介護タクシーを開業する方法は?必要な資格や資金を解説

介護タクシーを開業する方法は?必要な資格や資金を解説 コラム

「介護タクシーの開業までの手続きが知りたい」
「介護タクシーを開業するには何が必要?資金はどれくらいいる?」

介護タクシーを個人で開業することを考えている方のなかには、上記のような疑問を持っている方もいるのではないでしょうか。

そこで今回は、介護タクシーで開業するときの方法について具体的に解説します。

介護タクシーとは

介護タクシーとは、一人で移動できない高齢者や障害者を支援することを目的とする仕事で、以下の2つの種類があります。

  • 介護タクシー(福祉タクシー)
  • 介護保険タクシー

介護タクシーは利用者の移動にのみ特化しているのが特徴で、介助などのサポートはしません。

一方、介護保険タクシーは利用者の乗り降りのサポートなどもするのが特徴で、介護保険が適用されることから、主に在宅で介護されている方が利用する傾向にあります。

介護保険タクシーを開業する場合は、法人化したり後述するように介護職員初任者研修の資格が必要になったりします。

少子高齢化が加速する現代社会においては、今後介護タクシーの需要が伸びる可能性は高いでしょう。

ただし、一般的なタクシー業務と比較して営業時間が短い傾向にあるため(午前8時〜午後6時など)、高い収入を得るには工夫が必要です。

介護タクシーで開業するために必要な資格

介護タクシーで開業する場合、必要な資格は以下の2つです。

ここから具体的に解説します。

普通自動車第二種免許

介護タクシーで開業するときに必要な資格は、普通自動車第二種免許です。

普通自動車第二種免許は、利用者を車に乗せ、運賃を受け取る場合に必要になる免許です。

普通自動車第二種免許を取得するには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 普通自動車免許取得から3年以上経過していること
  • 片眼0.5以上・両眼0.8以上の視力があり、信号機の燈火が判別できること
  • 満21歳以上であること

この条件を満たせば、学科教習や技能教習を受けることができ、合格すれば免許を取得可能です。

介護職員初任者研修

介護タクシーで開業するときにもう一つ受けておきたいのが、介護職員初任者研修の受講です。

この研修は、介護の基礎的なスキルや知識などを身に付けられるもので、年齢や学歴などの条件はありません。

資格取得するには講義と演習を130時間受けたうえで、試験に合格する必要があります。

介護タクシーで開業するときに必須ではないものの、介護保険タクシーとして仕事ができることから、収入をあげやすくなるでしょう。

介護タクシーを開業する手順

 

介護タクシーを開業するには以下の手順を踏むのがポイントです。

ここから具体的に解説します。

許可要件を確認する

法人を設立したあとは、運輸局から事業許可を受けるうえで必要な3つの要件を満たしましょう。

  • 人的要件:普通自動車二種免許の資格保有者、運行管理者、整備管理者、指導主任者、苦情処理責任者を配置する
  • 設備要件:土地・建物の使用権限が3年以上あること、建築基準法などに違反していないこと、事務室・休憩室があること、営業所に車庫を併設すること(できない場合は営業所から2km以内に設置する)など
  • 資金要件:自己資金が所要資金の50%以上で、開業するときに必要な資金の100%以上を上回ること(車両費、土地費、建物費、備品費、運転資金、保険、その他)

上記の要件を満たせば、一般乗用旅客自動車運送事業(福祉輸送事業限定)の許可を得られる可能性があります。

運輸支局へ許可申請書を提出する

許可要件を満たせたら、次に運輸支局に対して介護タクシー開業の許可申請書を提出しましょう。

各運輸支局によって申請方法が異なるケースもあるので、住んでいる地域の運輸支局に問い合わせることが望ましいです。

法令試験と事情聴取を実施する

運輸支局に許可申請書が受理されたら、法令試験と事情聴取がおこなわれます。

法令試験は8割以上正解すれば合格となり、試験には運送六法などの参考書籍を持ち込むことができます。。

もしわからない場合でも試験中に調べられるので、落ち着いて試験に臨みましょう。

許可証の交付を受ける

法令試験に合格できれば、運輸支局から許可証を受けられます。

許可証をもらえるまでの期間は、約2ヵ月となっています。

時間がかかるので、許可証の交付までに開業準備を進めるとよいでしょう。

登録免許税を納付と届出をする

許可証の交付を受けたあとは、登録免許税3万円を指定された期限までに納付し、領収書を運輸局へ届けましょう。

運賃と約款の認可申請をする

登録免許税の納付・届出をしたあとは、運賃と約款の認可申請をします。

もし基準に満たない場合は認可がおりず、介護タクシーの開業ができません。

介護タクシーに使う車両の登録や検査をおこなう

許認可申請がおりたあとは、介護タクシーに必要な車両の検査を受け、介護タクシーとして登録しましょう。

車両を取得するときは、介護タクシーとして営業できるものを選ぶのがポイントです。

  • 回転式・リフトアップに対応するシートがある
  • 車椅子・ストレッチャーを移動できるリフトやスロープがある

一般的に販売店がおこなう車両の検査に合格すれば、営業ナンバーである緑ナンバーへの登録が可能です。

運輸開始届を提出する

車両の登録ができたら、許可証の取得日から6ヵ月以内に陸運支局へ運輸開始届を提出しましょう。

提出する書類は具体的に以下のとおりです。

  • 車検証のコピー
  • 任意保険本性のコピー
  • 運行管理者選任届
  • 整備管理者選任届
  • 指導主任者選任届
  • 就業規則のコピー
  • 労働保険・保険関係成立届のコピー
  • 健康保険・厚生年金保険新規適用届のコピー
  • 営業所・車庫・営業車両の写真

陸運支局に届出が受理されれば、すべての手続きは完了です。

介護タクシーの開業に必要な資金

介護タクシーを開業するときは、物件の取得や資格取得などでさまざまな費用が発生します。

ここから、上記の費用に関して具体的に解説します。

法人設立にかかる費用

介護タクシーを開業するにあたって法人を設立する場合はその費用がかかります。

以下のとおり、法人の種類によって必要な費用は異なる点が特徴です。

NPO法人:数千円〜数万円程度
株式会社:約22万円
合同会社:約10万円

NPO法人や合同会社として開業する場合は比較的安くできますが、株式会社の場合は20万円以上かかります。

車両にかかる費用

介護タクシーを開業するときは車両の購入などの車に関する費用が必要で、具体的には以下のとおりです。

  • 車両費:(軽自動車)100万円以上(ワゴン車)300万円以上
  • 車庫費:1ヵ月に1万5,000円程度
  • 任意保険料:1ヵ月に1万円程度

特に大きな金額になりやすいのは車両費です。

費用を抑えるには中古のものを選んだり複数の会社を見たりするとよいでしょう。

事業所にかかる費用

介護タクシーを開業するときに必要な費用として、事業所に関する費用があげられます。

事業所として物件を契約する場合、地域や大きさなどによって費用の相場は大きく変わるのが特徴です。

自宅で開業する方の場合は物件を取得するための費用が不要で、開業資金を抑えられます。

ただし、従業員が休憩するためのスペースを確保するなど、許可を受けるための設備要件は満たす必要があります。

資格取得にかかる費用

介護タクシーを開業するときに必要な費用として、資格取得に関するものがあげられます。

前述のとおり、介護タクシーを開業するには普通自動車第二種運転免許と、場合によっては介護職員初任者研修の2つの資格が必要です。

資格取得に必要な金額は、具体的に以下のとおりです。

  • 普通自動車第二種運転免許:約20万円
  • 介護職員初任者研修:約9万円

免許取得に失敗すると、その分費用が加算されてしまうので注意しましょう。

設備・備品にかかる費用

介護タクシーを開業するときには設備や備品にも費用がかかります。

具体的には車椅子や印鑑、電話、デスクなどがあげられます。

100均やフリマアプリなどを活用すれば、初期費用を抑えられるので、いろいろと調べて工夫してみましょう。

運営資金

介護タクシーを開業するときは運営資金があります。

人件費については、人数や家賃の有無などによって異なるものの、基準としては従業員の約3ヵ月分の資金を用意しておくとよいでしょう。

また、人件費の他にも家賃光熱費や通信費、燃料費、備品費などさまざまな費用が必要です。

開業して思うように売上をあげることができなくても大丈夫なように、運営資金に余裕をもって事業をスタートしましょう。

介護タクシーの開業で活用できる補助金・助成金

介護タクシーを開業するときは、条件を満たせばさまざまな補助金や助成金をもらえるケースもあります。

該当しやすいものは以下のとおりです。

ここから、上記の補助金と助成金について具体的に解説します。

福祉タクシー車両導入促進事業費補助金

介護タクシーを開業するときにもらえる可能性がある補助金として、福祉タクシー車両導入促進事業費補助金があげられます。

神奈川県や千葉県で福祉タクシーを開業する方が対象で、車両購入費の一部を補助してもらえます。

開業する地域によって適用範囲や金額が異なるので、各地方自治体へ問い合わせるのが確実です。

小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金も開業に活用できます。

小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者の経営のサポートを目的として、業務効率化に必要な費用面の3分の2(上限50万円)を補助してくれるものです。

この補助金は郵送で申し込むことができますが、事前に商工会議所で事業支援計画書を作成してもらわないといけない点は注意が必要です。

地域公共交通確保維持改善事業費補助金

介護タクシーの開業には、地域公共交通確保維持改善事業費補助金も活用できる場合があります。

この補助金の要件に該当すれば、介護タクシーを購入するときに、車両価格の3分の1の金額を受け取れる可能性があります。

  • 補助金の上限金額は60万円
  • リフト装置付きの場合、上限金額は80万円

補助金の利用を検討するにあたり、上記の点を理解しておくとよいでしょう。

地域雇用開発助成金

地域雇用開発助成金は、過疎地域など求人数の少ない地域において、地元の方を採用した場合にもらえる助成金です。

雇用人数や設備費用などによってもらえる金額は異なり、48万円〜960万円と幅があります。

助成金を受け取るには、に雇用に関する計画書を労働局へ提出したり計画期間内に施設整備をしたりする必要があります。

キャリアアップ助成金

アルバイトの従業員を正社員にする、といった場合に活用できるのがキャリアアップ助成金です。

この助成金は、非正規で雇った労働者のキャリアアップ(正社員登用制度の設置、待遇面の是正など)を促進する制度を導入した事業所が対象です。

助成金を受け取るには、以下の条件をみたす必要があります。

  • 雇用保険に加入すること
  • 雇用保険適用の事業所にキャリアアップ管理者を設置すること
  • キャリアアップ計画書を作成すること

もらえる金額は1万9,000円〜57万円となっており、助成金のコースによっても異なります。

まとめ

ここまで、介護タクシーの開業に必要な資格や開業までの手続き、資金などを解説してきました。

本記事のまとめは以下のとおりです。

  • 介護タクシーとは、介護を必要とする人や障害者などの移動をサポートするもの
  • 介護タクシーには、福祉タクシーと介護保険タクシーの2つがある
  • 介護タクシー開業には、普通自動車第二種免許と状況に応じて介護職員初任者研修資格が必要
  • 介護タクシー開業には、運輸局や運輸支局に書類提出し、国交省大臣の許可を得る必要がある
  • 介護タクシーを開業するには、法人設立費用や車両費用などの費用が発生する
  • 介護タクシーで活用できる補助金や助成金は、福祉タクシー車両導入促進事業費補助金や小規模事業者持続化補助金など

介護タクシーで開業するときは、免許の取得や許可申請など、いろいろな手間がかかります。

しかし、介護タクシー業は高齢者や障害者などの役に立つ、社会的に貢献できる仕事であり、大きなやりがいを感じられるでしょう。

本記事を参考に、介護タクシーの開業に関して理解していただければ幸いです。

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