訪問介護で開業できる?独立するまでの手順や成功させるポイント

訪問介護で開業できる?独立するまでの手順や成功させるポイント コラム

訪問介護で開業したいけど、独立する方法がわからず悩んでいませんか?

結論から言うと、開業するための条件を満たし、事前に十分な資金を用意しておけば訪問介護で開業できます。

本記事では、訪問介護の仕事内容、訪問介護で開業するための条件、開業に必要な資金、開業する際に利用できる融資・助成金を解説しています。

この記事を読めば、訪問介護で開業する手順を把握でき、独立後も事業を継続できる方法がわかりますよ。

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訪問介護とは

訪問介護とは、訪問介護員が介護者の自宅を訪問し、食事・排泄・入浴などの身体介護や、掃除・洗濯・買い物・調理などの生活援助をおこなう業務です。

訪問介護の仕事内容は、基本的に介護サービス計画書をもとに決められています。

そのため、計画書に記載されている内容以外のサービスはできません。

業務内容を区別する理由として、利用者の自立を阻害したり、トラブルが起きたりするのを防ぐことが目的です。

参照:訪問介護 | 業種別開業ガイド | J-Net21 中小企業ビジネス支援サイト

身体介護

身体介護とは、利用者が日常生活で必要な動作の介護、身辺の介護、生活の介護などをおこなう業務です。

身体介護の、主な業務内容は下記のとおりです。

  • 動作介護:起床・就寝介助や体位変換、服薬介助など
  • 身辺介護:歩行や更衣、部分浴、排せつ介助、おむつ交換など
  • 生活介護:食事や洗髪、入浴、外出・通院介助など

参照:訪問介護 | 業種別開業ガイド | J-Net21 中小企業ビジネス支援サイト

生活介護のなかの通院介助をする場合、受付の手続きはおこなえますが、院内の待機や診察を受けることは基本的にできません。

また、利用者の送迎をおこなう場合、社用車以外での送迎ができない決まりになっています。

生活援助

生活援助とは、利用者が日常生活を送るうえで必要な家事を、利用者本人が1人ではできない部分を支援する業務です。

参照:訪問介護 | 業種別開業ガイド | J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト

生活援助の主な業務内容は、下記のとおりです。

  • 掃除
  • 洗濯
  • 食事準備

介護者と関係のない部屋の掃除は、業務内容に含まれません。

また、庭の手入れやペットの世話なども業務の対象外です。

訪問介護で開業するための条件

訪問介護で開業する場合は、事業者が各都道府県の介護保険担当部署で認可申請をする必要があります。

また、訪問介護の許可を受けるためは、下記の条件を満たさなければいけません。

法人である

訪問介護を開業する場合、法人であることが条件です。

個人事業者では、訪問介護事業所の指定を受けられないので注意してください。

下記で法人形態の一覧を紹介します。

  • 株式会社
  • 合同会社
  • NPO法人
  • 社会福祉法人
  • 医療法人
  • 社団法人
  • 財団法人
  • 協同組合
  • 合資会社

法人形態を決める際は、それぞれのメリットやデメリットを把握したうえで、慎重に選びましょう。

必要な資格を取得している

訪問介護事業所には、訪問介護員のほかに、サービス提供責任者と管理者が必要です。

管理者になる場合は、特に必要な資格はありません。

しかし、サービス提供責任者と訪問介護員は決められた資格の取得が条件になっています。

サービス提供責任者は、下記のいずれか一つの資格を保有していることが条件です。

  • 介護福祉士
  • 介護職員実務者研修修了者
  • 旧介護職員基礎研修課程修了者
  • 旧訪問介護員養成研修1級課程修了者

2019年4月から初任者研修修了者(ヘルパー2級)をサービス提供責任者に配置できなくなったため、減算が廃止されました。

訪問介護員は、下記のいずれかの資格要件または要件を満たしていることが条件です。

  • 介護福祉士
  • 看護師
  • 准看護師
  • 保健師
  • 実務者研修
  • ホームヘルパー1級
  • 介護職員基礎研修

指定基準を満たしている

訪問介護を開業するには、推定基準を満たしている必要もあります。

開業の条件になっている推定基準は下記のとおりです。

  • 人員基準
  • 設備基準
  • 運営基準

人員基準

訪問介護を立ちあげるためには、訪問介護員とサービス提供責任者、管理者が必要です。

それぞれ1つに限り兼務が可能ですが、役割を3つ兼務することはできません。

また、訪問介護は1人では開業ができないので注意してください。

訪問介護事業所には、常勤換算2.5人の訪問介護員が必要です。

人員基準に定められている事項を満たしていない場合、基本報酬がマイナスされる減算対象になるので、人員基準は守りましょう。

設備基準

訪問介護事業所を立ちあげる際は、業務に必要な設備や備品などを揃えておくことが条件になっています。

設備基準として定められている項目は下記のとおりです。

  • 事務室
  • 相談室
  • 手洗い場
  • 電話やパソコンなどの備品

事務室は、広さの規定はなく、事業の運営がおこなえる面積を確保できれば問題ありません。

相談室は、利用申し込みの受付、利用者や家族の相談スペースとして確保する必要があります。

手洗い場は、手洗いができる洗面所を用意する必要があります。

運営基準

運営基準は、事業を始めるうえで、管理者やサービス提供責任者が覚えておく内容や事業所としておこなわなければいけない業務が定められています。

訪問介護の運営基準は下記のとおりです。

  • 利用者またはその家族に対して、サービスの内容を説明および同意を得る
  • 正当な理由以外で指定訪問介護の提供の拒否を禁止
  • サービスの提供が困難な場合は、速やかに対処する
  • 被保険者資格、要介護認定の有無および要介護認定の有効期間を確認
  • 要介護認定の申請をおこなえていない利用者がいた場合、速やかに援助する
  • 利用者の心身の状況や他の保健医療サービス、福祉サービスの利用状況などを把握
  • 居宅介護支援事業者と密接に連携する
  • 法定代理受領サービスの提供を受けるために援助する
  • 居宅サービス計画に沿ったサービスの提供する
  • 居宅サービス計画の変更に対して援助する
  • 身分を証する書類の携行をおこなう
  • サービスの提供の記録をおこなう
  • 利用料の受領をおこなう
  • 訪問介護計画の作成および利用者の同意を得る
  • 利用者に関する市町村への通知をおこなう
  • 利用者の病状の急変が生じた場合、主治医への連絡をおこなう
  • 事業の運営についての重要事項に関する規程(運営規定)を定める
  • 介護の総合的な提供をおこなう
  • 訪問介護員の健康状態の管理や設備、備品などの衛生的な管理をおこなう
  • 苦情を受け付けるための窓口の設置をおこなう
  • 事故が発生した場合は、市町村、利用者の家族、居宅介護支援者などへの連絡をおこなうとともに、必要な措置を講じる

運営基準違反は、重大な違反行為です。

「運営基準を知らなかった」「認識を間違えた」などの理由では処分を免れることはできません。

違反すれば重大な処分が下る場合もあります。

事業者はもちろんですが、管理者やサービス提供責任者の方も運営基準を頭に入れて業務をおこないましょう。

参照:指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準 | e-Gov法令検索

訪問介護の開業に必要な資金

訪問介護の開業する際は、開業資金と運転資金が必要です。

これら2つの資金について詳しく解説します。

開業資金

開業資金とは、起業する際に必要になる一時的な資金のことです。

どのくらいの資金でどのくらい準備をおこなうかは、事業内容を考えるうえで、重要なポイントになります。

訪問介護事業は、大規模な事務所を必要としないため、他の事業に比べ費用は少なく済みますが、開業する際にはある程度の資金が必要です。

地域によって開業にかかる費用が変わるので、開業資金は十分に用意しておきましょう。

訪問介護の開業にかかる費用は下記のとおりです。

  • 法人設立費用
  • 物件取得費用
  • 備品購入費用
  • 車両購入費

法人設立費用

訪問介護事業を法人で立ちあげる際は、株式会社の場合30万円ほどかかり、合同会社と一般社団法人の場合は、10万円ほど必要です。

NPO法人の場合、費用はほとんどかかりませんが、認可が降りるまで3〜4ヵ月ほどかかります。

先にも記載したとおり、訪問介護事業で開業するには、法人であることが必須条件です。

法人化するためにも、開業資金は十分に用意しましょう。

物件取得費用

物件取得費用は、事業所となる物件を賃貸、購入するための費用です。

自宅の一部を事務室に使う場合は、費用を抑えられますが、物件を賃貸や購入して取得する場合は、費用がかかります。

また、車で利用者の自宅に訪問する場合は、駐車場付きの物件か、近所の駐車場を借りる必要もあります。

事務室の設置が設備基準で定められているため、物件取得費用も必ず確保しましょう。

備品購入費

訪問介護の事務所では、訪問介護計画書の作成や介護保険の入力などの事務作業をおこないます。

事務作業をおこなうために、机や椅子、筆記用具などの事務用品や電話やパソコン、FAXなどの通信機器が必要です。

また、個室トイレや消毒液などの衛生用品や車いすや介護用服などの介護用品が必要になるので、事前に用意しましょう。

車両購入費

訪問介護事業所の形態によっては、自動車で訪問する場合があります。

その場合、自動車を用意する必要があります。

また、台数次第で駐車場代も必要になります。

車両本体の価格や駐車場代だけでなく、保険料や税金、ガソリン代も開業資金として用意しましょう。

運転資金

開業資金は開業前の一時的な出費のために使う資金ですが、運転資金は開業後の業務で必要な費用の支払いをおこなうための資金です。

訪問介護の開業後にかかる費用は下記のとおりです。

  • 人件費
  • 家賃
  • 雑費

人件費

訪問介護事業に必要な人員は、サービス提供責任者も含め、常勤換算2.5人以上です。

小規模の事業でも3人分の給与を確保しておかなければいけません。

厚生労働省の「令和3年度介護従事者処遇状況等調査結果」によると、2021年の介護職員の平均給与額は、常勤で31万4,590円となっています。

そのため、人件費として毎月90万円ほど用意しておく必要があります。

なお、収益の大半を占める介護報酬は、サービスを開始した翌月に請求情報を国保連合会に提出するので、入金されるのは翌々月になります。

訪問介護事業を開業する際は、2〜3ヵ月分の人件費を事前に用意しましょう。

家賃

訪問介護事業を開業する際は、事務室の設置が設備基準で定められています。

事務室は自宅での設置も可能ですが、物件を借りて事務室を設置した場合、月々の家賃を支払う必要があります。

費用を抑えたい人は、自宅での事務室設立を検討するのもいいかもしれません。

雑費

訪問介護の業務では、事務用品や医療用品などが必要です。

例えば、筆記用具や電話、パソコン、コピー機などが必要です。

また、トイレットペーパーや消毒液、マスクなども業務をおこなううえで必要になります。

開業時は揃える物が多いので、予算を多めに確保しましょう。

訪問介護で開業する際に利用できる融資・助成金

訪問介護事業の開業費用を自己資金だけで用意できない場合は、国がおこなっている融資や助成金を利用する方法があります。

訪問介護で開業する際に利用できる融資・助成金は下記のとおりです。

日本政策金融公庫

日本政策金融金庫は、事業の発展・維持のために、起業や経営などの支援をおこなっている政府金融機関です。

新たに事業を始める人や、事業を始めてからおおむね7年以内の人を対象とした「新規開業資金」で支援しています。

日本政策金融公庫で融資を受けるためには、適正な事業計画書を作成し、作成した計画を実行できる能力があると認められる必要があります。

また、提出する書類の数値が現実的でないと、スムーズな融資が受けられません。

融資を受けるために、綿密な事業計画書を作成し、計画を実行するために必要な資格やスキル、知識を身につけましょう。

参照:日本政策金融公庫

介護労働環境向上奨励金

介護労働環境向上奨励金とは、労働者の身体的負担や賃金の処理の向上、職場環境改善など、雇用管理の改善を総合的に進め、労働環境の向上を図った事業者に支給される助成金です。

事業者が実際におこなった雇用管理改善の内容に応じて、下記の2種類の助成が対象になります。

  • 介護福祉機器等助成
  • 雇用管理制度等助成

介護福祉機器等助成

事業者が介護労働者の身体的負担を減らすために、新たに介護福祉機器を導入し、適切な運用をおこない労働環境の改善が見られた場合に、支給される助成金です。

助成金を受けられる場合、介護福祉機器の導入にかかった費用の2分の1(上限300万円)が支給されます。

助成金を受けるためには、事前に「導入・運用計画」を作成し、都道府県労働局の認定を受けることが必要です。

雇用管理制度等助成

事業者が、介護労働者の福祉の増進を図るために、雇用管理改善につながる制度を導入し、適切に実施したことにより、一定の効果が得られた場合に、支給される助成金です。

助成金を受けられる場合、制度の導入にかかった費用の2分の1(上限100万円)が支給されます。

助成金を受けるためには、事前に「雇用管理制度整備等計画」を作成し、都道府県労働局の認定を受けることが必要です。

参照:介護労働環境向上奨励金のご案内

まとめ

  • 訪問介護とは、介護者が利用者の自宅に訪問し、身体介護や生活援助をおこなう業務
  • 訪問介護を開業する条件は、法人、必要な資格を取得、推定基準を満たす、の3つ
  • 訪問介護で開業するためには、開業資金と運転資金を十分に確保する
  • 開業する際の融資は、日本政策金融公庫で受けれらる
  • 開業する際の助成金は、介護労働環境向上奨励金で受けられる

訪問介護事業で失敗しないためにも、半年から1年分の資金を事前に確保しておくことが重要です。

開業資金を用意できない人は、融資や助成金を利用し、スムーズな開業を目指しましょう。

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