セクハラの基準について、皆さんは正確な内容を把握できているでしょうか。
セクハラは国が定めている定義があり、ハラスメントかどうかを判断する基準になります。
不利益を被った場合や未然に防ぎたい人は、把握しておく必要があるでしょう。
この記事ではセクハラの定義や種類、実際の対処法を解説します。
セクハラとは?
セクハラについて知る際、まずは国の定義の理解が必要です。
ハラスメントだと思っていなかったことが、該当する可能性があるかもしれません。
ここでは、厚生労働省によるセクハラの定義を解説します。
セクハラの定義
厚生労働省のいう、セクハラの定義は以下の通りです。
職場において行われる労働者の意に反する性的な言動により、労働者が労働条件について不利益を受けるか、就業環境が害されることをいいます。
職場とは労働者が通常働いている場所に加え、取引先や出張先なども含まれます。
退社後の飲み会に関しては、職務との関連性や強制力があったかなど個別の判断が必要です。
労働者とは事業主に雇用されている人のことで、正社員だけでなくパートタイマーや契約社員も該当します。
派遣社員の場合は在籍している会社と実際に働く職場の両雇い主がセクハラについての措置を講じなければなりません。
性的な言動とは、卑猥な発言や必要以上に体をさわる行動のことです。
直接的な言動でなくても、ヌード写真の掲示のような間接的な内容も含まれます。
セクハラの範囲を考える際、労働者が不快に感じたかどうかが判断基準です。
自分ではいやがらせだと思っていなくても、相手の意に反している場合は該当する可能性があります。
また異性に限らず同性に対する行為もセクハラにあたるので、言動には注意が必要です。
<参考>
厚生労働省:心の耳
厚生労働省:職場のセクシュアルハラスメント対策はあなたの義務です!!
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/00.pdf
そもそもハラスメントとは
ハラスメント(harassment)は、悩ますことやいやがらせの意味を持つ単語です。
広義では人権侵害の意味合いがあり、性別や年齢、宗教、人種、民族、セクシュアリティなどに関する言動で相手を不快にしたり、傷つけたりする行為を指します。
近年、日本社会ではセクハラ以外にもパワハラやマタハラのような職場での不当な扱いが深刻です。
いやがらせ行為を防ぐために法規制がなされていますが、依然としてなくならない職場も少なくありません。
セクハラの種類
セクハラは職場で労働者がどのような状況下で巻き込まれたかにより、2種類に大別されます。
男女雇用機会均等法でいやがらせ防止措置を講ずるように義務付けられている、代表的な分類です。
ここではセクハラの種類について、国の定義を元に解説します。
<参考>
厚生労働省:明るい職場応援団
対価型
厚生労働省では、セクハラの類型の1つを対価型として挙げています。
労働者の意に反する性的な言動に対して拒否や抵抗をしたことにより、その労働者が解雇、降格、減給、労働契約の更新が拒否される、昇進・昇格の対象から除外される、客観的に見て不利益な配置転換をされるなどの不利益を受けることをいいます。
社長から性的な要求をされたので拒否したら解雇されたや、上司に体をさわられたので抵抗したら、異動を命じられたなど、セクハラを拒否した結果、不利益を被ることが対価型です。
環境型
国は、もう一方のセクハラの類型を環境型としています。
労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなり、労働者の能力発揮に重大な悪影響が生じるなど、その労働者が就業するうえで見過ごせない程度の支障が生じることをいいます。
職場内で胸や二の腕を度々さわってくるので続くのかと思うと仕事が手につかないや、同僚がプライベートの性的な情報を流してくるので苦痛だなど、性的な言動が業務に支障をきたすのが環境型です。
対処法
セクハラに対処するには、対応策を作っておく必要があります。
会社の姿勢と個人の努力がハラスメントの防止に繋がるためです。
ここでは、企業と個人ができるセクハラ対処法を解説します。
企業ができる対処法
まずは、セクハラが職場で起こってはいけないという周知啓発が基本です。
就業規則などにハラスメント防止の方針を記載するなど、会社としての姿勢を掲げる必要があります。
方針で社内のセクハラ対応窓口を明確にしておくと、安心感にも繋がりそうです。
社内で研修会や講習会を定期的に行うと、当事者意識が芽生えるとともに、より理解を深められるでしょう。
一方で、被害が起こってからの対処についても策定する必要があります。
被害者への迅速な事実確認や心のケア、加害者の処分や両者のプライバシー配慮などについてです。
一度起きたことがまた繰り返されないよう、再発防止策を啓発する流れまでの整備が求められるでしょう。
個人でできる対処法
会社だけでなく個人も対応を意識することで、セクハラ被害を抑制する効果が高まります。
まず相手の言動が不快に感じたら、拒否の姿勢を明確にすることが必要です。
主語をあなたではなく私にして伝えると、相手を過剰に刺激することを防げます。
たとえばあなたのその言い方が不快ですではなく、そう言われると私は悲しいです、私は困りますなどです。
また、周囲に仲間をつくってお互いに協力し合うことも有効です。
一人で行動させずに必ず同行者をつけるなど、まわりに目があることで抑止力を高められます。
セクハラ以外のハラスメント
ハラスメントとされている行為は、セクハラ以外にも存在します。
近頃は不当な言動を受け、精神的に追い詰められる人が後を絶ちません。
ここでは、セクハラ以外の代表的なハラスメント3つを解説します。
パワハラ
以下は、厚生労働省が定めるパワハラの定義です。
職場のパワーハラスメントとは、職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるものであり、①から③までの3つの要素をすべて満たすものをいいます。
①優越的な関係を背景とした言動
労働者が業務上拒否できない立場の人から、パワハラを受けることをいいます。
上司はもちろん、知識や経験が豊富で仕事のために協力しなければならない部下も対象です。
②業務上必要かつ相当な範囲を超えた
業務上明らかに必要性のない言動をいいます。
ただし、判断には状況や頻度などケースごとの考慮が必要です。
③労働者の就業環境が害される
不快な言動による身体的・精神的苦痛で労働者が能力を発揮できないことです。
状況の判断には、平均的な労働者の感じ方が考慮されます。
<参考>
厚生労働省:明るい職場応援団
モラハラ
モラハラの定義は、以下の通りです。
言葉や態度、身振りや文書などによって、働く人間の人格や尊厳を傷つけたり、肉体的、精神的に傷を負わせて、その人間が職場を辞めざるを得ない状況に追い込んだり、職場の雰囲気を悪くさせることをいいます。
パワハラと同様に、うつ病などのメンタルヘルス不調の原因となることもあるようです。
モラハラはパワハラのように職務上地位の高い人からだけではなく、同僚からも受けることがあります。
具体的な例をあげると、挨拶を無視するや社内のイベントに呼ばない、暴言を浴びせるなどです。
<参考>
厚生労働省:こころの耳
マタハラ
マタハラとは妊娠・出産・育児休業などに対するハラスメントのことで、以下のように定義されています。
職場において行われる上司・同僚からの言動(妊娠・出産したこと、育児休業、介護休業等の利用に関する言動)により、妊娠・出産した女性労働者や育児休業・介護休業等を申出・取得した男女労働者の就業環境が害されることをいいます。
職場とは、普段労働している場所や職務に関連する飲み会などのことです。
労働者は正社員、パートタイマーなど職種に関係なく雇用されている人すべてを指します。
労働者の意図を組まない言動はハラスメントですが、業務上必要な変更について相談することは該当しません。
たとえば本人に意欲はあるが、明らかに体調不良なので業務負担軽減の打診をするなど。
<参考>
厚生労働省:明るい職場応援団
セクハラの具体例
セクハラの定義がわかったところで、次は具体例が気になる人も多いでしょう。
ハラスメントは勤務時間外に起こるケースもあるので、パターンを知っておくと対策に活かせそうです。
ここでは、職場内・外で発生するセクハラの具体例を紹介します。
職場内・外で起こるセクハラ
職場内では肩や髪をさわられたり、まだ結婚しないのかと声をかけられたり、勤務中の言動に苦痛を受けるケースが多くあります。
上司から性的な関係を求められ、断ったら仕事をもらえなくなったなど、拒否するとさらに不当な扱いを受けるパターンも少なくありません。
また、職場の人たち同士が性的な会話をするなどの間接的な行動も、セクハラに該当します。
一方職場外では、宴会の席や電話・メールでの被害が代表的です。
上司から職務上関係のない内容のメールが頻繁にきたり、電話で何度も食事に誘われたりすることがあります。
飲み会で上司に抱きつかれたが、翌日謝罪を求めたら何も覚えていないと言われたもセクハラです。
セクハラを相談する前準備
セクハラを相談する際に、しておきたい事前準備があります。ハラスメントにおいて万全な備えは、被害へのスムーズな対処に有効です。
ここでは、セクハラを相談する場合の準備について解説します。
セクハラを相談する前に準備をしておこう!
専門機関に相談する場合は、以下の順で用意しておくとスムーズです。
被害状況を時系列にまとめる
いつ・どこで・誰から・何を言われたかを、時系列にまとめます。
その際、誰が見ていたかや自分の拒否行動についても詳細に記載しましょう。
録音・録画、診断書など証拠集めをする
証拠には録音や録画が有効なので、被害に遭いそうな状況ではボイスレコーダーを起動しておくことがおすすめです。
医師の診断書を用意しておくと、慰謝料の金額に反映される場合があります。
どう解決したいかを考える
どう解決したいかを考えることは、今後の支援方針を決めるにあたって重要といえるでしょう。
問題の解消について大まかな考えを持っておくと、相談時に役立つはずです。
セクハラの相談先は多岐にわたる
セクハラの相談先のうち、代表的な窓口は以下の通りです。
社内の通報窓口
社内にハラスメント対応窓口を設置している企業であれば、まずは職場内での解決を目指しましょう。
担当者がいない場合は、人事課や管理職などへの相談が有効です。
女性の人権ホットライン
されている行為がセクハラなのかわからない人は、女性の人権ホットラインを匿名利用ができます。
雇用環境均等部
会社に相談したけど効果がなかった、被害が大きくて苦しいのような場合は、労働局管轄の雇用環境均等部への相談がおすすめです。
会社への働きかけや、紛争への助言・調停の援助を行ってくれます。
労働問題弁護士
法的な対処を望むケースには、労働問題を得意とする弁護士を雇って解決を目指しましょう。
セクハラが耐えられないときは退職するのもひとつの手段
どうしてもセクハラに耐えられない場合は、会社を退職することもひとつの方法です。
ハラスメントでの辞職は、なるべくストレスを避けられる手段をとるべきでしょう。
ここでは、セクハラを受けた場合に有効な退職方法について解説します。
退職方法
セクハラが原因で退職したくても、直属の上司がハラスメント行為者である場合はさらに上の管理職や人事に申し出ます。
また、辞職が決まってからの出勤が苦痛になるケースもあるようです。
セクハラ行為者となるべく接触しないように、職場に配慮してもらうなどの対策が必要でしょう。
退職代行サービスとは
近頃、会社に行かずに仕事を辞められる退職代行サービスの利用者が増えているそうです。
辞職の意思表示や電話連絡などをすべて業者に任せられるうえ、確実性のある退職を目指せます。
セクハラを受けている場合、自力での辞職がむずしいケースがあることも事実です。
さらなる苦痛に追い込まれないためにも、業者を利用してストレスなく辞める方法も視野に入れましょう。
退職代行はインターネット検索で探すことができるので、気になる人は調べてみてください。
まとめ
この記事では、セクハラの定義を知りたい人に向けて以下のようにまとめました。
- 職場で相手の言動を不快に感じたらセクハラといえる
- セクハラは2種類に大別され、法律で防止措置の策定が義務化されている
- 会社は対応策を講じ、発生時は速やかな対処が求められる
- 個人でできるセクハラ対策は拒否の姿勢を明らかにすること
- 専門機関への相談前に、状況などをまとめる
ハラスメント防止には、職場と個人の意識的な取り組みが重要です。
風通しの良い環境の整備には、定義に基づいた対策を講じ試行錯誤していくことが必要でしょう。