独立採算制は経営手段の1つです。
業務の効率化を図れるため、採用する企業が増えています。
ただ、いざ導入するとなると、
「そもそも独立採算制とは何なのか」
「独立採算制を導入すると、どう変わるのか分からない」
「独立採算制を導入して失敗したら怖い」
など疑問点が多く、なかなか導入に踏み切れないでしょう。
そこでこの記事では、独立採算制のメリット・デメリットや、導入する際のポイントについて解説します。
独立採算制とは
独立採算制とは、企業の中にある部門や事業部を切り分け、それぞれを独立した経営組織とみなして事業を推進する経営手段です。
各部門、事業が単体で利益を生み出せるようになることを目的としているため、「部門別採算制」と呼ばれることもあります。
事業部をひとつの会社として扱う「カンパニー制」や、組織を5〜10人程度の小集団に分けて運営する「アメーバ経営」などが事例としてよく知られています。
独立採算制のメリット
独立採算制を導入するメリットは以下の3つです。
それぞれ詳しく紹介します。
意思決定スピードが上がる
独立採算制を導入することで、意思決定スピードを上げることができます。
これは、部門のトップに権限を委譲するためです。
役員会などの承認プロセスが減るため、柔軟に動けるようになります。
その結果、市場ニーズの変化にも迅速に対応でき、ビジネスチャンスを逃しません。
事業拡大や利益向上につながるでしょう。
収支責任が明確化する
独立採算制を導入すると、各部門ごとの収支が明らかになり、責任が明確化されます。
部門ごとの利益が見えるようになると、なるべく無駄を省こうという考え方が高まり、メンバー全体のコスト意識の向上につながります。
また、部門間での競争意識が生まれます。結果として、各部門が生み出す利益が高くなる生産性向上の効果も期待できるでしょう。
後継者の育成ができる
独立採算制は、後継者の育成にも役立ちます。
独立採算制では各部門を企業として見立てるため、メンバー各々の役割や責任範囲が拡大します。
すると、仕事に対する視座が高まり、経営者目線を持った人材の育成が可能になるのです。
そのため、独立採算制は後継者不足の企業にとって有用な選択肢のひとつになり得ます。
独立採算制のデメリット
独立採算制にはさまざまなメリットがありますが、その反面気をつけなければいけない点もあります。それが以下の3つです。
独立採算制を導入する前に、そのデメリットも把握しておきましょう。
業務が重複する
独立採算制を導入すると、業務の重複が発生します。
例えば、経理や人事などの管理部門は、企業内に1つで問題ありません。
しかし、独立採算制の場合は各部門への設置が必要です。
その分コストが多くかかってしまいます。
厳格に分割しようとすると業務が重複してしまい、無駄が増えてしまいます。
情報共有や連携が取りづらくなる
独立採算制を導入すると部門ごとの独立性が高まり、情報共有や協力関係の構築が難しくなります。
他部門で問題が発生し解決したとしても、その内容は共有されません。
そのため、同じような課題でも1から対応しなければならなくなるのです。
つまり、企業内での横のつながりが薄くなってしまうのです。
その結果、業務の効率が落ちたり、新規事業や新しいアイデアが生まれづらくなったりなど、デメリットが生じます。
成果至上主義になる
独立採算制は各部門を企業と見立てるため、部門間競争が起こりやすくなります。
ある程度の競争であれば生産性の向上につながるので、むしろメリットに感じるでしょう。
しかし、それが激化すると利益を第一にする成果至上主義に陥ってしまいます。
ノウハウを独占しようと部門内に情報を秘匿したり、部門間の協力を避けたりなど、逆効果になってしまうのです。
場合によっては、成果を追い求めるあまり、粉飾決算など不正が発生する場合もあります。
このように、独立採算制をただ導入するだけでは、成果を追い求める部門が増えて、全体の管理が大変になる恐れがあります。
独立採算制を導入する際にすべきこと
独立採算制のデメリットを抑えてメリットのみを活用したいなら、以下のポイントを意識してみてください。
フィロソフィを徹底する
独立採算制を導入する際は、経営理念を確立して社内に浸透させることが大切です。
なんのための仕事なのかが明確になり、意思決定を良い方向に導くことができます。
部門間の関係が薄れたり、過剰な成果至上主義に陥ったりするデメリットを軽減できるでしょう。
評価制度を見直す
評価制度の見直しは、過剰な成果至上主義の防止に有効です。
各部門への評価基準を数字や結果だけにするのではなく、そのプロセスも含めましょう。
また、他にも企業として意識させたい部分を評価制度に組み込むよう、検討するのもおすすめです。
リアルタイムに情報を開示する
独立採算制を導入するなら、リアルタイムに情報を開示できるように、工夫をしておくべきです。
各部門が情報を開示するようになっていれば、業務の重複を防ぐことができます。
1つの部門が情報を独占しようと閉鎖的になれば、他の部門にも影響がでてしまいます。
また、独立採算制の大きな目的のひとつである、個人個人が自分の部門の利益のために判断をして行動するという効果を生み出すには、自分の部門の状況が確認できるようにしておくことが不可欠です。
リアルタイムに情報を確認できるように、情報をオープンにするための仕組みを作っておきましょう。
ワークライフバランスに配慮する
独立採算制によって、成果至上主義や部門間の競争が激しくなると、働きすぎる社員が増える可能性があります。
トラブルが起きないよう、ワークライフバランスには常に気を配っておきましょう。
まとめ
- 独立採算制とは、起業の中にある部門や事業部を切り分け、それぞれを独立した経営組織とみなして事業を推進する経営手段を差す
- 独立採算制には、業務の効率化や人材育成の効果が期待できる
- 独立採算制を導入すると、部門間競争の激化や横のつながりの希薄化に注意が必要
- 独立採算制を導入するなら、フィロソフィの徹底や評価制度の見直しを同時に行うことが大切
この記事では独立採算制について解説しました。
独立採算制は業務を効率化するのに適した経営手段です。
しかし、導入方法を間違えてしまうと、企業を崩壊させてしまう恐れもあります。
少しでもデメリットを軽減するために、今回紹介した導入のポイントを意識してみてください。