経験と実績を持つ公認会計士のなかには開業を考えている人もいるでしょう。
また、独立は難しいのではと躊躇している人もいるでしょう。
この記事では、公認会計士で開業した場合のメリットや、独立開業のポイントを解説していきます。
ぜひ、参考にしてください。
公認会計士が独立開業するメリット
ブランド力があり、安定性のある監査法人を退職して、リスクを負ってまでも公認会計士が独立開業する魅力的なメリットにはどのようなことがあるのでしょうか。
以下、解説していきます。
年収アップを目指せる
独立開業すると、収入アップが期待できます。
多くの監査法人では、4段階のキャリアパスがあり、給与規定で基本給や職階により給与が決まっています。
しかしながら、独立開業すれば、自分で裁量を決めることができます。
そのため、自分の努力次第で多くの担当を持ち、それに応じた収入を得ることができます。
実際に、独立開業後の年収は年収5,000万円という公認会計士もいます。
初期費用が安い
公認会計士の独立開業は、初期費用があまりかからないこともメリットのひとつです。
公認会計士の場合、店舗を構えたり、仕入れをおこなう必要がないため、自宅でパソコンと会計ソフトさえあれば独立開業ができます。
費用を抑えながら、仕事とプライベートをしっかり分けたい方は、レンタルオフィスやコワーキングスペースなどの活用を検討するとよいでしょう。
また、公認会計士として独立開業するためには、日本公認会計士協会への加入、登録が義務付けられています。
登録時には、登録免許税、入会金、設備負担金が必要です。
また、年間では普通会費、地域会会費の費用負担が発生します。
業務の自由度が上がる
業務内容やクライアントを自分で選ぶことができるため、業務の自由度が上がります。
自分の得意分野に特化した依頼を受けるといった業務内容や業務量を自由に決めることができます。
また、自分と性格的に合わないクライアントや、直観的に何となく怪しい感じがする依頼を、自分の判断で断ることもできます。
働き方を自分で選べる
独立後、例えば監査法人などで週2〜3日非常勤として働き、その他の日に自身のクライアント対応をする働き方もできます。
また、ワークバランスを自由に決めることができます。
趣味の時間を持ちたい人、育児をしながら仕事をしたい人、地方の好きな場所で仕事をしたい人などにとっては、自分の理想的な仕事環境や仕事のペースを作れるのは大きなメリットです。
公認会計士が独立開業するデメリット
どのような業種でも、独立開業は人生の大きな決断です。独立後の失敗に不安を持つ人も少なくないでしょう。
したがって、事前にデメリットも理解しておくことも大切です。
以下、解説していきます。
収入が不安定になる
公認会計士の独占業務は法定監査と任意監査ですが、監査業務が必要な企業は日本全国で0.1%程度の上場企業が中心です。
日本では4大監査法人(あずさ監査法人・EY新日本有限責任監査法人・有限責任監査法人トーマツ・PwCあらた有限責任監査法人)の影響力が大きく、独立後に独占業務で収入を安定させることは困難です。
そのため、独占業務以外の仕事を安定的に確保する必要があります。
自分の強みを明確にし、同業者との差別化を図り、戦略的に顧客獲得をしなければ、安定した売上を得ることはできません。
集客に苦労する
公認会計士のなかには、営業や集客が苦手な人もいます。
しかし、独立開業後は、業務に加え、自分で顧客開拓し、集客する必要があります。
「公認会計士」という看板だけでは、顧客を確保できないのが現実です。
顧客獲得の戦略を練り、集客することは必須となります。
対応しなければいけない業務が増える
独立開業すると、成果を上げる経営を安定させるために、自分が不得意な業務や、あまり気乗りしない業務も対応しなくてはいけません。
働き方や業務の自由度が高い分、成果に対する責任も自分自身で負わなくてはいけないことを肝に銘じておきましょう。
公認会計士が独立開業した場合の仕事内容
公認会計士が独立開業した場合、監査法人の仕事内容とどのような違いがあるのでしょうか。
税務
独立開業する公認会計士には、税理士登録をして税務業務をメインにしている方もいます。
税務業務で一定数のクライアントを確保すれば、月々の顧問料が安定して入るため、事務所の経営が安定するメリットがあるからです。
しかし、監査法人時代に税理士業務はおこなわないため、税務業務をおこないたい方は、独学で申告書作成などの税務業務を習得する必要があります。
コンサルティング
財務諸表作成や分析サポート、経営戦略アドバイス、資金調達の方法など、財務・会計分野を中心としたコンサルティングは、監査法人時代に培った経験と知識を活かすことができます。
その他、FASでのデューデリジェンスの知識を活かし、M&Aなど企業の買収・合併、組織再編に関わるアドバイザーとしても活躍できます。
監査業務
中小企業から監査業務を依頼されるケースがあります。
また、監査法人は上場企業や大企業の監査業務が中心となるため、人脈次第では、個人の公認会計士や独立開業した会計事務所に監査業務を紹介してくれることもあります。
公認会計士のなかには、企業の監査役として、複数企業に非常勤で在籍する方も存在します。
社外役員
上場企業では、複数人の社外役員が求められており、社外役員不足の時代ともいわれています。
そのため、経営者から注目を集めているのが、会計・監査の専門家である公認会計士の社外役員就任です。
社外役員は、日本公認会計士会の紹介制度に登録し、社外役員を求めている企業からの紹介を受けることもできます。
その他、人材エージェントに社外役員希望の相談をすることも、きっかけの1つになるでしょう。
参考:日本公認会計士協会 「社外役員候補公認会計士紹介制度について」
公認会計士の独立開業を成功させるポイント
公認会計士として、独立開業を成功させるポイントがいくつかあります。
独立開業を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
スキルを磨く
独立開業後は、監査業務を担当できるとは限らないため、取りこぼしのないよう、さまざまな顧客を獲得する必要があります。
顧客獲得に対応するためには、まず自分の能力や得意分野の棚卸しをおこないましょう。
自身の強みを把握した上で、監査業務以外の業務に積極的に関わり、経験を積み、得意分野やさらなる強みを増やすことが大切です。
例えば、監査業務を主としながら、スポットでM&Aや内部統制のアドバイザリー業務などのサポートを経験し、スキルを磨くことで、高みを目指すことができます。
競合との差別化を意識する
自分は何を専門とし、他の公認会計士に負けないことは何かを明らかにしましょう。
自分が顧客から選ばれる理由を明確にし、競合との差別化を意識することで、受注確保ができます。
集客方法を考える
公認会計士として実力があっても、自身の強みのアピール方法や、情報の提供について正しい活動をしなければ、仕事を得ることはできません。
したがって、独立開業する前から集客方法を検討するのは重要です。
集客活動には次のようなものがあります。
- 関連士業や同業者から仕事を回してもらえるよう、異業種交流会に参加する
- 相互紹介がおこなえるよう、他士業との人脈を構築する
- ホームページやSNSを運用して集客活動をする
- 顧客獲得につながるセミナーなどを開催する
人脈を広げる
知人や友人などをとおして培ってきた、自分自身の人脈を活かしましょう。
人脈は、仕事の幅を広げるだけでなく、仕事を獲得するときにも役立ちます。
例えば、「知人や友人の紹介の方が信用できる」と営業なしで案件を獲得できることもあります。
また、培ってきた人脈から、厳しい条件交渉や無理な要求をされにくいことや、重大なトラブルになることが少ないといった利点もあります。
まとめ
この記事では公認会計士の独立開業について、メリットや成功のポイントを解説しました。
以下、まとめになります。
- 独立開業は、働き方を選べ、年収アップを目指せる反面、成果に対する責任も自分で負わなくてはならない。
- 独立開業時の初期費用がかからないため、比較的開業しやすい。
- 「公認会計士」という看板だけでは集客できないため、戦略を練り、顧客を獲得する必要がある。
- 競合との差別化を図るため、顧客から自分が選ばれる理由を明確にすることが大切。
- 成功のポイントは ①スキルを磨くこと②人脈を広げること③集客方法を考えること
公認会計士として独立開業するには、新しい知識を追い求め、学び続ける、積極的な姿勢が大切です。
独立開業には不安がともないますが、失敗を恐れず、ぜひチャレンジしてください。