個人事業主は引っ越したら開業届の住所変更が必要?書き方や提出期限

コラム

個人事業主は引越しをした場合、自治体や水道、電気、クレジットカードなどのさまざまな住所変更の届け出をしなければいけません。

それに加えて、事業に関連した諸手続きをおこなう必要もあります。

本記事では、引越しの際に個人事業主がおこなわなければいけない、開業届や社会保険の手続きについて、くわしく解説します。

手続きに漏れがないように、チェックしておきましょう。

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個人事業主は転居時に開業届の住所変更が必要?

個人事業主の引っ越しには、自宅兼事業所の引っ越し、自宅と事業所が別々にある場合の、自宅のみの引っ越しまたは事業所のみの引っ越しと、複数のパターンがあります。

まずは、予定している引っ越しがどの引っ越しにあたるのか、確認しておきましょう。

移転の種類 必要な手続き
自宅兼事務所を移転
  • 納税地の異動(令和5年より廃止)
  • 労働保険、社会保険、給与支払などの関連手続き
自宅と事務所が別々で、自宅のみ移転
  • 納税地の異動または変更(令和5年より廃止、納税地である自宅が移転するのみであれば開業届の住所変更も不要)
  • 労働保険、社会保険、給与支払などの関連手続き
自宅と事業所が別々で、事務所のみ移転
  • 納税地の異動または変更(令和5年より廃止)
  • 開業届の変更(納税地ではない事業所が移転する場合)
  • 労働保険、社会保険、給与支払などの関連手続き

次に、個人事業主の引っ越しに関して言及されることの多い「納税地の変更」とは、どのようなものなのか理解しておきましょう。

まず、個人事業主の納税地とは、一般的には自宅の住所地を指します。その自宅を引っ越すなど「納税地に異動があった場合」は、令和4年まで届出が必要でした。

また、個人事業主は納税地を、自宅以外の「居所地又は事業所等の所在地」に変更することが可能です。自宅から居所や事業所に納税地を変えるなど、「納税地に変更があった場合」も、やはり令和4年まで届出が必要でした。

しかし、令和5年1月1日以降の現在は、納税地の異動・変更、どちらのケースでも届出は不要となっています。

このように、これまでよく使われていた「納税地が変更になったら届出が必要」という説明は、現在は有効ではなくなっています。

引っ越しをした個人事業主は、確定申告の際に、申告書の住所欄で「現在の住所」「居所」「事業所等」のどれかを選択して、その住所を記載すれば、最新の納税地を届け出たことになります

(参考:国税庁|納税地の特例等に関する手続の変更について

それでは、個人事業主が開業届を出す必要があるのは、どのような時なのでしょうか。

納税地変更の届出は不要となりましたが、事業所が増える、減る、移転するという場合には、開業届の提出による届出が必要です。

開業届では、「納税地」という欄の下に「上記以外の住所地・事業所等」という欄があり、「納税地以外に住所地・事業所等がある場合は記載」と説明がついています。

こちらに記入した「納税地以外の事業所等」、つまり自宅兼事業所ではない場合の事業所の引っ越しについては、この欄の内容を変更するために、変更手続きの必要性が残っているのです。

自宅兼事業所ではない事業所の引っ越しでは、開業届の変更をしましょう。

労働保険、社会保険、給与支払などの関連手続きについては、記事の後半で解説します。

住所変更する際の開業届の書き方


開業届の各項目の記入方法は以下のとおりです。

項目 記入内容
税務署長(提出先の税務署名) 移転前の管轄税務署を記入する
提出日 税務署へ提出する日を記入する
納税地 「住所地」「居所地」「事業所等」のうち該当するものを選択し、移転前の郵便番号と住所、電話番号を記入する
上記以外の住所地・事業所等 納税地以外の「住所地」や「事業所等」を記入する
氏名 個人事業主の氏名とフリガナを記入する
生年月日 年号を選択し生年月日を記入する
個人番号 マイナンバーを記入する
職業 営んでいる職業を記入する
屋号 屋号がある場合は屋号とフリガナを記入する
届出の区分 「新設」「増設」「移転」「廃止」のうち、該当するものにチェックを入れる
所得の種類 不動産所得・山林所得・事業(農業)所得のうち、該当するものすべてにチェックを入れる
開業・廃業日等 移転日を記入する
事業所等を新増設、移転、廃止した場合 「新増設、移転後の所在地」に移転後の所在地と連絡先の電話番号を記入、「移転・廃止前の所在地」に移転前の所在地を記入する
廃業の事由が法人の設立に伴うものの場合 単なる移転や引越しの場合は空欄
開業・廃業に伴う届出書の提出の有無 単なる移転や引越しの場合はいずれも「無」、該当するものがあれば「有」にチェックを入れる
事業の概要 個人事業主としておこなっている事業説明を記入する
給与等の支払いの状況 従業員がいれば記入する、「給与の定め方」は源泉徴収が必要な場合は「有」、そうでない場合は「無」にチェックを入れる
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書の提出の有無 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請をしていれば「有」、なければ「無」にチェックを入れる
給与支払いを開始する年月日 給与の支払いを開始する日を記入する

(参考:国税庁|[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出手続

提出期限は、移転などをおこなった日から起算して1ヵ月以内です。

住所変更する際の開業届の提出について

個人事業主が納税地ではない事業所を「新設」、「増設」、「移転」、「廃止」する場合には、開業届の提出が必要です。

以下の2つについて解説します。

開業届の提出場所

個人事業主が納税地ではない事業所の新増設や引っ越しをする場合は、転居前の住所地にある所轄税務署長に開業届を提出します。

e-TAXを利用して、電子申請することも可能です。

開業届の提出期限

一般的に開業届と呼ばれている書式の正式名称は、「個人の開業・廃業等届出書」です。

開業届は、個人事業主の事業について住所変更があった日から、1ヵ月以内に提出します。

開業届以外に転居時に必要な手続き


個人事業主が転居した場合、開業届以外の手続きには、どのようなものがあるのでしょうか。

該当する以下の5つについてそれぞれ詳しく解説します。

所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する届出書

既に解説したとおり、令和4年12月31日以前は納税地の異動や変更の際に「所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する届出書」を提出する必要がありました。

令和5年1月1日以後は、納税地の異動や変更については税制改正により提出が不要となりました

(参考:国税庁|納税地の特例等に関する手続の変更について

預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書

振替納税を利用している方の納税地に変更があった場合、新しい住所の「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書」を税務署長に提出する必要があります。

振替納税とは、確定申告で算定された所得税などを、納税者名義の金融機関の口座からの引き落としによって納税することです。

引っ越しによって納税地の所轄税務署が変更にならない場合は、自動的に次回以降も引き続き振替納税が継続されます。

引っ越しによって納税地の所轄税務署が変更になる場合は、以下のいずれかの方法で手続きをおこないましょう。

  • 引っ越し後の納税地の所轄税務署長あてに、新しい住所の「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書」を提出する
  • 引っ越し前の納税地の所轄税務署長あてに、異動後も振替納税を継続する旨を記載した「所得税・消費税の納税地の移動又は変更に関する届出書」を提出する

ただし、こうした制度も次第に改訂されていく可能性がありますので、詳しくは所轄の税務署や、国税電話相談などで確認をしましょう。

労働保険に関する書類

従業員を雇用する個人事業主は、住所に変更があった場合、「労働保険名称所在地等変更届」と「雇用保険事業主事業書各種変更届」を提出する必要があります。

「雇用保険事業主事業書各種変更届」の提出時には、「労働保険名称所在地等変更届」の控えが必要になります。

このため、まず「労働保険名称所在地等変更届」の手続きをした後に「雇用保険事業主事業書各種変更届」を提出します。

提出先と提出期限は、以下のとおりです。

  • 「労働保険名称所在地等変更届」の提出先は、労働基準監督署又はハローワーク(公共職業安定所)
  • 「雇用保険事業主事業書各種変更届」の提出先は、ハローワーク(公共職業安定所)
  • 提出期限は、住所変更の翌日から10日以内

社会保険に関する書類

社会保険(健康保険・厚生年金)に加入している個人事業主は、住所に変更があった場合、「健康保険・厚生年金保険事務所関係変更(訂正)届」と「適用事業所所在地・名称変更(訂正)届」を提出する必要があります。

提出先と提出期限は、以下のとおりです。

  • 提出先は、個人事業主の住所地を管轄している年金事務所(事務センター)
  • 提出期限は、事務所移転から5日以内

給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出

従業員を雇用する個人事業主は、住所に変更があった場合、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」を提出する必要があります。

開業届ですでに変更の手続きをした場合は「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」の提出は必要ありません。

提出先と提出期限は、以下のとおりです。

  • 提出先は、納税地の所轄税務署長
  • 提出期限は、住所変更から1ヶ月以内

事業開始(廃止)等申告書

「事業開始(廃止)等申告書」とは、都道府県税事務所に個人事業の開業や変更等を申告する書類です。

個人事業主の住所に変更があった場合は、遅滞なく届け出が必要になります。

提出先と提出期限は、以下のとおりです。

  • 提出先は、都道府県税事務所
  • 提出期限は、自治体によって異なる(東京都では事業開始から10日以内)

(参考:東京都主税局|事業を始めたとき、廃止したとき

まとめ


個人事業主が転居時におこなう、開業届などの住所変更の提出方法や提出期限について、解説しました。

まとめは以下のとおりです。

  • 個人事業主が自宅兼事業所ではない事業所の転居をする時は、開業届の提出が必要
  • 事業所転居時の開業届の記入方法は、「事業所等を新増設、移転、廃止した場合」欄に移転前後の情報を記入
  • 事業所の住所変更をする際の開業届の提出先は、住所地の所轄税務署に提出
  • 事業所の住所変更をする際の開業届の提出期限は、提出期限は転居から1ヵ月以内
  • 開業届以外に転居時に必要な手続きは、「所得税・消費税の納税地の異動又は変更に関する届出書」「預貯金口座振替依頼書兼納付書送付依頼書」など

個人事業主が引越しの際にしなければいけない手続きは、状況によってさまざまです。

確定申告の時期になってからあわてないよう、引越しの際には本記事でご紹介した手続きを忘れずにおこないましょう。

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