせや専門家の助言も活用しましょう。
年月が経ったものを開業費にする場合
開業前の準備にて、事業に直接関連し、事業のスタートに貢献した費用と説明することができるものであれば、理論上は何年前のものであっても開業費として認められます。
しかし、一般的には開業前6か月から12か月の間に支払ったものを開業費とする程度が無難だとされています。
支払ってから長い年月が経ったものを開業費として計上する場合は、開業のために要した費用であることを客観的に説明できるように、当時の領収書だけでなく、用途や事情を説明する文書などの資料を準備しておきましょう。
開業費の領収書は分けて保管
開業費として計上する支出の領収書は、開業費の内訳を明確に示す大切な資料となります。
開業後に支払った通常経費の領収書とは区別して、大切に保管しましょう。
開業費は、開業後も数年間にわたって確定申告で確認する可能性があります。
資料を別にしておくことで、将来の確認や税務申告時にも、スムーズに対応しやすくなります。
開業費とは
そもそも開業費とは、営業開始した開業日までに支払った、開業準備のためのすべての費用を指します。
開業費は、経費とは異なり、繰延資産という種類の科目です。
個人事業主は、この開業費を毎年12月31日の決算時に「開業費償却」という経費科目に振り替え、開業費の残高を減らしていきます。
開業費の償却は、5年間で均等に経費にする均等償却か、好きな金額を好きな年に経費にする任意償却、どちらかの方法を選択可能です。
任意償却を活用すれば、利益が出た年の節税をしやすくなります。
開業費の範囲
開業費には、以下のような費用が含まれます。
具体的には、開業する事業の業種や、その事業の性質によって異なる場合もあります。
- 広告宣伝費:開業時に宣伝や広告活動にかかる費用
- 研修費:開業に先立ち必要な研修や教育に関する費用
- 市場調査費:市場や競合調査にかかる費用
- 名刺や印鑑の制作費:事業活動に必要な名刺や印鑑の作成にかかる費用
- 設備や備品の購入費:オフィスや店舗の設備、備品の購入にかかる費用
以上のような、開業費より前に支払われた、開業に直接関連する費用が、個人事業主の開業費として認められます。
開業費にできないもの
開業費にできないものは、以下のような費用です。
- 営業開始後の恒常的な費用
- 10万円以上の固定資産
営業開始後の恒常的な費用
開業費は、営業開始前の準備期間に発生する費用のための科目です。
営業開始後に発生する、日常的な経費や事業の持続的な運営に関連する費用は、開業後の通常の経費となり、開業費には含まれません。
さらに、開業日より前に支払いをしても、開業日からその年末の確定申告までに販売された商品の仕入れ代金などは、その年の通常の仕入れ費用となり、開業費にはできません。
10万円以上の固定資産
固定資産とは、1年以上の長期間にわたって使用したり保有したりする資産のことです。
事業のために10万円以上の固定資産(例: 不動産、設備、車両)を購入した場合は、開業費ではなく、ひとつひとつの固定資産として、定められた年数と計算方法で償却をしていく必要があります。
開業費は、事業の立ち上げに必要となった費用をまとめる勘定科目です。
開業後の事業の運営にかかる恒常的な経費や、個別に償却方法が定められている10万円以上の固定資産は、開業費の範囲外となります。
開業費の減価償却方法
開業費という繰延資産は、確定申告の際に減価償却を行い、その年の経費に追加して残高を減らしていきます。
このセクションでは、減価償却の方法とメリットについて解説します。
5年に分けて毎年均等額を経費計上
均等償却は、5年間にわたって均等に経費として計上する償却方法です。
この方法では、開業費を初年度から5年にわたって、均等に分割し、毎年一定の金額を経費として計上します。
好きな年に好きな金額を経費計上
任意償却は、任意の年に、0円を含めた任意の金額、経費として計上する償却方法です。
こちらの方法を採用すれば、利益が出た年に経費を加算して、課税所得額を効率的に抑えることが可能になります。
経費にすると節税に
開業費を償却し、経費として計上すると、その年の課税所得が減少します。
これにより、所得税の負担が軽減され、節税効果があります。
とくに任意償却では、意識的に経費計上を活用することで、収益を多く手元に残すことができるでしょう。
損をしないよう開業日を決めよう
開業費を計上する際に大切な情報となる開業日は、どのように決めるのがいいのでしょうか。
特にルールはありませんが、初めての売上が出る直前に設定するのがおすすめです。
売上は営業を開始してから発生するものなので、正しい会計処理のためにも、開業日は売上日よりも前にすべきです。
しかし、開業関係の経費は、条件が合えば開業費として計上でき、任意償却にまわせるため、可能であれば開業日前に支払って開業費としたいところです。
よい時期を開業日とするため、開業費として計上したい費用の内容や支払日を整理して、計画的に開業日を迎えましょう。
まとめ
- 開業費として認められる期間に明確なルールは無いが、一般的には開業前6か月から12か月が妥当。
- 開業日を適切に設定することで、開業時の支出を開業費に含め、任意償却を活用しやすくすることができる。
- 開業費の領収書は他のものと分けて保管し、将来の確認や税務申告時にスムーズに対応できるようにする。
- 開業費には、営業開始後の恒常的な費用や、10万円以上の固定資産購入費用は含まれない。
- 開業費は、5年間で均等償却をするか、任意償却をすることができる。
この記事では、個人事業主の開業費について、詳しく解説しました。
開業費として認められる期間や範囲、計上方法、減税のメリットなどについて理解して、節税のチャンスを逃さず、成功への一歩を踏み出しましょう。