個人事業主の外注費は経費になる?仕訳や勘定科目について解説

仕訳や勘定科目について解説 個人事業主の外注費は経費になる? コラム

個人事業主の中で外注費が経費になるのか知りたい、外注費の仕訳や勘定科目について知りたいと思っている人もいるでしょう。

当記事では、そんな悩みを解決していきます!

記事を最後まで読めば外注費が経費になるのか、仕訳方法や勘定科目について理解できますので、ぜひ最後までお付き合いください。

それでは解説していきます!

外注費とは

外注費の定義と判断基準について解説します。

外注費の定義

外注費とは社外の雇用関係がない法人、もしくは個人と請負契約や業務委託契約を結び、自社の依頼に対して業務を遂行した対価として支払う費用です。

たとえば、自社のネットサイト構築やパッケージデザインを社外のデザイナーに依頼した際の業務委託料が外注費として取り扱われます。

外注費の判断基準

報酬を支払う形態として外注費のほかに給与がありますが、外注費と給与の違いは5つの基準で判断しましょう。

他人が業務を代行できるか

他人が代替えして業務を行う場合、外注費とすることが多いです。

一方で業務を行う人に対して通勤手当や有給休暇、残業手当などを支給する、会社の従業員と同じような福利厚生がある場合は、給与として認められる可能性が高くなります。

業務で利用する道具や材料の負担

業務委託の場合は業務を遂行するための道具や材料は外注された側の自己負担としてもらい、諸経費で負担した分を加えて請求されることがあります。

業務を遂行しなくても報酬が請求できるか

委任契約や請負契約によって商品を納品してもらったり、サービスを提供してもらったりする対価として請求される場合は、外注費として認められやすくなります。

しかし雇用契約によって時給や日給計算のように給与体系で請求されて、支払う場合は給与として取り扱われる可能性が高いです。

業務の進め方において指揮監督があるか

業務の進め方で指揮監督の存在があり、外注された側が手順や作業時間を決めない場合、給与として取り扱われる可能性があります。

会社員などの雇用契約を結んでいる場合は、会社のルールや上司の指示に従って業務しますが、業務委託の場合は業務の進め方や時間を外注された側が判断して決めるケースが多いです。

ただし、業務を遂行するうえで指揮監督が必要な業務もあるため、全体の様子をみながら取り決めていくケースもあるようです。

業務の時間が拘束されているか

会社員のように8:30〜17:15など、就業時間を拘束する場合は給与として取り扱う可能性が高いです。

業務委託や請負契約のように雇用契約がない場合は、作業時間が決められていなかったり、タイムカードがなかったりと拘束がありません。

このような場合であれば、外注費として認められる可能性が高くなります。

個人事業主の外注費は軽費になる?

個人事業主が外注費を支払う場合、外注費は経費として計上可能です。

個人事業主が外注費を支払う場合

個人事業主が外注費を支払う場合と給与を支払う場合は以下のポイントが異なります。

支払いが外注費の場合の影響

支払いが外注費と給与とでは、社会保険料と消費税に及ぼす影響が異なります。

それぞれの違いについて解説します。

社会保険料

外注費の場合、雇用契約を結んでいないことが給与との大きな違いであり、雇用契約を結ばない外注費は社会保険料の手続きをする必要がありません

個人事業主の場合は従業員を5人以上雇うと社会保険に入る必要があり、事業主は社会保険料の半分を支払う必要があります。

消費税

支払った報酬が外注費の場合は消費税の経費として計上できるため、消費税の節税が可能です。

しかし、外注費ではなく給与の場合は消費税の経費として計上できず、消費税の節税もできません。

外注費でも源泉徴収が必要なケース

先に解説しましたが、外注費であれば雇用形態を結んでいないため、手続きが必要なく所得税の源泉徴収も不要なのが一般的です。

しかし、外注費を支払う相手の業種によっては源泉徴収をしなければならないケースがあります。

源泉徴収が必要な仕事には、以下のような職種が挙げられます。

  • 外交員
  • モデル
  • コンパニオン
  • 講演料
  • ライター(原稿料)

上記のような仕事の報酬を外注費として支払う際は、報酬金額から源泉税を引いた金額の支払いが必要です。

このように外注費で源泉徴収する際は、その年に支払った金額次第で税務署にマイナンバーが記載された支払調書を提出する必要があるため、注意すべきでしょう。

個人事業主の外注費の仕訳方法

個人事業主が外注費を支払った際の仕訳方法は源泉徴収が必要か不要かで異なります。

源泉徴収が不要な場合

たとえば、個人ではなくデザイン事務所にWebページのデザイン作成業務を外注したとします。

外注した相手が個人ではなく法人なので、この場合は源泉徴収の必要がありません

仕訳の仕方は以下の表を参考にしましょう。

借方 貸方 摘要
外注工賃 120,000円 現金 120,000円 Aデザイン事務所、Webページ作成費用

源泉徴収が必要な場合

もし、Webページ作成を法人ではなく個人(Bさん)に外注し、仕事の対価として報酬を個人の口座に支払った際は、源泉徴収をしなければなりません

その場合、源泉徴収の金額は貸方に預り金として書く必要があります。
外注費である報酬金額が100万円より少ない場合、源泉徴収での税率は10.21%です。

このときの仕訳は以下の表を参考にしましょう。

借方 貸方 適用
外注工賃 120,000円 普通預金 107,748円 Bさん、Webページ作成費用
預り金 12,252円

また、源泉徴収税を納めるときは、上記表の借方を預り金に、納税方法が現金であれば貸方を現金に、摘要内容を源泉徴収税の納付に変更し再度記帳する必要があります。

変更後は以下表の通りです。

借方 貸方 適用
預り金 12,252円 現金 12,252円 源泉徴収税の納付

なお、外注費として支払う報酬が100万円より高くなる場合は、20.42%が100万円を超えた部分に対して課せられます。

たとえば、外注費が150万円だった場合は源泉徴収税額は以下の計算式で求めましょう。

【計算式】
100万円×10.21%+(150万円-100万円)×20.42%=204,200円

上記計算式より、204,200円が源泉徴収税額です。

個人事業主の外注費の仕訳で意識すべきポイント

個人事業主が外注費を仕訳する際に、意識するポイントは2つあります。

売上から差し引きできない

1つ目のポイントは、外注費を売上から引くことは不可能ということです。

ロゴの作成を50万円で発注を受け、業務委託して外注費で10万円を支払った場合で解説しすると、売上の50万円に対して外注費として支払った10万円を引いた40万円を売上にすることはできません

この時の仕訳は以下の表を参考にしましょう。

借方科目 借方金額 貸方科目 貸方金額
預金 500,000円 売上 500,000円
外注費 100,000円 預金 100,000円

損益計算書上では「売上原価」か「販売費及び一般管理費」

外注費は損益計算書上で売上原価となる場合も、販売費か一般管理費となるケースもあります。

外注費が売上に直接関係している場合は売上原価に該当し、直接関係しない場合は販売費に該当します。

個人事業主の外注費の勘定科目

個人事業主が外注費を支払った際の勘定科目は、基本的に外注費または外注工費の勘定科目で経費を計上します。

外注費が給与と認定されてしまった場合

個人事業主が支払った報酬が外注費ではなく給与と認定されてしまった場合、以下のような問題が発生してしまいます。

源泉徴収税の支払いが発生する

基本的に外注費であれば、源泉徴収税を支払う必要がありません。

支払った報酬が給与として認められた際は、源泉徴収税の支払いが発生します。

消費税控除の否認分の支払いが発生する

外注費は消費税の法律上、消費税が発生する課税取引に該当しており、支払った分の消費税額を控除として引いて構いません。

しかし、給与の場合は消費税が発生しない免税取引に該当し、消費税を支払っていないと判断されます。

本来であれば控除で引けたはずの消費税がなくなるため、預かった消費税全額を納めなければならず、消費税控除否認分の支払いが発生するのです。

延滞税と加算税の支払いが生じる

先に解説したように外注費が給与認定されてしまうと、源泉徴収税と消費税が発生します。

この2つの税は支払い時に外注費扱いで処理するため、給与認定を受けた際に税金を支払う期日を過ぎている可能性が強いです。

そのため、納めるべき税金を納めていないということで、延滞税および加算税の支払いが発生してしまいます。

外注費と証明できるよう業務内容を明確にしておこう

外注費が給与と判断されないためには、証拠として残るように取引先から請求書を提出してもらいましょう

なお、証拠の書類として利用するには、請求書に以下の項目が記載されている必要があります。

  • 請求書を発行した人の氏名や名称
  • 取引をした年月日
  • 取引の内容
  • 税率別に合わせた報酬額
  • 交付を受ける事業者の氏名や名称

まとめ

  • 外注費とは請負契約や業務委託契約で支払う報酬のこと
  • 外注費は基本的に源泉徴収の対象外だが、場合によっては対象となることがある
  • 仕訳の際に売上から外注費を差し引くことは不可能
  • 外注費が給与と認められてしまった場合は、源泉徴収税や消費税控除否認分の支払いが発生する
  • 外注費が給与と認定されないためには、取引先から請求書をもらう

繰り返しになりますが、外注費とは、社外の雇用関係がない法人もしくは個人と請負契約や業務委託契約を結び、自社の依頼に対し業務を遂行した対価として支払う費用です。

基本的に外注費であれば雇用形態を結んでいないため、手続きが必要なく所得税の源泉徴収は必要ありません。

しかし、外注費を支払う相手の業種などによっては源泉徴収をしなければならない場合があるため注意が必要です。

外注費が給与として取り扱われた場合、源泉徴収税や消費税控除否認分の支払いが発生します。

また、その影響により延滞税や加算税も支払わなければならなくなってしまう可能性が高いです。

支払った報酬が外注費として認められるためにも、証拠として残るように取引先から請求書を発行した人の氏名や、取引をした年月日が記載された請求書を提出してもらうことが大切といえるでしょう。

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