独立開業でも利用可能!おすすめの助成金や活用するメリットを紹介

コラム

独立開業の際に課題となるのが、開業資金の問題です。

「資金は余裕をもって準備しておきたい」

「新規開業で利用できる制度はないだろうか」

このように、独立開業にあたっての資金調達方法を探している方も多いのではないでしょうか。

日本政策金融公庫の「2022年新規開業実態調査」によりますと、開業の際に苦労した点として、以下のようなアンケートデータがあります。

  • 資金繰り・資金調達 57.1%
  • 顧客・販路の開拓 47.4%
  • 財務・税務・法務に関する知識の不足 31.0%

(参考:日本制作金融公庫|2022年度新規開業実態調査

このように、開業時には半数以上の方が資金問題で苦労されています。

そこで、この記事では、これから独立開業を考えている方に向けて、資金調達に利用できる助成金について解説します。

助成金は、受給要件を満たせば返済不要で資金を得られる、魅力ある資金調達方法です。

独立開業の助けになりますので、ぜひ参考にしてください。

独立開業する際の助成金について

2023年6月1日現在、厚生労働省・中小機構が提供している独立開業者向けの助成金です。

  • 地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)
  • 特定求職者雇用開発助成金
  • キャリアアップ助成金正社員化コーストライアル
  • 雇用助成金一般トライアルコース
  • 両立支援等助成金

上記以外にも自治体ごとに、さまざまな補助金や給付金の制度が実施されています。

まずは「助成金ってどういうものなの?」と思われる方へ、助成金について説明します。

助成金とは

助成金は、厚生労働省が実施している返済不要の給付金です。

雇用の促進や職場環境の改善などを支援する目的で、ほぼ常に実施されています。

原資は会社や個人が負担している雇用保険料、国税や地方税で、行政サービスの一環となっているため返済の必要がありません

ただし、支給には要件があるため、申請可能かどうか、自分で確認をしてから申し込む必要があります。

助成金と補助金との違い

助成金と補助金は、主な実施団体や受給までのハードルの高さが違います。

助成金は、給付条件を満たしていれば、ほぼ受給できます。

補助金には、募集定員や予算があり、上限に達した時点で申請ができなくなる場合があります。

詳細は以下のとおりです。

助成金と補助金の違い

助成金 補助金
主に厚生労働省が実施しており、雇用に関するものが一般的である 国や自治体が、特定の産業の育成や施策を進めるために交付する
要件を満たしていれば、ほぼ支給される 予算により上限が設定されていることが多く、受給できない可能性もある
申請期間が長期間または随時の場合が多く、比較的制約が少ない ほとんどが公募で、タイミングよく応募する必要がある

独立開業する際に助成金を活用する3つのメリット

ここからは、独立開業する際に助成金を活用する3つのメリットについて解説します。

返済不要の資金が得られる

助成金を活用する最大のメリットは、返済する必要がないことです。

開業費用の一部が助成金でまかなえれば、資金繰りの大きな助けとなります。

しかし、万が一、受給後に要件を満たしていなかったことが判明するなどすると、不正受給と見なされ、助成金の返済や事業者名の公表などのペナルティを受けることになります。

申請の際は要件に注意しましょう。

会社の信頼度が上がる

厚生労働省関連の助成金を受け取る際には、就業規則や賃金台帳など、事業の実態がわかる書類を提出して公的機関の審査を受けます。

審査を通過して助成金を受け取ることができれば、国に事業の労務環境が整備されていると認められたことになり、信頼度が増して、その他の公的融資も受けやすくなるというメリットがあります。

働きやすい職場環境が生まれる

前述のとおり、助成金を受け取るためには、就業規則や賃金台帳、場合によってはさらに出勤簿など、労務関係の書類提出が必要となることがあります。

労働法を遵守していなければ助成金を受給できないため、こうした手続きを通して結果的に、正しい労務管理をする組織に成長できるというメリットもあります。

助成金は、人材育成や能力開発、働き方改革、仕事と家庭の両立支援といった目的に資金を利用できる制度です。

働きやすい職場環境にあまり意識を向けられない開業直後の時期にこそ、このメリットを理解して、助成金の申請を検討してみましょう。

独立開業する際に助成金を活用する3つのデメリット

次に、独立開業する際に助成金を活用する3つのデメリットについて解説します。

受給要件が厳しい

助成金は不正受給を防止するため、年々受給要件が厳しくなっています。

基本的に、助成金を受給する際は、以下のような要件を満たしている必要があります。

  • 就業規則を作成している
  • 雇用契約書を交わしている
  • 6ヶ月以内に従業員解雇がない

また、実際の対象労働者の勤務実態を確認してから受給決定になる助成金もあり、申請から受給まで時間がかかることも多くあります。

受給手続きに手間がかかる

助成金の受給手続きには、申請書類の作成に加え、賃金台帳や出勤簿などをの添付も必要な場合があり、多くの手間がかかります。

「申請要件は満たしているのに、書類に不備があって一度で申請を受理してもらえない」というケースも多くあります。

こうした作業に不慣れな方が、一人で助成金の申請をするのはとても大変です。

コストが多少かかりますが、助成金に詳しい社会保険労務士に相談し、書類づくりをサポートしてもらいながら申請する方法もあります。

申請できる期間が限られている

助成金の申請期限に1日でも遅れると、その申請は受理されません。

助成金を受給するためには、必要な書類を不備のない状態で、期限内に提出する必要があります。

なお、基本的に助成金が受け取れるのは、制度を導入して実績報告をした後です。

制度の導入などにかかるコストは、一旦は負担する必要があることを理解しておきましょう。

独立開業におすすめの助成金5選


開業時に利用できる厚生労働省関連の助成金は、数多く存在します。

ここでは、主な独立開業資金支援制度としての助成金について紹介します。

地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)

地域中小企業応援ファンド (スタート・アップ応援型) は、中小機構と都道府県、金融機関等の資金によってファンド(基金)が運用され、その運用益により中小企業者等が支援を受ける仕組みです。

ファンドには、農林水産物や伝統技術の活用を支援する「地域中小企業応援ファンド」と、中小企業者と農林漁業者の連携を支援する「農商工連携型地域中小企業応援ファンド」の2種類があり、地域や事業内容などの要件に合うものがあれば、該当の助成を受けることができます。

助成金は返済の必要がなく、複数年にわたって運用されるファンドもあります。

特定求職者雇用開発助成金

特定求職者雇用開発助成金 は、高年齢者や障碍者などの就職困難者を継続的に雇用する事業主への給付金です。

ハローワーク等の紹介により、雇用保険の一般被保険者(または高年齢被保険者)として、2年以上かつ65歳以上になるまでの雇用を前提として雇い入れる事業者に対して支給されます。

就職困難者の就労支援だけでなく、事業者の安定した雇用も支援する制度です。

詳細は、下記のとおりです。

短時間労働者以外の者
対象労働者 合計支給額(中小企業事業主の場合)
高年齢者60歳以上・母子家庭の母等 60万円
重度障害者等を除く身体知的障害者 120万円
重度障害者等 240万円
短時間労働者(1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満)
対象労働者 合計支給額(中小企業事業主の場合)
高年齢者60歳以上・母子家庭の母等 40万円
重度障害者等を含む身体知的・精神障害者 80万円

(参考:厚生労働省|特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)

就業規則、勤怠実績、総勘定元帳等の提出が求められる可能性がありますので、審査に必要な書類を整理保管し、いつでも提出できる状態にしておきましょう。

キャリアアップ助成金・正社員化コース

キャリアアップ助成金 は、非正規雇用労働者のキャリアアップを促進するため、正社員化などの取り組みを実施した事業主に対して支給されます。

その中でも正社員化コースは、有期雇用労働者などを正社員化することで助成金を受給できる制度です。

詳細は、下記のとおりです。

支給額( 1人当たりの助成額)
雇用者の規模 有期雇用労働者 無期雇用労働者
中小企業事業主 570,000円 285,000円
大企業 427,500円 213,750円

※1年度1事業所あたりの支給申請上限人数 20名

加算額 ( 1人当たりの加算額)
措置内容 有期雇用労働者 無期雇用労働者
派遣労働者を派遣先で正社員として直接雇用する場合 285,000円
対象者が母子家庭の母または父子家庭の父の場合 95,000円 47,500円
人材開発支援助成金の訓練終了後に正社員化した場合 95,000円 47,500円
うち自発的職業能力開発訓練または定額制の訓練終了後に正社員化した場合 110,000円 55,000円
勤務地限定・職務限定・短時間正社員制度を新たに規定し当該雇用区分に転換等した場合(1事業所あたり1回のみ) 95,000円( 大企業 71,250円 )

キャリアアップ助成金には、以下のとおり支給対象となる事業主の要件が定められています。

  • 雇用保険適用事業所の事業主
  • 雇用保険適用事業所ごとにキャリアアップ管理者を置いている事業主
  • 雇用保険適用事業所ごとに対象労働者に対してキャリアアップ計画を作成し、管轄労働局長の受給資格の認定を受けた事業主
  • 該当するコースの措置にかかる対象労働者に対する労働条件、勤務条件及び賃金の支払い状況などを明らかにする書類を整備し賃金の算出方法を明らかにできる事業主
  • キャリアアップ計画期間内にキャリアアップに取り組んだ事業主
  • 転換等前の6ヶ月と転換等後の6ヶ月の賃金を比較して3%以上増額していること

各コースの詳細は、厚生労働省ホームページで確認することができます。

トライアル雇用助成金・一般トライアルコース

トライアル雇用助成金一般トライアルコース は、安定的な就職が困難な求職者と雇用者が3ヶ月間の有期雇用契約をする制度です。

有期雇用契約満了日に、企業とトライアル雇用対象者双方の合意があれば、その社員を正社員として雇用することも可能です。

雇用側にとって一番のメリットは、人材を確保しつつ、助成金によって資金の補填ができることです。

また、トライアル雇用はあくまで試用雇用なので、本人の適性を見極めてから長期雇用をするかどうかの決定ができます。

助成金の支給額は、支給対象者1人につき月額4万円、1ヵ月単位で最長3ヶ月分まで支給対象となります。

ハローワーク等の紹介により、一般的な労働者と同程度の労働時間で、原則として3ヶ月間のトライアル雇用をすることが要件となっています。

両立支援等助成金

両立支援等助成金 は、仕事と家庭の両立を支援する制度です。

男性の育休取得の促進や、介護離職の防止などの目的で助成金を使うことができます。

両立支援等助成金は、以下の5つのコースに分かれています。

コース 支給額
出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金) 20万円(第一種)
介護離職防止支援コース 介護休業取得時 30万円
育児休業等支援コース 育児休業取得時 30万円
介護離職防止支援コース(新型コロナウイルス感染症対応特例) 5日以上10日未満 20万円、10日以上 35万円
育児休業等支援コース(新型コロナウイルス感染症対応特例 ) 10万円

両立支援等助成金はコースごとに異なる支給要件が設けられています。詳細は、厚生労働省ホームページで確認することができます。

その他の創業助成金

例えば、東京都内で創業予定の個人または創業から間もない中小企業者に対し、人件費等の必要経費を上限300万円助成する制度もあります。

(参考:TOKYO創業ステーション ※令和5年度第1回は申請終了)

その他、自治体ごとに様々な補助金・給付金があり、随時募集されています。

お住まいの自治体ホームページ、または J-Net21 で一覧が紹介されていますので、活用できる制度がないか、新しい情報をこまめに確認することをおすすめします。

助成金以外で独立開業の負担を軽減する3つの方法

ここまで、独立開業の際に利用できる助成金について解説してきました。

次に助成金以外で、独立開業の負担を軽減する3つの方法について紹介します。

フランチャイズに加盟する

フランチャイズとは、個人や法人がフランチャイズ本部から、店舗の作り方や成功しているサービス、ノウハウなどの指導を受け、その対価をフランチャイズ本部に支払う仕組みのことです。

1から自分で起業するのに対し、フランチャイズには多くの開業しやすいメリットがあります。

メリット

開業してお店を出す場合、まずは名前を知ってもらい、知名度を上げなくてはなりません。

しかし、フランチャイズに加盟すれば、すでに知名度がある状態から事業を始めることができます。

また、経営方法がすでに確立しているので、これから始めて独立する人でも安心して開業することができます。

デメリット

チェーン本部によって、支払うロイヤリティの算定方法が異なります。

例えば、経営が始まってから「想定以上にロイヤリティがかかる、利益がほとんど残らない」といった問題にもなりかねません。

契約を交わす際には、細かいところまでチェーン本部の方に説明を受けましょう。

融資を受ける

独立開業時の代表的な資金調達方法として、銀行や信用金庫からの直接融資があります。

メリット

金融機関による融資のメリットは、資金調達までの期間が短いということです。

審査を通過することができれば、支払いをする前に資金を調達することができます。

大手銀行や地方銀行、信用金庫など、借入先にはいくつかの候補が考えられますが、個人で開業するのであれば、開業資金の調達先として最初に検討したいのが日本政策金融公庫です。

日本政策金融公庫は一般的な金融機関を補完するために設立された政府の金融機関で、個人事業主や中小企業の資金調達を支援しています。

新たに事業を始める人または事業を開始してから税務申告を2期終えていない人が利用できる新創業融資制度は、最大で3,000万円(うち運転資金1,500万円)を原則無担保・無保障人で借り入れることが可能です。

(参考:日本政策金融公庫|新創業融資制度

デメリット

金融機関による融資を受ける際のデメリットは、事業計画や返済計画を作成しなければならないことです。

まだ事業の実績がない独立開業の直後は、信用が十分でないため、しっかりと事業計画を作成しなければ審査を通過することが厳しくなってしまいます。

また、借り入れ後も、返済計画を理解してもらうための説明などに想定以上に時間を取られてしまう可能性があります。

商工会・商工会議所を活用する

商工会・商工会議所は、各地域の事業者が会員となって、それぞれの事業や地域の発展のために活動する団体です。融資や経営相談などにも対応してくれます。

その地域で事業をする商工業者であれば、基本的には法人・団体・個人を問わず入会できます。

メリット

商工会・商工会議所では、以下のような相談ができます。

  • 経営相談・支援
  • 税務相談・経理
  • 金融相談・斡旋
  • 労務相談
  • 連鎖倒産防止相談

また、商工会議所のセミナーを受けておくと、資金調達の際の金利が安くなることがあります。

デメリット

商工会や商工会議所はあまりPRをしていないため、公式ホームページやパンフレットから積極的に情報入手をすることが必要です。

また、商工会議所の会費や共済の引き落としは、ネット銀行不可の場合があります。

ゆうちょ銀行も不可というところもあるため、注意をしてください。

地元の銀行や信用金庫の口座開設も考慮しておきましょう。

なお、商工会・商工会議所に入会することには、人脈や商売のチャンスが広がるなどの、資金調達以外のメリットが多数あります。

賢く活用してみてください。

独立開業する際の助成金おすすめ5選|まとめ

今回は、独立開業する際の助成金おすすめ5選について解説しました。

  • 地域中小企業応援ファンド(スタートアップ応援型)
  • 特定求職者雇用開発助成金
  • キャリアアップ助成金正社員化コース
  • トライアル雇用助成金一般トライアルコース
  • 両立支援等助成金

独立開業の際に利用できる助成金や軽減方法を知っておけば、開業直後の資金繰りの助けになります。

今回の記事をぜひ参考にしてください。

なお、助成金は申請受付を途中で休止する場合もあります。

検討される場合は、中小機構や厚生労働省ホームページの最新情報をご覧ください。

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