ピラティスは少ないスペースで開業できることや、開業資金が比較的かからないことで、開業のハードルが低い事業です。
ピラティスで独立開業する場合、「資格は何か必要なのか」「具体的にどのように準備すればよいのか」などわからない点も多いのではないでしょうか。
本記事では、ピラティスで開業する際に必要な資格や手続きについて解説します。
開業資金の準備や資金の調達方法、ピラティススタジオを成功させるポイントについても解説しますので参考にしてください。
ピラティスで独立開業できる?
ピラティススタジオは資格がなくても独立開業できます。
レッスンをおこなう場所とヨガマットがあれば始められるため、独立開業のハードルが低いビジネスのひとつです。
ただ開業に資格がいらないとはいえ、ピラティスは体の動作機能を改善するためのトレーニングですので、体のしくみや適切な体の動かし方、正しい姿勢、筋肉などを勉強しておく必要があります。
ピラティスの民間資格には、以下のようなものがあります。
- BASIピラティスの各種資格
- PHI Pilates Japanの各種資格
- JADPのピラティスインストラクター資格
- IBMAのピラティスインストラクター資格
- JAPICAのピラティス指導者資格
初心者向けにピラティスの基本から学べる資格や、解剖学・姿勢のチェック・呼吸法を体系的に学べる資格もあります。
費用や時間はかかりますが、ピラティスで事業をおこなうのであれば資格を持っておくと集客に役立ちます。
ピラティススタジオで独立開業する方法
ピラティススタジオで独立開業する場合には、以下の4つの方法があります。
自宅で開業する
自宅の部屋が空いていれば、ピラティススタジオを自宅で開業することができます。
テナントやスタジオを借りずに自宅をそのまま使えば、初期費用0円で開業が可能です。
毎月の家賃もかからないため、ランニングコストを最小限に抑えることができます。
ピラティススタジオを自宅で開業する場合にかかる費用の目安は以下のとおりです。
レッスン料金の相場 |
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初期費用 |
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必要なもの |
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受け入れ可能な人数 |
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壁紙を張り替える場合の内装費用は約50万円、近隣への音漏れを防ぐための防音工事をする場合は別途100万円程度かかります。
自宅で開業すれば、レッスン時間を自由に決めることができます。
レッスンスタジオを予約する必要がないため、自分の都合で時間を設定できたり、お客様のニーズに合わせた柔軟な対応もできたりします。
一方、自宅での開業はレッスンスタジオの広さが確保しにくいため、大人数でレッスンはできません。
利用人数が増えてきた場合は、開業場所を変更する必要があります。
自宅で開業すると住所などの個人情報が知られるリスクもあるため、よく検討しましょう。
テナントを借りる
ピラティスで独立開業するには、テナントをスタジオとして借りる方法があります。
テナントを借りることで、大人数に対応したレッスンをおこなうことができるため、収益性の向上が見込めます。
人の集まりやすい場所を選んだり、広いスペースを利用して大きなマシンを取り入れたりすることも可能です。
他の開業方法と大きく違う点は、テナントの契約費用や毎月の家賃が必要になることです。
テナントを借りて開業する際の費用は以下のとおりです。
レッスン料金の相場 |
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初期費用 |
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必要なもの |
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受け入れ可能な人数 |
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テナントを借りると、コンセプトに合わせたスタジオづくりができたり、マシンピラティスの導入が可能になったり、店舗を構える信頼性が向上したりと、さまざまなメリットがあります。
しかし、初期費用や毎月のランニングコストを上回る利用客が必要になります。
自宅開業が軌道に乗ってきた場合や、ビジネスとしてしっかりと利益が見込める場合にテナント開業を選択するとよいでしょう。
毎回スタジオを借りる
ピラティスで独立開業する場合、毎回スタジオを借りる方法があります。
その都度スタジオを借りてレッスンをおこなえば、テナントの賃料や備品代がかからず、初期費用はほぼ0円で済みます。
ランニングコストは、スタジオ利用料や広告宣伝費のみで、低リスクで開業できる方法です。
通勤帰りに利用しやすい場所など、ニーズがありそうなレッスンスタジオを借りれば、一定の利用客を見込める可能性もあります。
毎回スタジオを借りて開業する際の費用は以下のとおりです。
レッスン料金の相場 |
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初期費用 |
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必要なもの |
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受け入れ可能な人数 |
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毎回スタジオを借りる方法には、スタジオをおさえる手間がかかることや、レッスンのたびに準備や撤収をしなければならないことなどのデメリットがあります。
しかし、スタジオによっては、決まった曜日や時間で固定をして利用ができる場合もあります。
レッスン回数が多いのであれば、定期利用に対応しているスタジオを選ぶとよいでしょう。
オンライン配信をする
ピラティスを独立開業する場合、オンライン配信で開業する方法もあります。
家にいながら受講ができるので、忙しい方や直接人と会わずにレッスンを受けたいという方に需要があります。
オンライン配信で開業する場合、重要なのは撮影機材と配信環境です。
部屋が薄暗くてよく見えなかったり、レッスン中に音声や配信が途絶えたりするトラブルがあると、利用者数に大きく影響します。
オンライン配信で開業する際の費用は以下のとおりです。
レッスン料金の相場 |
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初期費用 |
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必要なもの |
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受け入れ可能な人数 |
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オンラインレッスンで重要な機材は、約10万円〜20万円でよい音質・画質のものを揃えることができます。
ただし、オンライン配信は開業のコストはあまりかからない分、客単価も低くなります。
オンライン配信で開業する場合は、他のレッスン方法とあわせておこなうとよいでしょう。
ピラティススタジオの独立開業に必要なもの
ピラティススタジオの独立開業に必要なものは以下の3つです。
大きな鏡
ピラティスでは全身が映る大きな鏡で自分の動きや姿勢を確認します。
そのためスタジオの壁に鏡を取り付ける必要があります。
部屋の広さやレッスンの人数によって必要な大きさや枚数が変わりますが、目安としては120×180センチメートルの鏡1枚で、約60,000円の費用がかかります。
また地震などの災害を想定して、鏡は耐久性があり割れにくい素材で作られているものを選びましょう。
ヨガマット
ヨガマットは利用者が持参する場合が多いですが、スタジオに体験者用などを用意しておく必要があります。
ピラティスのトレーニングでは、地面に対するクッション性が重要であるため、ある程度厚みのある10ミリメートル以上がおすすめです。
マットは1枚3,000円くらいで揃えるとよいでしょう。
レッスンで使用する器具
ピラティスでは、マットピラティスかマシンピラティスかによって、以下のような器具が必要になります。
レッスン内容 | 使用する器具 |
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マットピラティス | マットのみ |
マシンピラティス | リフォーマー、キャデラック、チェア、バレルなど |
マットピラティス
マットピラティスを専門でおこなう場合は、マットさえあれば開業ができます。
初期投資が少なく済むため、開業のハードルは低くなります。
マシンピラティス
マシンピラティスをおこなう場合は、以下のような専用器具が必要になります。
- リフォーマー
フレーム上に可動性のキャリッジと呼ばれるベッドがあり、さらにスプリング・ストラップ・バーがついているマシン。スプリングを活用することで、体への負荷の調整を実現する。また仰臥位(仰向け)・座位・立て膝・立位などさまざまな姿勢でエクササイズをおこなえる。 - キャデラック
横になって安定した体勢をとりながら、スプリングで負荷をかけてインナーマッスルを鍛えることができるマシン。左右をバラバラに動かすなど、アクロバティックなエクササイズも可能。 - チェア
いすの座面に可動性のペダルがあり、座った状態や立った状態、寝た状態でエクササイズが可能。足や股関節を強化するフットワークや腹部で体を支える腹筋のワーク、肩や腕のインナーマッスルを鍛えるアームワークなど、細かい部位をより細かく正確に動かすことが求められる中級者以上の方に最適なマシン。 - バレル
カーブの部分を利用して背骨を伸ばす姿勢を取るなど、上半身を柔軟にするポーズに利用しやすいマシン。多くのバレエダンサーから好まれ、パフォーマンス向上に役立っている。
マシンは1台約30万円以上するため、マシンピラティスをおこなう場合は初期投資がかかることを計算しておきましょう。
ピラティススタジオの独立開業に必要な資金
ピラティススタジオの独立開業資金は、自宅でおこなう場合とテナントを借りる場合とで、数百万円以上の差があります。
独立開業に必要な資金は、以下のとおりです。
- 賃貸料・賃貸初期費用
- ピラティス器具
- 内装費用
- 広告宣伝費
- 運転資金
必要になる資金は幅があるため、希望する開業方法にあわせて資金を準備する、もしくは自己資金や融資などの範囲内で開業方法を選ぶことになります。
ピラティススタジオの独立資金を調達する方法
ピラティススタジオの独立資金を調達する方法には、以下の3つがあります。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫の新規開業資金は、女性や若者、シニアなどを含め、幅広い方に向けた創業・スタートアップを支援する融資制度です。
融資の対象は、「新たに事業を営もうとする事業について適正な事業計画を策定し、当該計画を遂行する能力が十分あると認められる」場合に限られます。
審査に通ると、運転資金や設備資金など限度額7,200万円(うち運転資金4,800万円)まで融資を受けられます。
(参考:日本政策金融公庫|新規開業資金)
創業助成事業(東京都)
創業助成事業は、東京都で開業を予定している方、創業5年以未満の事業者を対象に、人件費などの必要経費を上限300万円助成する事業です。
その他にも、自治体ごとにさまざまな創業者向け補助金・給付金があり、随時募集があります。
各自治体ホームページ、またはJ-Net21で一覧が紹介されていますので、活用できる制度がないか、新しい情報をこまめに確認することをおすすめします。
(参考:TOKYO創業ステーション|創業助成事業)
小規模事業者持続化補助金(一般型)
全国商工会連合会の小規模事業者持続化補助金(一般型)は、従業員が20人以下の小規模事業者を対象とした補助金です。
補助金の申請には、「経営計画書・補助事業契約書の作成」、管轄の商工会議所に依頼し「事業支援計画書」交付をしてもらう必要があります。
審査通過後に経営計画に基づいた事業を実施・確認が終了すれば、その経費の3分の2(上限200万円)が補助されます。
ピラティススタジオの独立開業を成功させるコツ
ピラティススタジオの独立開業を成功させる4つのコツは以下のとおりです。
ターゲット層を明確にする
ピラティススタジオの独立開業を成功させるためには、まずターゲット層を明確にしましょう。
以下の項目についてアンケートを取り、利用者のゴールや需要を調査することが重要です。
- 年齢・性別
- 住んでいるエリア
- 仕事
- ピラティス歴
- レッスンの頻度
- 興味のあるもの
- 悩んでいること
アンケート方法には、Twitterやココナラ、クラウドワークスなどを利用する方法があります。
ターゲット層を明確にすることで、需要のあるサービスを作り上げることができます。
内装を工夫する
ピラティススタジオは内装にこだわり工夫してみましょう。
清潔感があってリラックスできる内装は、利用者に与える印象を決定する大きな要素です。
親しみやすいスタジオにしたい場合は、白などを基調とした内装にすると開放的で明るい雰囲気になります。
また観葉植物や花などを置くと、ナチュラルな雰囲気になりリラックス効果も期待できます。
直接触れるフローリングは、とくに心地よい質感のものを選びましょう。
リピーターを増やす努力をする
ピラティススタジオの独立開業を成功させるためには、リピーターを増やす努力が重要です。
誰でもできるおすすめの方法は「顧客管理リスト」の作成です。
以下の項目で、顧客のけがや持病、体の悩みについて知っておくと危険をあらかじめ回避できます。
- 名前
- 仕事
- 趣味
- けが歴
- 苦手な体の使い方
- 持病
- 職業病
- 疲れやすい部分
顧客のなかには、自分のことをあまり話したくない人もいます。根掘り葉掘り聞くことはやめましょう。
名前と顔をしっかり覚え、「◯◯さん、今日は体調はいかがですか?」とコミュニケーションをとり「自分のことを覚えてくれている、気にかけてくれている」という信頼を重ねていきましょう。
集客方法を複数用意する
ピラティススタジオで独立開業を成功させるには、集客方法を複数用意する必要があります。
ピラティススタジオの集客方法は以下の3つです。
- ホームページ
- チラシやフリーペーパー
- SNS
まずは、ピラティスレッスンに関する情報を盛り込んだホームページを作成します。
雰囲気がわかるような写真やプロフィールを載せて、「ここでピラティスレッスンを受けてみたい!」と思ってもらえる、魅力的なホームページを準備しましょう。
地域から集客したい場合は、チラシやフリーペーパーを活用する方法もあります。
無料体験レッスンなどでアピールすると、そこから定期利用につながる可能性もあります。
SNSからの集客は、ハッシュタグをつけて、ピラティスに興味がある方とオンラインで交流する方法です。
レッスンの内容を写真や動画でこまめに発信したり、プロフィールも充実させておきましょう。
ピラティスレッスンに興味を持ってくれた方が詳しい情報を集められるよう、プロフィールにはホームページのリンクを忘れずに貼ることがポイントです。
まとめ
ピラティスで独立開業するための方法について解説しました。
まとめは以下のとおりです。
- ピラティススタジオは資格がなくても独立開業できる
- ピラティススタジオで独立開業する方法は、自宅開業する、テナントを借りて開業するなど
- ピラティススタジオで独立開業する場合、必要なものは大きな鏡、ヨガマットなど
- ピラティススタジオの独立資金を調達する方法は、政策金融公庫で融資、創業助成事業に申請など
- ピラティススタジオの独立開業を成功させる方法は、ターゲット層を明確にすること、内装を工夫することなど
ピラティスで開業する際は、開業方法や用意するものを確認し、資金の確保、集客をするなど、やるべきことがたくさんあります。
いきなりテナントを借りるのはリスクが高いため、ビジネスに慣れるまでは自宅開業やスタジオを借りるなど、小さい規模から始めてリピーターの獲得を目指しましょう。