税理士試験に合格し、資格を取得された方のなかには、独立開業を考えている方もいるのではないでしょうか。
実際に独立開業するとなると、開業までの流れやどのような準備が必要なのかわからないことが多いのも事実です。
また、独立開業してみたものの、なかなか軌道に乗らない厳しいケースも多く見受けられます。
そこで、当記事では税理士として独立開業を目指すメリット・デメリットや、独立開業までの流れや費用、成功するためのコツまでくわしく紹介します。
税理士が独立開業するメリット
税理士が独立開業すると以下のようなメリットを得ることが可能です。
以下、解説していきます。
高収入を目指せる
税理士が独立開業する魅力的なメリットは高収入を目指せることです。
会社に所属している税理士として働く場合、いくら結果を残したとしても決まった報酬しか受け取ることはできません。
また、新しい顧客獲得によるインセンティブを受け取っても、金額には限界があります。
独立開業をする場合、新規の顧客を獲得して得られる顧問料が、そのまま売り上げに直結するので、大幅な年収アップが期待できます。
そのためにも営業力が重要になります。独立開業を機に高収入を目指すなら、税理士としての実力はもちろん、高い営業力が求められます。
働き方の自由度が上がる
独立開業して、安定的に仕事ができるようになれば、働き方の自由度があがります。
顧客を自分の意志で選ぶこともできますし、時間の使い方も自由です。
キャリアを重ねて、税理士としての経験を積み、顧客の信用を得ることができれば、仕事がある限り生涯現役でいることもできます。
どのように働くのか、すべて自分で決めることができることも大きなメリットです。
初期費用が比較的安い
独立して開業する場合、初期費用としてかかる費用は、事務所を借りる費用などでおよそ200万円ほどです。
賃料によって大きく前後しますが、高収入を目指せる仕事としては、比較的安く開業できます。
さらに、自宅を事務所にすることができればさらに安くなります。
開業費用の安さは、独立を考える方にとっては大きく背中を押してくれるメリットになってきます。
税理士が独立開業するデメリット
会社に所属している税理士と違い、独立開業すると以下のようなデメリットがあります。
収入が不安定になる
高収入を目指せる反面、独立して仕事を獲得できなければ、収入は増えません。
また、会社員として働いているときは、給与として保証されていたものがなくなってしまうので、収入が不安定になることがデメリットになります。
その間も、家賃などの費用がかかるため、資金が足らなくなることもあります。
営業スキルが必要になる
独立開業して顧客を獲得して、安定的に収入を得るために高い営業スキルは欠かせません。
自分を知ってもらうことはもちろん、他の税理士との違いを明確にするなど、常に顧客獲得のためのアイデアを出し続けながら実践しなければなりません。
どれだけ優秀な税理士であっても営業力に欠けていると、自分を知ってもらうこともできず事業の拡大が難しくなるので、独立開業で成功するためには営業スキルは欠かすことができません。
トラブルへの対応が自己責任になる
独立開業すると業務への責任は、所属税理士に比べ重くなりますし、責任の範囲もすべて自分になります。
そのため、起きたトラブルはすべて自分で対応しなければなりません。
もし体調を崩してしまっても、ほかの税理士に代わってもらうことはできないため、収入は下がってしまうかもしれません。
独立開業により、これまで経験したことのないトラブルに見舞われる可能性はありますし、慣れない作業によって体調を崩してしまうかもしれません。
どのようなやむ負えない事情でも、すべて自己責任になってしまうので、独立前からあらゆる事態を想定しておき、対応できるように準備しておくことでトラブルを軽減させましょう。
税理士が独立開業する際にかかる費用
税理士が独立開業するには以下の費用が発生します。
初期費用
前述しましたが、初期費用はおもに事務所の賃貸契約費になってきます。
顧客ターゲットにもよりますが、企業をターゲットにしてオフィスの多い場所にするのか、個人の相談を受けるために駅前などの立地を狙うのか、広さや内装にこだわりがあればその分費用もかさみます。
家賃が10万円ほどの事務所であれば、敷金・礼金・内装含め100万円程度の初期費用が必要となりますが、立地、広さにより大きく変動すると考えておかなければなりません。
税理士登録費用
税理士登録には、登録免許税60,000円と手数料50,000円がかかります。
その他にも税理士会には各地方のブロックや支部など細かく分かれており。ブロック、支部の両方に会費を払う必要があります。
例えば東京税理士会を例にすると、
- 入会金:40,000円
- 会館建設費:20,000円
- 会費:年81,000円
- 登録免許税・手数料
以上の金額が必要になります。
登録にかかる費用は一度払うだけですが、会費は毎年かかります。
参考:東京税理士会
ソフト料金
開業にあたって会計・税務ソフトの購入が必要となります。
ソフトの購入費用は、会計ソフトが5〜10万円、税務ソフトが10〜15万円程度が一般的な相場になります。
近年はパッケージ型のソフトだけでなく、クラウド型のサービスの利用も増えています。
インターネット環境があれば、いつでもさまざまなデバイスからアクセスでき、情報の管理がしやすい特徴があります。
クラウド型の場合、月額の利用料を支払う形で、月数千円の負担となります。
ただし、年払いを選択することもでき、月払いに比べて、少し安くなります。
その他
その他にもWebサイト製作費やチラシ作成費などの広告費が20万円〜、オフィス機器購入などで10万円程度の費用が必要となります。
税理士が独立開業するまでの流れ
実際に税理士として独立開業するまでの流れは以下のようになります。
実務経験を積む
税理士として開業するためには、税理士試験に合格するだけでなく、2年以上の実務経験が必要となり、税理事士務所などへ勤務するのが一般的です。
実務経験に関しては、同一の勤務先ではなく、複数の勤務先を合算して、2年以上あれば大丈夫です。
また、税理士試験受験前目の勤務もカウントされます。
実務経験後の証明は、勤務先から在職証明を出してもらいます。
複数の勤務先で勤務した場合は勤務先ごとにもらう必要があります。
税理士登録申請をする
税理士試験に合格し、2年間の実務経験を積めば税理士登録申請ができます。
登録申請に必要な書類は
- 税理士登録申請書
- 登録免許税領収証書(60,000円)
- 登録手数料(50,000円)
- 写真
- 本籍の記載のある世帯全員の住民票の写し(マイナンバーの記載のないもの)
- 身分(身元)証明書(本籍地の市区町村が発行したもの)
- 資格を証する書類(原本との照合確認を受ける)
- 履歴書(第3号様式)
- 誓約書(第4号様式)
- 税理士会会長宛ての誓約書
- 直近2年分の確定申告書のコピー(確定申告をしていない場合は住民税の(非)課税(所得)証明書
- はがき(日本税理士会連合会所定のもの)
- 在職証明書
などがあります。
書類提出後、税理士会や支部の調査員による登録調査がおこなわれます。
この調査のなかには面接調査も含まれており、動機や実務経験などの質疑応答があります。
登録調査完了後に、日本税理士会連合会によって登録の可否に関する最終判断が下されます。
参考:日本税理士会連合会
開業資金を用意する
開業をするうえでまず考えなくてはいけないのが、開業資金です。
初期費用や登録料など含めると、200万円ほどの資金が必要になります。
自己資金で用意できるのであれば問題ありませんが、そうでなければ融資を検討してみましょう。
日本政策金融公庫の創業融資制度や、地方自治体の補助金・助成金などを活用する方法もあります。
また、自宅を事務所にするなどするとさらに自己資金を抑えることも可能です。
開業に向けた準備を進める
開業に向けた物件探しや、ホームページや名刺などの営業・マーケティングツールの作成、会計ソフトの選定などを行います。
すべてが今後の営業活動を大きく左右するものばかりなので、早い段階で検討し、できるだけ準備には時間をかけておきたいところです。
開業する
すべての準備が整ったら、いよいよ開業です。
これまでの実務経験や、温めてきたアイデアを活用し、まずは顧客獲得を目指しましょう。
税理士が独立開業で成功するコツ
「独立開業をしてみたもののなかなかうまくいかない」
このようなことにならないための成功するコツを紹介します。
自分の得意分野を活かす
開業後はどのような仕事でも引き受けたくなりますし、開業直後は顧客獲得のためにその姿勢でもよいかもしれません。
しかし、今後税理士として成功するためには、専門性が重要になってきます。
そのために税理士としての得意分野を持っておくことは重要です。
例えば飲食業など特定の業種専門、相続税・贈与税専門など、「この案件ならこの人に頼もう」という認知度につながるので、得意分野などの強みを顧客に知ってもらえるようにしましょう。
ライバルとの差別化を意識する
数ある税理士事務所の中で自分の事務所を選んでもらうためには、ライバルとの差別化も欠かせません。
いくら専門性を打ち出しても、同じ分野ですでに開業している事務所があれば、税理士事務所を探している人に、他社との違いをしっかりとアピールする必要があります。
料金やサービス面などライバルを常にチェックして、差別化を意識し、さまざまな付加価値をつけることで集客につなげていきましょう。
複数の営業方法を確保する
営業方法を複数確保しておけば、その分、顧客獲得の可能性も高まります。
ホームページでの集客以外にも、ポスティングによるチラシ配布やSNSなどを活用するのもよいでしょう。
また、以前お世話になった税理士事務所や、地元の税理士と横のつながりを持つことで、案件を紹介してもらえたり、ヒントをもらえるかもしれません。
1つの営業方法にこだわらないことで、顧客を獲得できるチャンスは広がっていきますので、できる限り複数の営業方法を確保しておきましょう。
まとめ
- 高収入を目指すことができ、働き方も選べ初期費用が比較的安いことがメリット
- 収入の不安定さや営業力が必要であること、トラブルの責任はすべて自己責任であることがデメリット
- 開業のためには2年間の実務経験が必要
- 自分の得意分野を活かし、専門性を打ち出すことが成功には重要
- 顧客獲得のための営業方法は1つにこだわらず複数確保しておく
難関試験に合格し、税理士として独立を目指す方にとって、有益な情報をご紹介しました。
これから独立開業を目指す際には、当記事を参考に独立開業で成功をつかんでください。