個人事業主が派遣社員を掛け持ちしたら年末調整が必要?

コラム

個人事業主でありながら、事業による収入に余裕がなく、副業を考えている人もいるのではないでしょうか。

実際に、本業と掛け持ちで派遣社員として働いている人も少なくありません。

では、個人事業主をしながら派遣社員を掛け持ちした場合は、年末調整が必要になるのでしょうか?

確定申告はどうするのか、といった疑問も出てきますよね。

今回は、個人事業主が派遣社員を掛け持ちした際の年末調整について詳しく解説していきます。

また、掛け持ちにあたってのメリット・デメリットについてもあわせて紹介します。

この記事を読むと、個人事業主が派遣社員を掛け持ちした際の不安が解消されますので、ぜひチェックしてください。

個人事業主と派遣社員の違い


個人事業主と派遣社員では、就業形態や収入、社会保険などの違いがあります。

それぞれの違いを見ていきましょう。

個人事業主とは

そもそも個人事業主とは、特定の会社や団体に雇用されず、個人で事業を営む人を指します。

職種は、飲食店の経営者や、エンジニア、Webデザイナー、ライターなどさまざまです。

個人事業主の契約

一般的に個人事業主は、企業と雇用関係を結ぶのではなく、取引先と「請負契約」や、「業務委託契約」を結ぶのが特徴です。

個人事業主の収入

個人事業主の収入は、取引先と結んだ契約に基づき、求められる仕事を納品することで受け取る対価であり、受注した案件単価や数によって変わります。

高単価の案件を受注することができれば、その分収入をアップさせることが可能です。

個人事業主の社会保険

基本的に、個人事業主は国民年金と国民健康保険に加入します。

ただし、会社員を退職後、期日までに手続きを行えば、会社員時代に加入していた健康保険を継続させることができます。

派遣社員とは

派遣社員とは、人材派遣会社と雇用関係を結び、派遣先で働く人を指します。

実際に働く企業との雇用関係はないのが特徴です。

派遣社員の契約

派遣社員は、人材派遣会社と雇用関係を結んだ上で業務を行います。

そのため、派遣社員の給料支払いや福利厚生、有給付与、勤怠管理などは全て人材派遣会社が担います

派遣社員の収入

個人事業主と異なり、派遣社員の給与形態は時給制か、月給制の場合が多いです。

そのため、短期間で大幅に収入をアップさせることは難しいでしょう。

定められた勤務時間や働く日数によって収入が変化するのが特徴です。

派遣社員の社会保険

派遣社員の場合、一定の条件を満たしていていれば、民間企業で働く人が加入する厚生年金保険や健康保険に加入できます。

加入条件を満たしていない場合は、国民年金と国民健康保険に加入します。

個人事業主は派遣社員を掛け持ちしてもいい?


基本的に、個人事業主が派遣社員を掛け持ちしても法的な問題はありません

個人事業主は、どこにも雇用されていない状態なので、個人事業を行いながら派遣会社と雇用関係を結ぶことができます。

個人事業主が派遣社員を掛け持ちした場合の年末調整は?


個人事業主が派遣社員を掛け持ちしている場合、年末調整は人材派遣会社が行ってくれます

そのため、派遣会社から受け取る給与分は自分で申告を行う必要がありませんが、個人事業主で得た事業所得の報告は自分で行う必要があります。

ただし、入退社の時期などで派遣会社が年末調整を行ってくれない場合があります。

この場合は、個人事業主で得た事業所得を確定申告する際に、合わせて給与所得分の申告も必要になるので注意しましょう。

個人事業主が派遣社員を掛け持ちした場合の確定申告手順


派遣の仕事を掛け持ちしている個人事業主は、事業所得が20万円を超えると、事業所得による所得税の確定申告を行う必要があります。

スムーズに確定申告を行うために、個人事業主で得た報酬はその都度記録しておくことがおすすめです。

確定申告の手順は次の3ステップです。

派遣会社から源泉徴収票をもらう

まずは、雇用契約を結んでいる人材派遣会社から、源泉徴収票をもらいましょう。

確定申告を行う際に、源泉徴収票の添付は不要ですが、派遣業務で得た給与所得を確認するために必要です。

確定申告に必要な書類を用意する

確定申告には、必要な書類がいくつかあります。

白色申告を行う場合と青色申告を行う場合とで、必要書類が異なるので注意しましょう。

白色申告に必要な書類は以下3つです。

  • 確定申告書B
  • 収支内訳書
  • 所得控除の添付書類

青色申告に必要な書類は以下3つです。

  • 確定申告書B
  • 青色申告決算書
  • 所得控除の添付書類

確定申告書Aは会社員や年金受給者が使用するもので、個人事業主が使用するのは確定申告書Bです。

期間内に確定申告をおこなう

所得税の確定申告の期限は、原則、毎年2月16日〜3月15日です。

期日までに必要書類を所轄の税務署にe-Tax(オンライン申告)または、郵便か持参での申告が必要です。

納税が必要な場合は、金融機関の口座振替、窓口支払い、電子納税(e-Taxより)のいずれかの方法を選択する必要があります。

源泉徴収税額を支払い過ぎている場合は、指定口座に還付金が支払われます。

確定申告は、期限内に間に合わなかった場合や、申告を忘れてしまった場合はそれぞれにペナルティがあるので注意しましょう。

(参考:国税庁|No.2024 確定申告を忘れたとき

個人事業主が派遣社員を掛け持ちするメリット


個人事業主が派遣社員を掛け持ちするメリットは次の4つです。

収入が安定する

個人事業主が派遣社員を掛け持ちするメリットの1つは、安定した収入が期待できる点です。

個人事業主による事業所得は、毎月一定した報酬を得ることが難しい報酬形態です。

一方、派遣社員は少なくとも数ヶ月分の仕事を確保できるので、収入の目処が立ちやすいでしょう。

そのため、事業所得と給与所得を掛け合わせることで、安定した収入の確保が期待できます。

社会保険に加入できる

個人事業主が派遣社員を掛け持ちするメリットの2つ目は、一定の基準を満たせば、派遣会社で社会保険に加入することができる点です。

社会保険に加入すると、保険料は会社と折半になりますし、けがや病気で仕事ができないときには傷病手当金が受けられるなど、充実した保障があるのが大きなメリットです。

社会保険には、健康保険・厚生年金保険・介護保険・雇用保険・労災保険があり、万が一の備え以外に、将来の備えを増やすことにもつながります。

給与所得控除を活用できる

個人事業主が派遣社員を掛け持ちするメリットの3つ目は、収入金額に応じて給与所得控除が受けられる点です。

個人事業主は、売上から経費を引いた部分が所得になり、その金額に所得税が課せられます。

しかし、青色申告をすれば、課税される所得を減額する青色申告特別控除を受けることができます。

さらに派遣社員を掛け持ちしていれば、給与所得控除も適用されて所得税の計算が有利になります。

スキルアップできる

個人事業主が派遣社員を掛け持ちするメリットの4つ目は、スキルアップができる点です。

個人事業主として活動していると、1つの業務に集中して、自身のスキルアップの機会を逃してしまう場合があります。

派遣社員として活動することで、本業では取り組まない色々な業務に携わることができたり、独学では難しいスキルの取得を働きながら身に付けることが可能です。

個人事業主が派遣社員を掛け持ちするデメリット


個人事業主が派遣社員を掛け持ちするデメリットは、時間管理や体調管理の難しさが挙げられます。

それぞれ見ていきましょう。

時間管理が難しくなる

派遣社員として働く場合、一定の時間拘束されるので、個人事業主としての活動の時間が制限されてしまいます。

事業を運営できる時間帯が限られる場合には特に、派遣社員としての労働時間との調節がうまくできない可能性があるでしょう。

体調を崩しやすくなる

派遣社員と個人事業主を両立することで、働きすぎにより体調を崩してしまうケースがあります。

そのため、週に1日は休日をつくったり、1日の稼働時間を決めたりと、自分で意識をして体調管理を行うことが大切です。

個人事業主が派遣社員の掛け持ちを両立させるコツ3選


個人事業主が派遣社員の掛け持ちを両立させるコツは3つあります。

それぞれ解説していきます。

将来的にはどちらかに絞る

将来的には、今行っている兼業をどちらか一方に絞るのがおすすめです。

なぜなら、個人事業主が派遣社員として働いている場合、事業の時間を確保できず、かえって収入が上がらないという問題に陥る可能性があるからです。

将来的に事業所得をアップさせていきたいという思いがある方は、個人事業主として生計を立てていくキャリアプランを考えておくことが必要です。

派遣業務は個人事業の閑散期を活用する

派遣社員として働くのは、メインで行う個人事業の閑散期を活用するのがおすすめです。

個人で事業を行っていると、繁忙期と閑散期があります。

閑散期で余裕がある期間に派遣社員として働くと、仕事の負担を大きくしすぎることなく、副業のメリットを得られるでしょう。

派遣の日数を決めておく

個人事業主が派遣社員を掛け持ちする場合、週何日と出勤日数を固定する方法がおすすめです。

そうすることで、本業と副業とのメリハリをつけながら、安定した収入を確保できます。

また、個人事業に支障がなければ、土日に派遣業務を行うのもおすすめです。

なぜなら、土日は人手不足であることが多いので、派遣の需要が高くなるからです。

なお、派遣社員は雇用期間が決められているため、計画的に新しい仕事を探しておくことも必要です。

まとめ

  • 個人事業主と派遣社員は、就業形態収入社会保険の面で違いがある
  • 個人事業主は派遣社員を掛け持ちしても法的問題はない
  • 個人事業主が派遣社員を掛け持ちしている場合、給与収入の年末調整は派遣会社が行ってくれる
  • 個人事業主が派遣社員を掛け持ちした場合の確定申告手順は3つ
  • 個人事業主か派遣社員を掛け持ちするメリットの1つは、安定した収入を得ることができる点

今回は、個人事業主が派遣社員と掛け持ちした際の年末調整の必要性について紹介しました。

確定申告の手順やメリット・デメリットをしっかり押さえると、個人事業主が派遣社員を掛け持ちした際の不安が解消されるでしょう。

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