「退職代行って何?」
「退職代行を使われたらどうする?」
「退職代行の対処法は?」
退職代行とは、従業員が直接会社に退職の意思を伝えるのではなく専門の業者に依頼して代わりに退職手続きをおこなってもらうことです。
退職代行を使われた会社は、驚きや困惑を感じるかもしれません。
しかし、冷静かつ慎重に対応する必要があります。
本記事では、退職代行を使われた場合にどう対応すべきか、対処法を解説します。
また、退職代行を使われた際の注意点や、退職が決まったあとに会社側がすべきことも具体的に詳しく紹介します。
退職代行を使われたことで悩んでいる担当者の方は、ぜひ本記事を最後まで読んでみてください。
退職代行を使われた会社がすべきこと
ある日、いきなり退職代行業者から連絡が来て、従業員が退職の意思を伝えられたら驚いてしまいますよね。
もし退職代行を使われた場合、会社はどのように対応すればよいのでしょうか。
退職代行を使われた会社がすべきことは以下の6つです。
一つずつ詳しく解説します。
退職代行業者の資格を確認する
退職代行を使われた会社が最初にすべきことは、退職代行業者が正当な資格を持っているかの確認です。
退職代行業者の運営元は、主に弁護士が運営・提携しているもの、労働組合が運営・提携しているもの、民間企業が運営しているものの3種類があります。
このうち、退職代行に依頼した従業員に代わって退職に必要な手続きや交渉をおこなう権利を持っているのは、弁護士か労働組合が運営・提携している退職代行業者だけです。
民間企業が運営している退職代行業者は、依頼者を受けて退職の意思を会社に伝えることしかできず、交渉などをおこなう権利はありません。
まずは退職代行業者の運営元や、交渉などをおこなうための資格があるのかなど、退職代行業者の身元をしっかりと確認しましょう。
退職代行業者の信頼性や安全性を判断するには、以下のような点をチェックするとよいでしょう。
- 退職代行業者の会社名や住所、電話番号などの基本情報が開示されているか
- 退職代行業者のホームページやSNSなどの情報が信頼できるか
- 退職代行業者の口コミや評判がよいか
- 退職代行業者の契約内容や料金が明確か
- 退職代行業者が過去にトラブルや訴訟などを起こしていないか
退職代行業者によっては、不当な料金や違約金を請求したり、個人情報を悪用したりする場合があります。
退職代行業者の資格を確認しておくことで、どのように対応すればいいかを判断でき、トラブルの防止にもなります。
退職したい従業員の本人確認をする
退職代行業者から退職の連絡を受けた場合、退職したい従業員の本人確認をおこなうことが必要です。
退職代行業者は、従業員の代理人として会社に退職の意思を伝えます。
しかし、退職代行業者が本当に従業員の代理人かどうかを確認する必要があります。
本人確認をしないと、以下のようなリスクがあります。
- 第三者が従業員の意思とは関係なく、勝手に退職を申し出る場合がある
- 第三者が従業員の個人情報を不正に入手し、詐欺や脅迫などの犯罪に利用する場合がある
- 第三者が従業員の代わりになりすまし、会社に不利な条件を要求する場合がある
本人確認のために、退職代行業者に従業員の写真付きの身分証明書のコピーを提出してもらうか、従業員の署名や押印が入った書類を提出してもらって本人確認をおこないましょう。
退職代行業者が本人確認の書類や委任状を持っていない場合、従業員の代理人であるとは認められません。
また、退職代行業者が本人確認の書類や委任状を持っていても、その書類が偽造されている可能性があります。
会社は、退職したい従業員の本人確認をおこなうことで、不正な退職を防げます。
従業員の雇用規定を確認する
従業員の雇用規定とは、会社が定めた労働条件や退職に関する規則のことです。
雇用規定には、以下のような内容が含まれていることがあります。
雇用規定を確認しておくことで、退職代行業者や従業員に対して会社が求めることや守るべきことを明確にできます。
退職代行業者は、従業員の雇用規定にしたがって退職手続きをおこなう必要があります。
退職代行業者が雇用規定に反して退職日や退職理由を決めたり、退職届を提出したりする場合、会社は退職代行業者に対して雇用規定の遵守を求めることができます。
希望する退職日を確認する
退職日とは、従業員が会社との雇用関係を終了する日のことです。
退職日は従業員と会社が協議して決めることが原則です。
退職日には、以下のような点に注意する必要があります。
退職日を確認しておくことで、会社と従業員の双方の利益や事情を考慮した退職のタイミングを決めることができます。
退職代行業者は、従業員と会社の間の協議に代わって退職日を決めることはできません。
退職代行業者が勝手に退職日を決めた場合、会社は退職日を変更できます。
退職日を変更する際には、従業員の雇用規定や労働契約に基づいて、合理的な期間の設定が必要です。
会社は、希望する退職日を確認することで、退職代行業者の一方的な退職日の決定を防げます。
退職届の提出依頼・受理をする
退職代行を使われた会社が最後にすべきことは、退職届の提出依頼と受理です。
退職届とは、従業員が会社に退職の意思を正式に伝える書類です。
退職届には、以下のような内容が記載されている必要があります。
退職届は、原則として従業員が自分で作成し、署名・捺印して提出する書類ですが、退職代行業者は従業員の代理人として退職届を提出できます。
退職代行業者に退職届を郵送やメールで送付してもらい、受領したことを返信するか、退職代行業者に退職届を直接持参してもらい、受理します。
貸出品の返却を依頼する
退職代行業者から退職の連絡を受けた場合、最後に貸出品の返却を依頼する必要があります。
貸出品とは、会社が従業員に貸与した備品などのことです。
例えば、以下のようなものがあります。
従業員は、退職するときに貸出品を会社に返却する義務があります。
退職代行業者に貸出品の一覧と返却期限を伝え、貸出品の返送先や返却方法を指示して貸出品の返却を依頼するとよいでしょう。
貸出品を返却してもらうことで、会社の財産や情報を保護できます。
退職代行を使われた際の注意点
退職代行を使われた会社は、以下の3つの点に注意する必要があります。
一つずつ順番に解説します。
退職代行業者の交渉に安易に応じない
退職代行業者は、従業員の代理として会社側と交渉をおこなうことがあります。
しかし、もし退職代行業者の運営元が民間企業だった場合、安易に交渉に応じてはいけません。
民間企業が運営する退職代行業者には会社側と交渉する権利がありません。
弁護士や労働組合が運営・提携する退職代行業者以外の業者が交渉をおこなうことは、非弁行為に該当するため法律で禁止されています。
一方で、弁護士や労働組合が運営・提携する退職代行業者は会社と交渉する権利があるため、その場合は退職代行業者の主張に対して、冷静かつ慎重に対応しましょう。
退職代行業者の交渉に応じるかどうかは会社の判断によりますが、以下のような点を考慮するとよいでしょう。
- 退職代行業者の要求が雇用規定や労働契約に基づいているか
- 退職代行業者の要求が法律や社会通念に適合しているか
- 法的に交渉権を持つ弁護士や労働組合が運営・提携している退職代行業者であるか
また、退職代行業者の交渉に応じる場合は、書面での確認や契約をおこなうことが重要です。
無理に本人と連絡を取らない
退職代行業者から退職の連絡を受けた場合、会社は本人と連絡を取りたいと思うかもしれません。
しかし、無理に本人と連絡を取ると逆効果になることが多いです。
なぜなら、退職代行を使う従業員は会社との関係を断ち切りたいとの強い意思を持っている場合が多く、無理に本人と連絡を取ると以下のような問題を引き起こす可能性があるためです。
- 会社に対する不満やストレスだった場合、本人の心理的な負担を増やす
- 会社に対する恐怖や脅迫だった場合、本人の安全を危険にさらす
- 会社に対する悪意や敵対だった場合、本人とのトラブルや争いを激化させる
無理に本人と連絡を取ることは、本人の意思やプライバシーを尊重しないことになります。
そうなると、会社と従業員の間にさらなるトラブルを引き起こす可能性があります。
会社側は、本人と連絡を取る必要がない限り、退職代行業者とのやりとりに専念したほうが賢明です。
どうしても本人と連絡を取る必要がある場合は、本人に連絡する目的や内容を退職代行業者に伝え、本人に連絡するタイミングや方法を退職代行業者に相談してみましょう。
速やかに対応する
退職代行を使われた場合、会社側は速やかに対応する必要があります。
なぜなら、退職代行を使う従業員は、すでに会社に対する忠誠心や責任感を失っている場合が多く、仕事の引き継ぎや残務処理をしないことが多いためです。
速やかに対応をおこなうことで、以下のようなメリットがあります。
退職代行業者からの連絡には迅速に返答し、退職代行業者からの要求や質問に明確に回答するよう心がけてください。
また、退職代行業者とのやり取りを書面で残すことも忘れないようにしておきましょう。
加えて、従業員の仕事の引き継ぎや残務処理については、他の従業員や上司に依頼するなどの対策を講じることが望ましいです。
退職代行で退職が決まったあとに会社側がすべきこと
退職代行で退職が決まったあとに会社側がすべきことは、大きく分けて以下の2つです。
それぞれ詳しく解説します。
退職代行を使われた理由を考える
退職代行を使われたことは、会社にとって大きな問題です。
会社の改善点や課題を見つけるためにも、退職代行を使われた理由を考えることは会社側にとって重要なことです。
従業員が退職代行を使う理由としては、以下のようなものが挙げられます。
- 会社の人間関係や職場環境に耐えられない
- 会社の方針や業務内容に納得できない
- 会社の労働条件や待遇に不満や不公平感があった
- 会社に退職を申し出ると退職金や給与の未払いなどの不利益を受けると思われた
- 会社に退職を申し出ると退職を引き止められたり、嫌がらせを受けたりすると思われた
- 会社に退職を申し出ると感情的なトラブルに巻き込まれると思われた
上記の理由は、会社側にとっては深刻な問題です。
会社の経営や人事に影響を及ぼすだけでなく、会社の評判やブランドイメージにも悪影響を与える可能性があります。
退職代行を使われた場合は、会社側は従業員の声に耳を傾け、会社の問題点や改善策を見つける機会ととらえるべきです。
退職代行を使われた従業員に対しては、できるだけ丁寧に対応し、退職手続きをスムーズに進めることが望ましいです。
辞めた従業員の穴埋めをする
退職代行で退職が決まったあとは、辞めた従業員の穴埋めをする必要があります。
退職代行を使われた場合、会社側は従業員の退職したい意思を事前に察知できません。
そのため、人員の不足や業務の遅延などのトラブルに直面する可能性が高くなります。
会社側は、辞めた従業員が担当していた業務や役割を引き継ぐ人や方法を、早急に見つける必要があります。
その際には、以下のようなことが重要です。
辞めた従業員の穴埋めは、会社の業務やサービスの品質や効率を維持し、顧客や取引先との信頼関係を保つために重要なことです。
会社側は、辞めた従業員の穴埋めを適切におこなうことで、会社の機能や活力を維持できます。
まとめ
- 退職代行を使われた場合、慎重な対応が必要
- 退職代行業者の資格や信頼性をチェックする
- 退職代行の交渉には安易に応じない
- 本人には無理に連絡を取らず、速やかに対応する
- 退職代行を使われた理由を考え、今後の離職率低減に務める
本記事では、退職代行を使われた場合の会社側の対処法をご紹介しました。
退職代行を使われた際は、本人確認や退職意思の確認をおこない、退職届の受理や貸出品の返却を適切に処理するなど、慎重に対応する必要があります。
本記事を役立てて、退職代行に対応するとともに、退職代行を使われる原因を分析し、従業員の満足度やモチベーションを高めて離職率の低減や雇用の定着促進に努めましょう。