近年、開業へのハードルが下がり、個人で独立開業する方も多くなりました。
これから会社を辞めて、独立開業を目指そうとしている方のなかにも、具体的にどのような準備や手続きが必要なのかわからずに、不安な方もいるのではないでしょうか。
事実、開業には準備をしなければならないことがたくさんあります。
個人として開業する以上、会社員のように手厚いバックアップを受けられるわけではないので、自分でしっかりと把握しておく必要があります。
当記事では、これから独立開業を目指す方に向けて、スタートの段階で失敗しないよう必要な手続き、用意すべきもの、独立の際にすべき申請まで安心して開業できるようしっかりと解説します。
独立開業するために必要な手続き
会社員を辞めて個人事業主として独立開業する場合、これまで会社がおこなってくれていた保険や年金の加入および切り替え手続きを自分でしなければなりません。
また、開業するために必要な届け出や申請も必要となってきます。
独立開業に必要な手続きは以下の項目です。
それぞれ詳しく説明します。
健康保険の切り替え
独立開業したら今まで会社で加入していた健康保険から、国民健康保険に切り替えなくてはなりません。
健康保険の加入資格は退職日の翌日に喪失してしまうので、退職日の翌日より14日以内に居住している市区町村役場で手続きをする必要があります。
会社員の場合、保険料は会社と折半していましたが、退職して国民健康保険に加入すると保険料は全額自分で支払わなければなりません。
国民健康保険料は前年度の所得額によって決まります。
覚えておきたいのは、退職後に収入が減った場合も前年度の所得が高ければ、保険料も高額になることです。
国民健康保険に加入する以外にも、会社員のときに加入していた社会保険に「任意継続」する方法があります。
任意継続しても保険料は全額自己負担になるため、いままでの倍の保険料になります。
一般的には、国民健康保険より任意継続の方が保険料は安いと言われていますが、実際に自分の保険料がいくらになるのかきちんと確認して選択しましょう。
なお、任意継続の加入期間は最長2年間となっているのでご注意ください。
国民年金への加入
会社員の場合、厚生年金に加入しているため給料から天引きされていましたが、独立開業すると国民年金への加入が必要です。
国民年金は、20歳以上60歳未満のすべての人が加入しなければなりません。
令和5年度の国民年金保険料は所得に関係なく月額16,520円です。
厚生年金保険と比べると納付額は少なくなりますが、同時に受給額も少なくなります。
窓口はお住まいの地域の市町村役場の国民年金窓口になります。
開業届の提出
個人事業主として開業する際には「開業届」「事業開始等申告書」の提出が必要です。
この2点は事業を開始したことを公的機関に示すための書類ですが、異なる点は提出先です。
「開業届」は税務署へ、「事業開始等申告書」は都道府県税事務所に提出します。
仮に開業届を提出しない場合でも罰則はなく、開業は可能です。
しかし、青色申告で確定申告をする場合は開業届の提出が節税の必須条件ですので、提出しておきましょう。
開業に必要な許認可の申請
開業する業種によっては許可や届出、登録などの許認可が必要な場合があります。
ちなみに、許認可とは「開業時に必要な手続き」を指します。
例えば、飲食店ならば保健所に営業許可申請が必要です。
軽トラック運送業なら運輸局長に届け出が必要です。
開業する業種により必要な許認可は変わってくるので、事前にきちんと調べて間違えないよう手続きをおこないましょう。
確定申告の準備
会社員の給与所得は会社が年末調整をしてくれますが、個人事業主が得る所得は「給与所得」ではなく「事業所得」となるため自分で確定申告をしなければなりません。
特に初めての確定申告の場合には、ギリギリになってまとめておこなうことはおすすめしません。
なるべく早めに準備しておきましょう。
事業を始めると毎月の売上以外にも必要経費が発生します。
その際に、経費の管理を怠ると、あとで確認が必要になってしまいます。
正しい確定申告のためにも、開業前に税金、会計の知識や会計ソフトの使い方、請求書や領収書の発行方法などに関する知識も勉強しておきましょう。
独立開業するまでに用意すべきもの
独立開業するまでに用意すべきものをまとめました。
いずれも事業をおこなうために必要なものばかりです。
開業前に確認し、忘れずに用意しておきましょう。
印鑑
印鑑は用途に合わせて異なる印鑑を使用するため、3種類の印鑑を作るのが一般的です。
印鑑には以下の3種類があります。
実印 | 印鑑登録された正式な印鑑で、契約書などに使用します |
銀行届出印 | 事業用の口座開設に使用します |
角印 | 屋号の入った角印は請求書や領収書の押印に使用します |
名刺
個人で事業をはじめるにあたって、まずは自分を知ってもらわなければなりません。
そのためにも自分がどのような肩書きで何をしている人なのか、一目でわかる名刺は開業前にぜひ準備しておきましょう。
取引先で名刺交換を求められることもありますし、ビジネスマナーを守るうえでも名刺は必要となります。
事業用クレジットカード
事業用の支払いはできる限り集約したほうが、お金の管理が楽になります。
そのためにも事業専用のクレジットカードの作成をおすすめします。
開業後ですと、個人事業主となり審査に通りにくくなるため、会社員などで定職に就いている間にクレジットカードを作成しておく方がよいでしょう。
事業用銀行口座
個人事業主として開業する際に、個人用の口座で使用すると、個人のお金の動きと、事業でのお金の動きがわかりにくくなります。
お金の動きが混同してしまわないように、事業用の口座を作っておきましょう。
ホームページ
どのような業種で開業するにせよ、自分の会社を知ってもらい、取引の幅を広げるためにもホームページは欠かせません。
顧客に必要な情報を届けるだけでなく、ホームページ経由での問い合わせなどを通じて新規顧客を獲得できる可能性もあります。
ホームページは会社の顔としての役割も果たすとても重要なものなので、できれば外注してプロに作成してもらうことを検討してみてください。
プリンター
オンラインでのやり取りが主流になっているとはいえ、書類や契約書、領収書など印刷が必要な場面は多くあります。
そのためプリンターはぜひ導入しておきたいところです。
会計ソフト
日々の帳簿付けへの負担を軽くするために、知識があまりなくても手軽に帳簿付けができる会計ソフトは今や欠かせません。
特にクラウド型の会計ソフトは改正などがあっても自動的にバージョンアップされるので、常に最新の状態で使用できるためおすすめです。
確定申告時に困らないためにも、帳簿付けは習慣化する必要があります。
そのためにも負担が軽くなる会計ソフトの導入は必須です。
独立開業するまでにすべき申請
独立開業までにすべき申請としては資金調達に関する申請があります。
独立開業にかかる費用をすべて自己資金でまかなうのは、かなりの負担になります。
そのために、補助金や助成金、融資などを適切に活用すれば独立開業のハードルを下げられます。
補助金・助成金
独立開業のコスト軽減策として、国や自治体の補助金や助成金を利用する方法があります。
メリットは融資と違い返済義務がないことですので、開業時には積極的に活用しましょう。
デメリットは、事業計画の策定をおこない申請先の審査を受ける必要があり、審査が厳しいこと事です。
補助金や助成金の募集要項などは各自治体により異なるため、各ホームページなどで事前にチェックしておきましょう。
日本政策金融公庫の新創業融資制度
開業のための資金調達方法として、日本政策金融公庫の新創業融資制度を受ける方法があります。
政府100%出資の金融機関のため、低金利、無担保、無保証人での資金調達が可能です。
融資を受けるためには、借入申込書と創業計画書を作成し、面談を経て審査がおこなわれます。
審査に通るためには創業計画書をしっかりと作成する必要があるので時間をかけて準備しましょう。
まとめ
- 健康保険や年金など会社員時代とは異なり自分でおこなう必要がある
- 開業届は確定申告時に必要となるので提出する
- 開業後、初めての確定申告は直前にまとめてではなく日々の帳簿付けなどを習慣化して時間をかけて準備しよう
- 事業用クレジットカードは、在職中に作っておくのがおすすめ
- 補助金や助成金は開業のコスト軽減につながるので申し込みを検討しよう
以上のように、独立開業するためには入念な事前準備が必要なことがおわかりいただけたのではないでしょうか。
当記事内の開業に必要な手続きや準備1つずつ確認しながら、しっかりと準備をすすめて万全な状態で独立開業しましょう。