開業資金が足りないときは補助金を活用しよう!種類やメリット

コラム

開業資金の調達方法のひとつとして、起業や創業を支援する補助金があるのをご存知でしょうか。

補助金は、融資とは違い返済不要なので、精神的負担も軽減される魅力的な制度です。

本記事では、開業時に活用できるおすすめの補助金やメリットについて解説します。

ぜひ参考にしてください。

補助金とは

補助金とは、国や自治体が事業者の取り組みをサポートするために、資金の一部を給付するものです。

採択件数や金額があらかじめ決まっているものが多く、申請したからといってかならずしも受給できません。

また、1ヵ月程度の公募期間を設けることが一般的で、期間内に所定の書類を揃え、申請する必要があります。

そして多くの場合、採択件数に対し応募件数が上回ります。

提出書類でその妥当性や必要性をアピールできないと、どんなによい提案をしても採択にいたりません。

補助金の申請は、提出書類の内容が重要です。

開業する際に補助金を活用するメリット


開業する際に補助金を活用するメリットは以下の3つです。

返済が不要

補助金は融資と異なり、お金を返済する必要はありません

ただし、補助金は税金で支払われるため、利用目的や要件をクリアし、審査が通った場合にのみ受給できます。

補助金受給までの流れは以下の5つです。

  1. 自分の事業とマッチする補助金を探す
  2. 申請する
  3. 採択される
  4. 事業の実施
  5. 補助金の交付

補助金は申請すればもらえるものではありません。

申請には、応募申請書・事業計画書・経費明細書・事業要請書などの申請書類を事務局に提出し、事務局に提出された申請書類一式の審査があります。

その結果、採択されれば決定通知が届きます。

さらに補助金を受け取るための手続き(交付申請)をし、内容が認められれば交付決定となります。

交付決定された事業内容で事業をスタートし、実施した事業の内容や経費を報告することで、最終的に補助金額が確定します。

補助金は精算払いのため、開業してすぐに給付されないことを認識しておきましょう。

社会的信用が上がる

補助金を申請する際は、事業計画書、経費明細書、事業要請書など事業の実態がわかる書類をもとに公的機関の審査を受けることになります。

採択されて補助金を受け取ることができれば、審査を通過した事業として社会的信用度があがります

客観的な意見がもらえる

補助金を申請する場合、事業のビジョンや目安になる売上高などをもとに、事業計画書を作成します。

採択される前の審査では、税理士や、商工会・商工会議所などから客観的な意見をもらえ、よりよい事業へ発展させるための参考になります。

開業資金を補える補助金の種類


開業資金を補える補助金を、6つ紹介します。

ものづくり補助金

ものづくり補助金とは、中小企業・小規模事業者などが、働き方改革や被用者保険の適用拡大、賃上げ、インボイス導入などに対応し、生産性を向上できるよう、革新的サービスの開発・試作品開発・生産プロセス改善などを支援する制度です。

各申請枠の概要は、以下のとおりです。

申請枠 補助額 概要
通常枠
  • 従業員数5人以下:100万円〜750万円
  • 6人〜20人:100万円〜1,000万円
  • 21人以上:100万円〜1,250万円
  • 革新的な製品・サービス開発を支援する
  • 生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム設備等を支援する
回復型賃上げ・雇用拡大枠
  • 従業員数5人以下:100万円〜750万円
  • 6人〜20人:100万円〜1,000万円
  • 21人以上:100万円〜1,250万円
  • 賃上げ・雇用拡大に取り組む事業者がおこなう、革新的な製品・サービス開発を支援する
  • 生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム設備等を支援する
デジタル枠
  • 従業員数5人以下:100万円〜750万円
  • 6人〜20人:100万円〜1,000万円
  • 21人以上:100万円〜1,250万円
  • DX(デジタルトランスフォーメーション)に役立つ、革新的な製品・サービス開発を支援する
  • 生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム設備等を支援する
グリーン枠
  • エントリー類型
    • 従業員数5人以下:100万円〜750万円
    • 6人〜20人:100万円〜1,000万円
    • 21人以上:100万円〜1,250万円
  • スタンダード類型
    • 従業員数5人以下:750万円〜1,000万円
    • 6人〜20人:1,000万円〜1,500万円
    • 21人以上:1,250万円〜2,000万円
  • アドバンス類型
    • 従業員数5人以下:1,000万円〜2,000万円
    • 6人〜20人:1,500万円〜3,000万円
    • 21人以上:2,000万円〜4,000万円
  • 温室効果ガスの排出削減に貢献する取組みに関する革新的な製品・サービス開発を支援する
  • 炭素生産性向上に付随する生産プロセスや、サービス提供方法の改善に必要な設備、システム投資などを支援する
グローバル市場開拓枠 100万円〜3,000万円
  • 海外事業の拡大・強化などを目的とした製品・サービス開発を支援する
  • 生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な、以下の設備を支援する(①海外直接投資類型、②海外市場開拓(JAPANブランド)類型、③インバウンド市場開拓類型、④海外事業者との共同事業類型のいずれか)

発注・納入・検収・支払い等すべての事業の手続きは、以下の期間内に完了する必要があります。

通常枠、回復型賃上げ・雇用拡大枠、デジタル枠、グリーン枠 交付決定日から10ヵ月以内(ただし補助金交付候補者の採択発表日から12ヵ月後の日まで)
グローバル市場開拓枠 交付決定日から12ヵ月以内(ただし補助金交付候補者の採択発表日から14ヵ月後の日まで)

IT導入補助金

IT導入補助金も、個人事業主が利用が可能な補助金です。

業務効率化や生産性向上を目指して、ITツールを導入したい方におすすめです。

IT導入補助金には複数の枠がありますが、個人事業主でも利用できる補助金は主に次の4つです。

申請枠 概要
通常枠(A類型)
  • 対象:ソフトウェアの購入費やクラウド利用料(最大2年分)、導入にかかった経費
  • プロセス(*1)数1以上
  • 補助額:5万〜150万円未満
  • 補助率:2分の1以内
通常枠(B類型)
  • 対象:ソフトウェアの購入費やクラウド利用料(最大2年分)、導入にかかった経費
  • A類型より大きな金額の補助を受けられる分、申請に必要なプロセス(*1)数が4以上と、より多くの機能を持つツールを導入する必要がある
  • 補助額:150万円〜450万円以下
  • 補助率:2分の1以内
デジタル化基盤導入類型
  • 対象:会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ECソフト購入費、クラウド利用料(最大2年分)、導入関連費
  • ハードウェアの購入費も対象になるのが特徴
  • 補助額:下限なし〜350万円
  • 補助率:50万円以下部分は4分の3以内、50万円超〜350万円部分は3分の2以内
  • パソコン・タブレットは、補助上限額:10万円、補助率:2分の1
  • レジ・券売機などは、補助上限額:20万円、補助率:2分の1以内
複数社連携IT導入類型
  • 対象:ソフトウェアの購入費やクラウド利用料(最大2年分)、導入にかかった経費
  • 複数の事業者で連携してITツールを導入する際に受けられる
  • 補助額:下限なし〜350万円(基盤導入経費の場合)
  • 補助率:50万円以下部分が4分の3以内、50万円超〜350万円部分は3分の2以内
  • その他経費は、補助上限額:50万×グループ構成員数、補助率:3分の2

*1)プロセスとは、ITツールに搭載されている下記にある機能のことで、補助金の交付を受けるためには定められたプロセス数をクリアしなければなりません。

  • 顧客対応・販売支援
  • 決済、債権債務、資金回収
  • 供給、在庫、物流
  • 会計、財務、経営
  • 総務、人事、給与、労務、教育訓練、法務、情報システム
  • 汎用、自動化、分析ツール

このようなプロセスを必要数含むツールでなければならないという、制約があることを理解しておきましょう。

創業促進補助金

創業補助金(地域需要創造型起業・創業促進補助金)は、たとえば、「同じ悩みを持つ主婦をターゲットにインターネットで起業したい」「先代が守ってきた事業をベースに新しいビジネスにチャレンジしたい」というような思いを持つ方の、起業・創業を応援する補助金です。

女性や若い世代が地域で起業・創業をする場合に、最大200万円の補助(3分の2)や、家業を活かす第二創業で500万円の補助(3分の2)が受けられます。

補助金を受けるためには、認定支援機関(金融機関や税理士、弁護士、中小企業診断士など)による、事業計画の実効性などの確認が必要です。

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者などが経営計画を立案し、商工会・商工会議所にサポートを受けながらの営業活動を支援する補助金です。

申請枠 概要
通常枠
  • 対象:作成した経営計画にもとに、商工会・商工会議所の支援を受けながら販路開拓などの取り組みをする小規模事業者
  • 補助額:上限50万円
  • 補助率:3分の2
  • インボイス特例の要件を満たす場合は上限額に50万円上乗せ
賃金引上げ枠
  • 対象:販路開拓の取り組みに加え、事業の最低賃金が、地域別最低賃金より+30万円以上の小規模事業者
  • 補助額:上限200万円
  • 補助率:3分の2(赤字事業者は補助率4分の3に引上げ)
  • インボイス特例の要件を満たす場合は上限額に50万円上乗せ
卒業枠
  • 対象:販路開拓の取り組みに加え、小規模事業者の従業員数を超えて雇用を増やし、事業の拡大に取り組んだ小規模事業者
  • 補助額:上限200万円
  • 補助率:3分の2
  • インボイス特例の要件を満たす場合は上限額に50万円上乗せ
後継者支援枠
  • 対象:販路開拓の取り組みに加え、既存の経営資源を生かしたアトツギ甲子園でファイナリストおよび準ファイナリストに選ばれた小規模事業者
  • 補助額:上限200万円
  • 補助率:3分の2
  • インボイス特例の要件を満たす場合は上限額に50万円上乗せ
創業枠
  • 対象:創業の促進による産業活性化を図る「特定創業支援等事業の支援」を受け、販路開拓に取り組み、創業した小規模事業者
  • 補助額:上限200万円
  • 補助率:3分の2
  • インボイス特例の要件を満たす場合は上限額に50万円上乗せ

補助対象となる経費には、以下のような項目があります。

  • チラシ
  • パンフレット
  • ホームページ
  • Web広告
  • 店舗の改装
  • 展示会の出店
  • 新商品の開発費用 など

補助金の申請にあたって「経営計画」の策定は必須ですが、その手間を差し引いても、小規模事業者にとっては使い勝手のよい補助金です。

事業再構築補助金

事業再構築補助金は、新型コロナウイルス感染症の影響で売り上げが減少した中小企業や個人事業主などの、事業再構築を支援するための補助金です。

新分野展開や思い切った事業再構築を支援します。

事業再構築補助金は誰でも利用できるわけではなく「対象者」「対象経費」「申請枠ごとの要件」を満たす必要があります。

また、補助金額や補助率は各申請枠で異なります。

申請枠は以下の8つです。

申請枠 概要
成長枠
  • 対象:成長分野で大胆な事業再構築に取り組む事業者
  • 補助額:最大7,000万円
グリーン成長枠(エントリー・スタンダード)
  • 対象:グリーン分野での事業再構築を通じて、高い成長を目指す事業者
  • 補助額:4,000万円〜1.5億円
卒業促進枠
  • 対象:成長枠・グリーン成長枠の補助事業を通して、中小企業などから中堅企業などに成長する事業者
  • 補助額:成長枠・グリーン成長枠に準ずる
大規模賃金引上促進枠
  • 対象:成長枠・グリーン成長枠の補助事業を通して、大規模賃上げに取り組む事業者(卒業促進枠と併用不可)
  • 補助額:3,000万円
産業構造転換枠
  • 対象:国内市場の縮小等、事業再構築が強く求められる業種・業態の事業者
  • 補助額:2,000万円〜7,000万円
サプライチェーン強靭化枠
  • 対象:海外製造部品の国内回帰に向け、国内サプライチェーンの強靭化や地域産業の活性化に取り組む事業者
  • 補助額:5億円
最低賃金枠
  • 対象:最低賃金引き上げが難しい業況の中小企業事業者など
  • 補助額:500万円〜1,500万円
物価高騰対策・回復再生応援枠
  • 対象:コロナ・物価高騰により依然事業が厳しい事業者
  • 補助額:1,000万円〜3,000万円

申請は、電子申請システムでおこないます。財務情報、事業計画などの入力や資料の提出が必要なため、時間や手間がかかる場合があるので注意しましょう。

事業承継・引継ぎ補助金

事業継承・引き継ぎ補助金は、事業継承やM&Aによる経営の引継ぎや、廃業・再チャレンジをおこなう中小企業を支援する補助金制度です。

要件を満たせば、個人事業主も補助金を受け取れます。

事業継承・引き継ぎ補助金には、次の3つの類型があります。

類型 概要
経営革新事業
  • 対象者:事業継承やM&Aによる経営革新にチャレンジする事業者
  • 対象経費:設備投資・店舗の借入費・人件費・改装工事費用など
  • 補助額:上限600万円
  • 補助率:3分の2
専門家活用事業
  • 対象者:M&Aで事業を引き継ぐ事業者、M&Aで事業を引き継ぎたい事業者
  • 対象経費:委託費・マッチングサイトのシステム料・セカンドオピニオンなど
  • 補助額:上限600万円
  • 補助率:3分の
廃業・再チャレンジ事業
  • 対象者:既存事業をたたみ新しい事業にチャレンジする事業者
  • 対象経費:廃業費・在庫廃棄費・解体費など
  • 補助額:上限150万円
  • 補助率:3分の2

開業する際に補助金を活用する注意点


開業する際に補助金を活用する注意点は以下の3つです。

入金までに時間がかかる

補助金は、申請してから入金されるまでに時間がかかります。

事業を計画どおりに実施した報告書や、請求書・領収書などの支払い証憑の提出が義務付けられており、その検査や承認が終わってから支払いになります。

そのため事業が採択されても、事業を実施するための資金調達は必要です。

資金繰りに影響がでないよう、支給までの時間が長い点は認識しておきましょう。

書類作成が面倒になる

補助金申請に関する書類の作成は、面倒だと思われる方が多い作業です。

大変だから、もう諦めようかと考えてしまうかもしれません。

書類作成の手順を紹介しますので、ポイントと合わせて参考にしながら、作業を進めていきましょう。

  • 申請書類を揃える
    公募サイトから公募要領と申請に必要な書式をダウンロードし、スケジュールの確認をする
  • 事業の内容を明確にする
    おこなう事業について説明する項目があるため、事業内容を明確にしておく
  • チェックリストの確認
    補助金の申請は、多くの添付資料が必要のため漏れがないが確認する
  • 提出方法の確認
    主に電子申請か郵送のどちらかでおこなわれるが、両方必要な場合もあるため提出方法をよく確認する

期限が決まっている

補助金には公募期間という、広く一般から募集する期間が決まっています。

公募期間は、支給要件の発表から締め切りまでの期間が短いことが一般的です。

さらに予算の関係上、人気の高い補助金であれば公募期間中に公募が終了してしまう場合もあります。

補助金以外で開業資金の負担を減らす方法

補助金以外で開業資金の負担を減らす方法は以下の3つです。

融資

開業時の資金調達方法として、銀行や信用金庫からの融資があります。

金融機関による融資のメリットは、資金調達までの期間が短いことです。

大手銀行や地方銀行、信用金庫など、借入先にはいくつかの候補が考えられます。

そのなかでも、個人で開業するのであれば、事業主が開業資金の調達先として最初に検討したいのが日本政策金融公庫です。

日本政策金融公庫には、起業したてで実績がない場合も受けられる「新創業融資制度」「新規開業資金」などの融資制度があります。

商工会議所

商工会・商工会議所は、各地域の事業者が会員となって、それぞれの事業や地域の発展のために活動する団体で、融資や経営相談などにも対応してくれます。

各地区で事業をする商工業者であれば、基本的には法人・団体・個人を問わず入会できます

商工会・商工会議所では、以下のような相談ができます。

  • 経営相談・支援
  • 税務相談・経理指導
  • 金融相談・斡旋
  • 労務相談
  • 連鎖倒産防止相談
  • 取引・販路開拓支援
  • 分野別専門家派遣

フランチャイズ

フランチャイズとは、加盟店がフランチャイズ本部から店舗の作り方や成功しているサービス、ノウハウなどの指導を受け、ロイヤリティをフランチャイズ本部に支払う仕組みのことです。

1から自分で起業するのに比べ、フランチャイズには多くの開業しやすいメリットがあります。

開業してお店を出す場合、まずは名前を知ってもらい知名度を上げなくてはいけませんが、フランチャイズに加盟すれば、すでに知名度がある状態から事業を始められます。

また、さまざまな仕組みを考えたり、必要なものを選別して用意したりする手間も省略することができます。

経営方法がすでに確立しているので、初めて起業する方でも安心して、不必要なコストをかけずに起業できます。

まとめ

開業資金が足りない場合の補助金の活用方法やメリットについて解説しました。

まとめは以下のとおりです。

  • 補助金とは、国や自治体が事業者の取り組みを支援するためのもの
  • 開業する際に補助金を活用するメリットは、返済が不要、社会的信用が上がるなど
  • 開業資金を補える補助金の種類は、ものづくり補助金、IT導入補助金など
  • 開業する際に補助金を活用する注意点は、入金までに時間がかかる、書類作成が面倒であるなど
  • 補助金以外で開業資金の負担を減らす方法は、融資、フランチャイズなど

個人事業主向けの補助金には、さまざまな種類があります。

上手に活用して「売上拡大」「生産性向上」などに役立てましょう。

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