好きな小物やインテリア、ハンドメイドの雑貨など、自分好みの雑貨を売って生計を立てたい……。
このように、自分のテイストを反映した雑貨屋の開業を考えている方も、多いのではないでしょうか。
しかし、雑貨屋の開業には、さまざまな準備が必要です。
本記事では、雑貨屋を開業するうえで必要となる資金や、保有しておくべき資格などを解説していきます。
雑貨屋を開業する方法
そもそも、雑貨屋の開業といっても、その形はさまざまです。
開業する方法によって、店舗運営の仕方や、必要資金も異なってきます。
まず、どのような形態で雑貨屋を開業するのか、明確に決めておく必要があるでしょう。
本項では、雑貨屋を開業する以下3つの方法について、解説していきます。
自分がどの方法で開業していくか、考えながら内容をチェックしてみてください。
実店舗
自分の好みを反映し、お客さんと触れ合いながら雑貨屋を経営していきたい場合には、実店舗での開業がおすすめです。
商品はもちろん、店舗の場所、内装に至るまで、あらゆる部分に自分のアイデアを反映させられる点が魅力です。
例えば、多くの雑貨を取り扱う店舗を経営したい、自分で飾り付けをした小さな雑貨店でのんびり働きたい、などの気持ちは、実店舗でしか実現できません。
ただし、店舗を構えるテナントの家賃や内装の工事費、店舗運営にかかる人件費など、発生するコストが大きいことには注意が必要です。
店舗の場所、商品の価格設定など、採算をとるためには綿密な計画が必要不可欠です。
フランチャイズ
フランチャイズとは、本部のブランド名を使用して、自店はその加盟店として自分の事業を展開していく開業方法です。
言い換えれば、自身の雑貨屋は、本部となる会社の「チェーン店」として、営業をしていくことになります。
なお、フランチャイズの雑貨屋開業にあたっては、店舗関連費やフランチャイズとしての加盟金など、フランチャイズ特有の各種コストが発生します。
チェーン展開の店舗だからコストがかからない、というわけではないため、費用の内訳をしっかりと確認しましょう。
ネットショップ
店舗をいきなり構えるよりも、まずは自宅での副業程度で雑貨屋を開業したい……。
そんな場合には、ネットショップでの開業がおすすめです。
近年、ネットショップ初心者でも気軽に開業できるECショップ運営サービスが人気を見せています。
ネットショップで開業すれば、店舗が必要ありません。
ECショップ運営サービスの利用料金や商品の仕入れにかかるコストを捻出できれば、コストを抑えて店舗運営できる点がメリットです。
しかしながら、インターネット上には競合も多数いるため、インターネット上で開業した雑貨屋が多くの人の目に留まるかどうかは、運営者の腕次第といえます。
雑貨屋を開業に必要な費用
雑貨屋を開業するうえでは、さまざまな費用が発生します。
事前に発生する費用、開業後に発生する費用を踏まえ、損益のシミュレーションをしておくことが重要です。
本項では大きく分けて「初期費用」「運転資金」の2種類を紹介していきます。
自分の想定している雑貨屋に、どの程度のコストがかかるか分析しつつ、参考にしてください。
初期費用
まずは、店舗の開業にあたって発生する初期費用についてです。
初期費用については、前述した「実店舗」「フランチャイズ」「ネットショップ」のどの形態で開業するかによって、大きく変わってきます。
例えば、実店舗で雑貨屋を開業する場合、テナントの敷金や礼金、前家賃、さらに内装工事費用などが必要です。
なお、日本金融金庫総合研究所が出している「2020年度新規開業実態調査」には、開業資金は500万円未満が43.7%、自己資金の調達額平均は266万円というデータが出ています。
雑貨屋を500万円未満の資金で開業するつもりだとしても、またその初期費用を借り入れで用意するとしても、最低半分の250万円程度は自己資金で用意ができるとよいでしょう。
また、フランチャイズやネットショップについては、自前で開業する場合とは、かかる初期費用が異なります。
フランチャイズでは、本部への「加盟金」「設備費」「保証金」などが最初に必要です。
代わりに、既に知名度があるため、宣伝広告費は抑えることができます。
一方、ネットショップなら、ショップの仕組みを利用する「サービス利用料」、店舗ロゴなどの「デザイン費」など、比較的低い金額で用意できるものだけで開業が可能です。
同じ雑貨屋でも、どのように販売をするかによって、必要となる初期費用が異なる点に留意しましょう。
運転資金
初期費用を準備して雑貨屋開業に成功しても、店舗経営には「運転資金」が必要になります。
実店舗やフランチャイズであれば、毎月の家賃や水道光熱費、店舗に置く商品を仕入れるための費用などの資金が不可欠です。
一方、ネットショップに関しては、サービスの月額料金と商品の仕入れ費用などで収まるため、店舗を持つ場合よりも運転資金を抑えることが可能です。
このように、雑貨屋の運転資金は、テナントの家賃や販売する商品の仕入価格によって大きく変動します。
開業を考えているエリアやテナントの家賃、売ろうと思っている商品の価格に応じて事前に運転資金の想定をしておき、余裕をみて数ヶ月分の資金を準備しておくのが無難です。
雑貨屋の開業に必要な届出・許可
雑貨屋の開業にあたっては、いくつかの届け出や、許可証を取っておく必要があります。
ここでは、必要となる届出・許可の具体例を3つ紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。
古物商許可
古物商許可とは、中古品の売買をおこなう際に必要となる許可証です。
雑貨屋の開業を考えている方のなかには、ヴィンテージ品など、中古品の販売を検討している方もいるでしょう。
このような店舗経営を考えている場合には、古物商許可を申請し、取得しておくことが必要となります。
万が一違反してしまった場合、古物営業法により、3年以下の懲役または100万円以下の罰金の罰則が課せられる可能性があるため注意してください。
なお、古物商許可の申請は、管轄の警察署に必要書類を提出することで完了します。
必要書類は古物商許可申請書一式、略歴書と誓約書とその他書類です。
申請時には手数料として19,000円が必要となりますので、併せて用意してください。
開業届
雑貨屋を個人の事業として開業するには、開業届を税務署に提出する必要があります。
開業届を提出しなくても法的な罰則は課せられませんが。基本的には開業後1ヵ月以内に届け出ることが推奨されています。
なお、開業届は、税務上のメリットが多い「青色申告」での確定申告をする場合は必須の手続きとなっているため、注意しましょう。
開業後、2ヵ月以内に青色申告の申請をすれば開業年から青色申告できますが、開業と同時に忘れずに届け出るのが無難です。
開業届の作成、提出にあたっては、「開業届」「本人確認書類」「マイナンバー」が必要です。必要書類を揃えたうえで、管轄の税務署で手続きをしてください。
青色申告承認申請書
青色申告承認申請書とは、確定申告において青色申告をする際に必要となる申請書です。
青色申告をする場合、その年の「3月15日」または開業から2ヵ月以内に、開業届とともに青色申告承認申請書の提出が必須です。
青色申告承認申請書を提出しないままの確定申告は、自動的に青色申告よりも税に関するメリットの少ない「白色申告」となりますので、注意しましょう。
青色申告承認申請書は、開業した雑貨屋を管轄する税務署の窓口で受け取るか、国税庁のページよりダウンロードできます。
必要事項を記入のうえ、開業届とともに期限厳守で提出してください。
雑貨屋を開業する手順
続いては、実際に雑貨屋を開業する際に必要となる、具体的な手順について解説していきます。
本項では以下の6ステップに分けて開業の流れを説明していきますので、ぜひ参考にしてください。
自身のケースに当てはめつつ、フローに沿って必要なことを検討していきましょう。
コンセプトを決める
開業前に、まず雑貨屋のコンセプト決めをしていきましょう。
どのような雰囲気のお店にしたいか、そのためにどのような商品を売るか、どのような層のお客さんに売るか……。
このように、コンセプトを最初に定めておくことで、開業に向けた明確な舵取りが可能になります。
例えば、「おしゃれな雑貨を売る」というような、ぼんやりしたコンセプトでは、どのような雑貨を仕入れるかなどが見えてきません。
具体的に「自分でもペットを飼うような動物好きのお客さんに、動物に関連したハンドメイド雑貨を売る」というコンセプトがあれば、ペットがいる家庭で使える雑貨、動物のデザインを使った雑貨を作って売ろうという方向付けが可能です。
出店方法を決める
続いて、開業する雑貨屋の出店方法を決めていきましょう。
前述したように出店方法は大きく分けて「実店舗」、「フランチャイズ」、「ネットショップ」の3種類です。
どの出店方法を選択するかによってかかるコストはもちろん、必要な手続きも大きく異なります。
それぞれのメリットとデメリット、用意できる予算の範囲など分析しつつ、マッチする出店方法で雑貨屋の開業準備を進めていきましょう。
届出や許可の申請をする
出店方法が決まったら、雑貨屋の開業に向けて必要となる届出や許可の申請手続きを進めていきましょう。
前項で紹介した「開業届」や「青色申告承認申請書」をはじめ、古物商許可など、開業に向けて必要となる手続きはさまざまです。
出店方法に沿って必要となる手続きを見定め、それぞれの手続きの期限に間に合うよう、早め早めの行動をするようにしましょう。
特に、税務手続きで重要となる開業届や青色申告承認申請書は、必ず確定申告の前に済ませるよう注意してください。
設備や道具を用意する
雑貨屋開店に備え、必要となる設備や道具を準備していきましょう。
例えば、実店舗であればテナントを押さえた後、什器やレジ設備、棚や店内装飾など、さまざまな設備を整えていく必要があります。
ファーストステップで決めたお店のコンセプトに沿って、イメージどおりのお店に仕上がるよう、準備を進めてください。
ネットショップでの運営では実店舗のような大規模な設備・道具は不要ですが、お店で扱う商品の在庫をストックしておけるスペースの確保が必要な場合もあります。
経営するネットショップの規模に合わせて、在庫管理できるだけの環境整備をしていきましょう。
スタッフの有無を決める
雑貨屋の開業において無視できないのは、スタッフの有無です。
当然、人を雇わず自分一人で経営していくことも可能です。
しかし、店舗の規模が一人で運営するには大きい場合や、想定を超える集客に成功した場合、個人のキャパシティでは対処できない事態に陥ることもあるでしょう。
例えば、絶えずレジ対応をすることになってしまい、商品に関する接客を求めているお客さんの対応が疎かになると、お店の評判が落ちる原因にもつながります。
想定している需要に対して個人で応えることが難しいと判断した場合には、スタッフを雇用する道を検討しましょう。
集客方法を検討する
雑貨屋を開業する前に、集客の方法についてもしっかりと検討しておくことが重要です。
集客は、雑貨屋をビジネスとして成立させるうえで、無視できない要素のひとつです。
印刷したチラシやクーポンの配布など、アナログな方法はもちろんですが、InstagramやTwitterなどのSNSを活用した集客方法も不可欠です。
店舗のSNSアカウントは開業前に作成し、販売する商品やお店の雰囲気などを紹介して、周知に活用していきましょう。
雑貨屋を成功させるコツ
最後に、雑貨屋の開業を成功させる3つのコツをまとめました。
どの項目も雑貨屋で売上をあげ、健全に経営していくうえでは不可欠です。
ぜひ開業前の参考にしてください。
ニーズを把握する
来店客のニーズを把握することは、集客や売上を増やしていくうえで重要な要素です。
例えば、閑静な住宅街にお店を構えており、客層は30代以上の主婦層が多いにも関わらず、女子高生向けの若いテイストの文具小物などを販売しているとしましょう。
このような状況を放置すると、お客さんたちが求める商品を見つけられず、客足が遠のいてしまう可能性があります。
店舗を構える場所や周辺に住む人々の層によって、来店客のニーズはさまざまです。
ニーズを正確に把握し、そのニーズを満たす店だとわかりやすくすることが、雑貨屋開業で成功を収めるうえで不可欠でしょう。
差別化を意識する
顧客目線での店舗経営ももちろん重要ですが、「差別化」も意識すべき要素の一つです。
ニーズの把握は、競合店舗もしていることが想定されます。
単純に需要を意識した商品展開ばかりをしていては、競合に先んじることは難しいでしょう。
そのため、需要に応えた店舗経営をするなかでも、自店の色を前面に押し出した「差別化」が重要です。
例えば、こだわりのある主婦向けのインテリアを販売するにあたって、自分が詳しい一点物のヴィンテージ品を推していくなど、自店の強みとして活かせる要素を取り入れましょう。
強みを意識することで、競合店舗との差別化につながるでしょう。
適切な在庫管理をする
雑貨屋においても重視すべきなのが、適切な在庫管理です。
在庫管理において回避すべき事態は、以下の2点です。
- 余剰在庫を抱えてしまう
- 在庫数の不足(お客さんに在庫を販売できない)
当然、売上になっていない在庫を抱えてしまうことは赤字の原因になります。
一方、在庫が足りず、商品を求めてやってきたお客さんに販売できなければ、売上を逃し、お店の評判を落としてしまうきっかけにもなるでしょう。
上記のような在庫管理上の問題を回避するためにも、自店で捌ける適切な在庫を把握する努力が重要です。
必要であれば在庫管理システムなども活用しつつ、店内の在庫状況を常に可視化できる環境整備を進めましょう。
まとめ
- 雑貨屋を開業する方法は「実店舗」「フランチャイズ」「ネットショップ」の3つ
- 雑貨屋を開業するには「古物商許可」と「開業届」が必要
- 開業届と一緒に「青色申告承認申請書」の提出がおすすめ
- 雑貨屋を成功させるには、ニーズの把握が大切
- システムを導入して適切な在庫管理をすることで、売り切れや余剰在庫を回避できる
自分が好きなものをお客さんに紹介して販売する雑貨屋は、夢のある職業といえます。
本記事で紹介した内容を参考に、ぜひ雑貨屋の開業で成功を目指してみてください。